PUE(ピーユーイー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
PUE(ピーユーイー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
電力使用効率 (デンリョクしようこうりつ)
英語表記
PUE (ピーユーイー)
用語解説
PUE(Power Usage Effectiveness)とは、データセンターの電力使用効率を示す国際的な指標である。システムエンジニアを目指す上でデータセンターの運用や設計に関わる場合、このPUEという言葉に必ず出会う。データセンターは現代社会のデジタルインフラを支える心臓部であり、大量のサーバーやストレージ、ネットワーク機器といったIT機器が24時間稼働している。これらIT機器の稼働には膨大な電力が消費されるだけでなく、機器が発する熱を冷やすための空調設備や、停電時にも安定した電力を供給するための無停電電源装置(UPS)など、IT機器を支えるための設備にも多大な電力が必要となる。PUEは、データセンター全体で消費される電力のうち、どれだけの割合が実際にIT機器のために使われているかを示すことで、データセンターの効率性を客観的に評価する。
PUEは「データセンター総消費電力」を「IT機器消費電力」で割ることで算出される。 この計算式における「IT機器消費電力」とは、具体的にはサーバー、ストレージ、ネットワーク機器、KVMスイッチなどの情報処理に直接関わる機器が消費する電力を指す。一方、「データセンター総消費電力」には、IT機器の消費電力に加えて、冷却設備(エアコン、チラー、ポンプなど)、無停電電源装置(UPS)や配電装置での電力変換ロス、照明、空調ファン、セキュリティシステムなど、データセンターを安全かつ安定的に運用するために必要な全ての設備が消費する電力が含まれる。
PUEの理想値は1.0である。これは、データセンター全体で消費される電力が、全てIT機器の稼働のみに使われている状態を意味する。しかし、現実には冷却や電力供給などの補助設備なしにデータセンターを運用することは不可能であり、1.0という値を達成することはありえない。したがって、PUEの値は1.0に近ければ近いほど、そのデータセンターの電力使用効率が良いと評価される。例えば、PUEが2.0であれば、IT機器が1単位の電力を消費するたびに、冷却や電源などの補助設備で追加的に1単位の電力が消費されていることを意味する。現在の一般的なデータセンターでは、PUEは1.5から2.0程度の範囲に収まることが多いが、最新の高効率データセンターでは1.2を切る値も珍しくない。
PUEの値が高い、つまり電力効率が悪いデータセンターでは、主に以下のような原因が考えられる。まず、冷却設備の非効率性が挙げられる。過剰な冷却設定や、データセンター内のホットスポットとコールドスポットが混在し、効果的な冷却ができていない場合、多くの電力が無駄に消費される。また、老朽化した空調設備や電源設備、特にUPSなどは電力変換効率が低く、電力ロスが大きくなる傾向がある。データセンターの設計自体に問題があり、冷気が適切にIT機器に届かず、熱気が排出されにくい「ショートサーキット」が発生している場合も、冷却効率が著しく低下する。さらに、使用していない古いサーバーが稼働し続けている、あるいは仮想化技術を十分に活用せず、物理サーバーの台数が過剰であるといったIT機器側の運用効率の悪さも、総消費電力に占めるIT機器消費電力の割合を相対的に低くし、PUEを悪化させる要因となる。
PUEを改善するための取り組みは多岐にわたる。最も効果的なのは、冷却効率の向上である。具体的には、外気を利用して冷却を行うフリークーリングシステムや、熱源の近くで直接冷却を行う液体冷却システムといった高効率な冷却技術の導入が挙げられる。データセンター内の気流管理の最適化も重要で、ホットアイルとコールドアイルを物理的に分離・封じ込めることで、冷気がIT機器を効率よく冷却し、熱気が速やかに排出される環境を構築する。また、サーバーラックの空きスペースをブランクパネルで塞ぎ、冷気の回り込みを防ぐことも基本的ながら有効な手段である。電源設備については、高効率なUPSや配電ユニットへの更新を進めることで、電力変換ロスを最小限に抑えることができる。IT機器自体も、省電力設計のサーバーやストレージを選定し、古い機器は随時新しいものに置き換えるべきである。サーバー仮想化を積極的に推進し、物理サーバーの台数を減らすことで、IT機器全体の消費電力を削減し、同時に冷却負荷も軽減できる。その他にも、データセンター内の照明をLEDに切り替える、建物の断熱性能を高める、機器の適切な配置を検討するなど、細部にわたる改善策がPUEの向上に寄与する。
PUEはデータセンターの電力効率を評価する上で非常に有用な指標だが、その限界や注意点も理解しておく必要がある。PUEはあくまで「効率」を示す指標であり、データセンターが消費する電力の総量や、それによって排出される二酸化炭素量を直接的に示すものではない。例えば、非常に高効率なPUEを実現しているデータセンターであっても、大規模であればあるほど絶対的な電力消費量は増大する。また、PUEの計算における「データセンター総消費電力」と「IT機器消費電力」の測定範囲や定義は、データセンターによって多少異なる場合があるため、異なるデータセンター間でのPUE値を単純に比較する際には注意が必要である。さらに、IT機器の負荷率によってPUE値は変動する可能性がある。IT機器の稼働率が低い場合、相対的に冷却などの補助設備の電力消費が目立ち、PUE値が悪化する傾向がある。最後に、PUEは電力の「使用効率」を評価するものであり、その電力が再生可能エネルギー由来であるかどうかは考慮されない。環境負荷低減を追求する上では、PUEの改善に加えて、使用する電力のグリーン化も重要な要素となることを忘れてはならない。PUEはデータセンターの電力効率改善に向けた努力の方向性を示し、その成果を測るための強力なツールとして今後もその重要性を増していくだろう。