相対パス (ソウタイパス) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
相対パス (ソウタイパス) の読み方
日本語表記
相対パス (ソウタイパス)
英語表記
Relative path (リラティブ パス)
相対パス (ソウタイパス) の意味や用語解説
相対パスは、コンピュータのファイルシステムにおいて、ファイルやディレクトリの位置を示すための記述方法の一つである。その最大の特徴は、特定の基準点、すなわち現在作業しているディレクトリ(カレントディレクトリ)からの相対的な位置関係で対象の場所を指定する点にある。これに対して、ファイルシステムの最上位階層であるルートディレクトリから始まり、対象までの完全な経路を記述する方法を絶対パスと呼ぶ。相対パスは、この絶対パスと対になる概念として理解される。例えば、あるファイルから見て同じ階層にある別のファイルを指定したり、一つ上の階層にあるファイルを指定したりする場合に用いられる。この仕組みにより、関連するファイル群をディレクトリごと別の場所に移動させても、ファイル間の位置関係が変わらなければ、パスの記述を修正する必要がないという利点がある。これは、Webサイトの制作やソフトウェア開発など、複数のファイルが連携して動作するプロジェクトにおいて極めて重要な特性となる。 相対パスを具体的に記述するためには、いくつかの特別な記号が用いられる。最も基本的な記号は「.」(ドット)と「..」(ドットドット)である。まず、「.」はカレントディレクトリそのものを指し示す。例えば、カレントディレクトリ内にある「file.txt」というファイルを指定する場合、「./file.txt」と記述する。多くの場合、先頭の「./」は省略可能であり、単に「file.txt」と記述してもカレントディレクトリ内のファイルとして解釈される。次に、「..」は親ディレクトリ、つまりカレントディレクトリが属している一つ上の階層のディレクトリを指し示す。これにより、現在の階層から上の階層へ移動し、そこにあるファイルやディレクトリを指定することが可能になる。ディレクトリの階層を区切る記号には、主に「/」(スラッシュ)が使用される。 具体的なファイル構造を例に、相対パスの記述方法を解説する。仮に「project」というディレクトリの中に、「index.html」というファイル、「css」というディレクトリ、「images」というディレクトリが存在し、さらに「css」ディレクトリの中に「style.css」、「images」ディレクトリの中に「logo.png」が格納されている状況を考える。このとき、カレントディレクトリが「project」で、「index.html」から各ファイルを参照する場合を想定する。「css」ディレクトリ内の「style.css」を参照するには、「css/style.css」と記述する。これは、「カレントディレクトリにあるcssディレクトリの中のstyle.css」という意味になる。同様に、「images」ディレクトリ内の「logo.png」を参照するには、「images/logo.png」と記述する。 次に、基準となるファイルの位置が変わった場合を考える。例えば、「css/style.css」の中から「images/logo.png」を参照したい場合、基準となる場所は「css」ディレクトリとなる。ここから「images」ディレクトリにアクセスするためには、まず一つ上の階層である「project」ディレクトリに戻る必要がある。この操作を示すのが「..」である。したがって、パスは「../images/logo.png」となる。この記述は、「まず親ディレクトリへ移動し、そこにあるimagesディレクトリの中のlogo.png」という意味を表す。このように、相対パスはどこを基準にするかによって記述が変化する。 相対パスと絶対パスは、それぞれの特性に応じて適切に使い分けることが重要である。相対パスの最大の利点は、前述の通り、プロジェクト全体の可搬性(ポータビリティ)を高める点にある。Webサイトのファイル一式を開発環境から本番サーバーへアップロードする際、ディレクトリ構造が維持されていれば、相対パスで記述されたリンクや画像参照は一切変更する必要がない。また、パスの記述が絶対パスに比べて短くなる傾向がある。一方で、デメリットとしては、実行する場所(カレントディレクトリ)に依存するため、意図しない場所でプログラムを実行すると、ファイルが見つからないというエラーが発生する可能性がある。 対照的に、絶対パスはシステムのルートディレクトリからの完全な経路を示すため、どこから実行しても常に一意に対象を指し示すことができるという確実性がある。システムの重要な設定ファイルや、複数のプロジェクトから共通で利用されるライブラリなどを指定する際に適している。しかし、開発環境と本番環境でディレクトリ構造が異なる場合、絶対パスで記述された箇所はすべて環境に合わせて書き換える必要が生じる。また、記述が長くなりやすいという側面も持つ。 実務において相対パスが活用される場面は非常に多い。Web開発では、HTMLファイルからCSSファイルやJavaScriptファイル、画像を読み込む際に頻繁に用いられる。プログラミングにおいても、設定ファイルやデータファイルをプログラムと同じ階層、あるいは決められた相対的な位置に配置し、相対パスで読み込むのが一般的である。また、LinuxやmacOSなどのコマンドライン操作(シェル)においても、ファイルやディレクトリを移動、コピー、削除する際に、カレントディレクトリを基準とした相対パスを用いることで、効率的な作業が可能となる。システムエンジニアを目指す上で、この相対パスの概念と記述方法を正確に理解し、絶対パスとの違いと使い分けを把握することは、ファイルシステムを扱うあらゆる作業の基礎となる必須の知識である。