RockRidge(ロックリッジ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
RockRidge(ロックリッジ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ロックリッジ (ロックリッジ)
英語表記
RockRidge (ロックリッジ)
用語解説
RockRidgeは、光ディスクの一種であるCD-ROMにデータを記録する際のファイルシステム規格であるISO 9660を、UNIX系オペレーティングシステム(OS)でより効率的かつ柔軟に利用できるように拡張した仕様である。その主な目的は、ISO 9660の持つ制約を克服し、UNIX系OSのファイルシステムが持つ豊富な機能をCD-ROM上で再現することにあった。
ISO 9660は、異なるプラットフォーム間でCD-ROMのデータを交換できるようにするため、国際標準化機構によって定められたファイルシステム規格であり、その設計思想は最大限の互換性を追求することにあった。この互換性を重視した設計は、特にUNIX系OSが標準的に備えるファイルシステムの機能と比較すると、いくつかの大きな制約を抱えていた。例えば、ファイル名については、最長で31文字、大文字の英数字とアンダースコア、ドット、ハイフンに限られ、小文字の区別ができないという厳しい制限があった。また、ディレクトリ構造の深さにも制限があり、ファイルシステムのメタデータ、すなわちファイルやディレクトリの所有者情報(ユーザーID、グループID)、アクセス権限(パーミッション)、作成・更新日時、シンボリックリンク(別のファイルやディレクトリへの参照)、デバイスファイルといったUNIX系OSでは不可欠な属性を保存する手段が提供されていなかった。これらの制約は、UNIX系OS上で開発されたソフトウェアをCD-ROMに記録したり、UNIXシステム間でデータを交換したりする際に、ファイル名が短縮されたり、重要なファイル属性が失われたりするなどの不便や問題を引き起こした。
このような課題を解決するために開発されたのがRockRidgeである。RockRidgeは、ISO 9660の基本的な構造を維持しつつ、その拡張領域を利用して、UNIX系OSが必要とする追加情報を記録するメカニズムを提供した。これにより、UNIXユーザーは、あたかも通常のハードディスク上のファイルシステムを扱うかのように、CD-ROMを利用することが可能になった。
RockRidgeが提供した具体的な機能は多岐にわたる。まず、ファイル名の長さの拡張である。ISO 9660では最大31文字だったファイル名が、RockRidgeでは最大255文字まで利用できるようになり、小文字の英数字や様々な特殊文字も使用可能になった。これにより、より記述的で人間が理解しやすいファイル名をCD-ROM上に保存できるようになった。次に、UNIX系OSのファイルシステムが持つメタデータのサポートである。RockRidgeは、ファイルやディレクトリの所有者ID(UID)、グループID(GID)、ファイルのアクセス権限を示すパーミッション(読み取り、書き込み、実行)、ファイルタイプ(通常ファイル、ディレクトリ、シンボリックリンク、デバイスファイルなど)、リンク数といった情報をCD-ROM上に記録できるようになった。これにより、CD-ROMからUNIXシステムにファイルをコピーする際も、これらの重要な属性が保持され、正しく機能するようになった。特にシンボリックリンクのサポートは重要であり、プログラムの実行パスや複雑なディレクトリ構造を維持したまま、CD-ROM上でソフトウェアを配布する上で不可欠な機能であった。さらに、ディレクトリのネスト(階層化)の深さも、ISO 9660が持つ制限よりも深くすることが可能になり、より複雑なディレクトリ構造を持つデータやソフトウェアをCD-ROMに収めることが容易になった。
これらの拡張は、ISO 9660が規定するディスク上のデータ構造のうち、「システムユースエリア(System Use Area)」と呼ばれる領域を巧みに利用することで実現された。ISO 9660では、将来の拡張のためにこの領域が予約されており、RockRidgeはここに独自のレコードを追加することで、前述した拡張情報を埋め込んだのである。具体的には、RRIP(Rock Ridge Interchange Protocol)というプロトコルが定義され、このプロトコルを通じて、ファイル名や属性情報を記述するための様々なタグ(RR、PX、PN、SLなど)が使われた。これにより、RockRidge対応のOSはこれらのタグを読み取り、ISO 9660の基本情報と合わせて、UNIX系ファイルシステムとして認識・利用することができた。一方、RockRidge非対応のOSは、System Use Areaを無視してISO 9660の基本情報のみを読み取るため、RockRidge拡張によってディスクの互換性が損なわれることはなかった。これは、下位互換性を保ちながら機能拡張を実現する巧妙なアプローチであった。
RockRidgeは1990年代初頭に登場し、特にLinux、FreeBSD、SolarisなどのUNIX系OSが普及し始めた時期と重なり、これらの環境でCD-ROMを利用する際のデファクトスタンダードとして広く採用された。UNIX系のソフトウェアパッケージやオペレーティングシステム自体がCD-ROMで配布される際、RockRidgeは欠かせない存在となり、UNIXの世界におけるデータ交換やソフトウェア配布の基盤を支えた。
現代においては、CD-ROMの利用頻度は減少傾向にあり、DVDやBlu-rayディスク、USBメモリ、ネットワークストレージといった、より大容量で高速なメディアが普及している。これらのメディアでは、ISO 9660とは異なるファイルシステム(例えばUDF: Universal Disk Format)や、より汎用的なファイルシステム(FAT32, NTFS, exFAT, ext4など)が使われることが多いため、RockRidgeという名前を直接耳にする機会は減っているかもしれない。しかし、RockRidgeがUNIX系OSにおけるCD-ROMの利用可能性を大きく広げた功績は大きく、異なるファイルシステム間で互換性を保ちながら特定のOSに特化した機能を追加するというその設計思想は、後の様々な技術にも影響を与えている。RockRidgeは、限られたリソースと既存の標準規格の枠組みの中で、最大限の機能と利便性を提供しようとした先駆的な技術の一つとして、IT史において重要な位置を占める。