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Secure Erase(セキュアイレース)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

Secure Erase(セキュアイレース)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

セキュア・イレース (セキュア・イレース)

英語表記

Secure Erase (セキュア イレース)

用語解説

Secure Eraseは、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などのストレージデバイスに保存されたデータを、完全に、かつ安全に消去するための技術だ。この技術は、デバイスのファームウェアに組み込まれた機能を利用し、データ復旧が極めて困難または不可能になるように設計されている。情報セキュリティが重視される現代において、使用済みストレージの廃棄や再利用時に個人情報や企業秘密などの機密情報が外部に漏洩するリスクを排除するために不可欠なプロセスである。

通常のOS(オペレーティングシステム)によるデータ削除、例えばファイルをゴミ箱に入れて空にする操作は、実際にはファイルの内容そのものをストレージから消去しているわけではない。これらの操作は、ファイルシステムにおける当該ファイルの存在を示す情報(ファイル名、サイズ、保存場所など)を単に「削除済み」とマークするだけで、データが占めていた物理的な領域は新しいデータで上書きされるまでそのまま残っている。そのため、専用のデータ復旧ソフトウェアを使えば、多くの場合、削除されたはずのデータを容易に復元できてしまう。これは、例えば文書を削除してゴミ箱を空にしても、紙の文書をシュレッダーにかけるのとは異なり、単に目次から項目を消すようなものであり、本の内容は物理的に残っている状態に近い。

Secure Eraseは、このような「見せかけだけの削除」とは一線を画す。この機能は、ストレージデバイス自体が持つ特殊なコマンド群(ATAコマンドセットの一部として定義される)を利用して実行される。HDDの場合、Secure Eraseコマンドが発行されると、ドライブは保存されている全てのデータセクタを特定のパターン、通常は「0x00」(ゼロ)で一様に上書きする。これにより、元のデータは上書きされ、その痕跡を追跡することは実質的に不可能となる。

SSDの場合は、その動作原理がHDDとは異なるため、Secure Eraseのメカニズムも特有のものとなる。SSDはNAND型フラッシュメモリを記録媒体としており、ウェアレベリング(特定のメモリセルへの書き込み集中を防ぎ、寿命を延ばすための技術)という仕組みを持っている。通常のソフトウェアによる上書きツールでは、このウェアレベリングの作用により、指定したデータがSSD内の全ての物理ブロックに確実に上書きされたかを保証することが難しい場合がある。Secure Eraseでは、SSDのコントローラがこの問題を解決する。具体的には、SSD内部のコントローラが、全てのNANDフラッシュブロックを工場出荷時の状態、すなわち「消去済み」の状態に戻す。このプロセスは、内部的にデータを無効化したり、NANDフラッシュの消去サイクルを利用してデータを完全に消去したりする。自己暗号化機能を備えたSSD(SED)の場合には、Secure Eraseコマンドは、データそのものを上書きする代わりに、データを暗号化するために使用されていた内部の暗号化キーを破棄するという、より高速で効率的な方法をとることがある。暗号化キーが失われれば、暗号化されたデータは復号不可能となり、実質的にアクセス不能となるため、データは完全に「消去」されたと同等の状態になる。

Secure Eraseの実行には、通常、コンピュータのマザーボードのBIOS/UEFI設定画面から直接行うか、ストレージメーカーが提供する専用のユーティリティソフトウェア、あるいはLinux環境のhdparmコマンドのようなツールを使用する。これらの方法は、OSやファイルシステムを介さずに、デバイスのファームウェアと直接通信することで、より低レベルで、かつ包括的なデータ消去を実現する。

Secure Eraseを実行する際の最も重要な注意点は、一度このプロセスを実行すると、データは完全に、そして不可逆的に失われるという点だ。そのため、実行前には必ず必要なデータのバックアップを完了させておく必要がある。また、Secure Eraseは、ストレージデバイスがATA Security Feature Setをサポートしている場合に利用可能であり、デバイスによってはパスワードが設定されていると、そのパスワードを解除しないとSecure Eraseを実行できない場合もある。

ストレージのデータ消去には、Secure Erase以外にもいくつかの方法が存在する。例えば、物理破壊は最も確実な方法だが、デバイスの再利用は不可能となる。ソフトウェアによるデータ上書きツールは、Secure Eraseのようにデバイスのファームウェア機能を利用するのではなく、OS上でファイルを特定のパターンで複数回上書きすることでデータの痕跡を消そうとするが、SSDのウェアレベリングの特性により完全性が保証されにくいという側面もある。デガウス(消磁)は、強力な磁場を発生させてHDDの磁気記録を破壊する手法で、HDDにのみ有効であり、SSDには効果がない。これらの方法と比較して、Secure Eraseは、デバイスの機能を活用することで、高い確実性と効率性、そしてデバイスの再利用性を両立できる点が大きな利点と言える。システムエンジニアとしてデータセキュリティを扱う際には、これらのデータ消去技術の特性を理解し、状況に応じて適切な方法を選択することが求められる。Secure Eraseは、特に機密性の高い情報を含むストレージのライフサイクル管理において、非常に強力なツールとなる。

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