【ITニュース解説】Self-Hosted Analytics with Rybbit: A Game-Changer for Privacy-Conscious Developers
2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「Self-Hosted Analytics with Rybbit: A Game-Changer for Privacy-Conscious Developers」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Rybbitは、プライバシーを重視する開発者向けのオープンソース自己ホスト型アクセス解析ツールだ。ユーザーデータが自社インフラに保持され、リアルタイム分析やパフォーマンス監視を実現する。Coolifyでのデプロイ方法も紹介され、データ制御とコスト削減に大きなメリットがある。
ITニュース解説
Webアプリケーションの開発が日々加速する現代では、LoveableやVercelのV0といったツールのおかげで、自分のアイデアをすぐに形にし、MVP(必要最小限の機能を持つ製品)を簡単に作れるようになった。しかし、試作品の段階から実際にユーザーが利用する本番環境へと移行し、多くのユーザーを迎え入れるようになると、彼らがアプリをどのように使っているのか、その行動を深く理解することが非常に重要になる。ユーザー体験はどうか、システムは安定して動いているか、エラーは発生していないかなど、ウェブサイトを行き交うトラフィックから多くの情報を得るための「アナリティクス」が必要となるのだ。
ここで一つの疑問が生まれる。Google Analyticsのような無料かつ高機能な外部サービスは確かに便利だが、大切なユーザーデータを本当に外部企業に安心して預けて良いのだろうか。多くの開発者がデータプライバシーを重視する「vibecoding」の思想を取り入れ、高速なプロトタイプ開発を行う中で、サードパーティに機密性の高いユーザーデータを任せることへの懸念はますます高まっている。
そこで注目されるのが「自己主権型アナリティクス」という考え方だ。これは、アナリティクスデータを自分自身で完全に所有し、管理するというものだ。この分野で特に優れているのが「Rybbit」である。Rybbitは、単なるアナリティクスツールではなく、完全な自己ホスティング型のアナリティクスプラットフォームであり、そのオープンソースとしての能力には目を見張るものがある。
Rybbitを使うと、次のようなメリットが得られる。まず、すべてのデータを自分のインフラストラクチャ上に保持できるため、完全な「データ所有権」が保証される。これにより、外部へのデータ流出の心配がない。次に、「リアルタイムの洞察」を提供し、現在のトラフィック状況やユーザーの行動をライブで監視できる。また、エラーの発生、ページの読み込み時間、システム全体の健康状態などを監視する「パフォーマンス監視」機能も備えている。Rybbitは「プライバシーファースト」のアプローチを採用しており、ユーザーデータを外部企業と共有したり、追跡したりすることはない。さらに、エラー分析の強化やユーザーセッションのリプレイ機能など、アプリケーションのテストに役立つ追加ツールも利用でき、ユーザーテスト時の分析をより深められる。見た目も美しいダッシュボードを備えており、市販のソリューションにも引けを取らない直感的なインターフェースを提供している。そして、オープンソースであるため、必要に応じて自由に機能を追加・変更できる「完全なカスタマイズ性」がある。
Rybbitをデプロイする方法はいくつかあるが、ここではCoolifyというプラットフォーム上でRybbitを運用する方法を解説する。Coolifyは、Dockerコンテナを用いたアプリケーションのデプロイや管理を容易にするツールだ。Coolifyを使うことで、Rybbitを本番環境で運用するために必要なヘルスチェックや設定を適切に行える。
Rybbitは複数のサービスが連携して動作するアプリケーションである。そのアーキテクチャは以下のコンポーネントで構成されている。ユーザーが直接操作する画面部分である「フロントエンド」はNext.jsで構築されており、ポート番号3002で動作する。フロントエンドからのリクエストを受け取り、データの処理やビジネスロジックを実行する「バックエンド」はFastify APIサーバーで、ポート番号3001で動作する。ユーザーデータやRybbit自体の設定情報を保存する「データベース」にはPostgreSQLが使われる。大量のアナリティクスデータを高速に保存・分析するために特化した「分析用データベース」にはClickHouseが使われる。セッション管理や一時的なデータの高速な読み書きには「キャッシュ」としてRedisが使われる。そして、外部からのアクセスを適切なサービス(フロントエンドやバックエンド)に振り分ける「リバースプロキシ」は、Coolifyが自動的に処理してくれる。
Coolify上でRybbitをデプロイするには、まず「coolify-compose.yml」というDocker Compose設定ファイルを用意する。このファイルには、各サービス(ClickHouse、PostgreSQL、Redis、バックエンド、クライアント)をどのように起動するか、その設定が詳細に記述されている。例えば、各サービスには、データの永続化のためのボリューム設定、認証情報などの環境変数、そしてサービスが正常に稼働しているかを定期的に確認する「ヘルスチェック」が定義される。ヘルスチェックは、サービスに異常があった場合にCoolifyが自動的に再起動を試みるなど、安定運用に不可欠な機能だ。また、サービス間には「depends_on」という依存関係が設定されており、例えばバックエンドサービスは、PostgreSQLやClickHouse、Redisといったデータベースやキャッシュサービスが完全に準備でき、正常に稼働していることを確認してから起動するように設定されている。
次に、Coolifyアプリケーション上で必要な「環境変数」を設定する。これには、Rybbitのアクセス用ドメイン名、認証に必要な秘密鍵、各データベースのユーザー名やパスワードといった機密情報が含まれる。これらの環境変数は、サービスのセキュリティと正常な動作に不可欠だ。
Coolifyでのデプロイ手順は非常にシンプルだ。まずCoolifyで新しいアプリケーションを作成し、デプロイ方法としてDocker Composeを選択する。その後、Rybbitのコードが保存されているGitリポジトリをCoolifyに接続し、先ほど作成した「coolify-compose.yml」ファイルを指定する。最後に、必要な環境変数をCoolifyのインターフェース上で設定し、デプロイを実行すれば良い。
デプロイ中や運用開始後によく発生する問題と、その解決策についても理解しておく必要がある。最も一般的な問題は、フロントエンドがバックエンドと通信できない「APIプロキシ設定」の不具合だ。これは、Next.jsのフロントエンドが、/api/*のようなAPIリクエストを、自分のウェブサーバーではなく、別の場所で動いているバックエンドサービスに転送するように設定する必要があるためだ。開発環境ではnext.config.tsファイルで設定するが、本番環境ではNEXT_PUBLIC_BACKEND_URL環境変数が正しいエンドポイントを指していることを確認する必要がある。また、サービスが正常に起動しないために「ヘルスチェックが失敗し続ける」こともある。この場合、データベースの認証情報がすべてのサービスで一致しているか、各コンテナ間のネットワーク接続に問題がないか、ヘルスチェック用のエンドポイントが正しく応答しているかなどを確認する必要がある。さらに、Dockerの「ビルドコンテキスト」やDockerfileのパスが誤っているために、Dockerビルドが失敗することもある。これは、Dockerがアプリケーションのソースコードを見つけられない場合に発生し、ビルドコンテキストがリポジトリのルートに設定され、Dockerfileのパスがそこからの相対パスになっていることを確認することで解決できる。
このCoolifyを使ったRybbitのセットアップは、いくつかの重要な利点をもたらす。まず、各サービスが正しい順序で、かつ依存するサービスが正常であることを確認してから起動する「健全なサービス依存関係」が確立される。次に、Coolifyがすべてのサービスの健康状態を自動的に監視し、問題が発生した際に自動で対応できる「包括的なヘルスモニタリング」が可能になる。さらに、Next.jsのスタンドアローンビルドや、適切な再起動ポリシー、リソース管理など、本番環境での利用に最適化された「本番環境向け最適化」が施されている。
データプライバシーがこれほどまでに重視される時代において、Rybbitのような自己ホスティング型のアナリティクスソリューションは、未来のデファクトスタンダードとなる可能性を秘めている。この方法を選ぶことで、アナリティクスデータを完全に自分で管理できるだけでなく、外部サービスのような月額料金や利用制限がなく、コストを抑えられる。オープンソースであるため、必要な機能を自由にカスタマイズして追加することも可能だ。データがどこに保存されているか明確であるため、セキュリティやコンプライアンス(法規制遵守)の面でも安心感がある。さらに、データ処理が自分のインフラストラクチャで行われるため、パフォーマンスの向上も期待できる。
RybbitとCoolifyの組み合わせは、プライバシー、パフォーマンス、そしてデータに対する制御を重視する開発者にとって、非常に有効な選択肢である。初期設定は多少複雑に感じるかもしれないが、その分得られるメリットは計り知れない。エンタープライズ級のアナリティクス機能を、高額な費用やプライバシーの懸念なしに実現できるのだ。オープンソースであるRybbitは、コミュニティに貢献したり、自分の特定のニーズに合わせてカスタマイズしたりすることも可能であり、外部サービスの提供終了や料金体系の変更といった心配をする必要がないという、長期的な安心感も得られるだろう。