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Token Ring(トークンリング)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

Token Ring(トークンリング)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

トークンリング (トークンリング)

英語表記

Token Ring (トークンリング)

用語解説

Token Ringは、かつてローカルエリアネットワーク(LAN)の主要な接続方式の一つとして広く利用されたネットワーク技術である。今日のネットワークの主流であるEthernetとは異なるアクセス制御方式を採用しており、特にIBM環境を中心に普及した経緯を持つ。システムエンジニアを目指す上で、現在の主流技術だけでなく、過去に重要な役割を果たした技術の概念を理解することは、ネットワーク全体の設計思想や課題解決のアプローチを深く理解するために不可欠である。

Token Ringの最も特徴的な点は、その名の通り「トークン」と呼ばれる特殊な短いフレームと「リング」状の論理構造に基づいたアクセス制御方式にある。この方式は、複数のデバイスが共有媒体に同時にアクセスしようとした際に発生するデータ衝突(コリジョン)を根本的に回避することを目的として設計された。ネットワーク上のノード(コンピュータやサーバなどのデバイス)は、物理的にはスター型に配線されることが多いが、論理的には隣接するノードと一方向のデータリンクを形成し、全体として閉じたリング構造を構成する。

このリング構造の中を、自由な状態のトークンが常に巡回している。データを送信したいノードは、このフリーなトークンが自分のもとに回ってくるのを待つ。トークンを受信すると、そのノードはトークンを「捕捉」し、トークンがフリーな状態であることを示すビットを反転させ、トークンに送信したいデータを付加する。具体的には、データフレームの先頭にトークン情報をカプセル化し、宛先アドレス、送信元アドレスなどの情報を加えて、そのデータフレームをリング上に送信する。このとき、トークンを捕捉しているノード以外のノードはデータを送信することができないため、ネットワーク上でデータ衝突が発生することはない。

データフレームはリング上を一方向に伝送され、接続されているすべてのノードを順に通過していく。各ノードは、自分宛てのデータかどうかを確認し、もし自分宛てであればデータのコピーを取る。この際、受信したことを示すフラグをデータフレーム内に設定する。データフレームはリングを一周し、最終的にデータを送信した元のノードに戻ってくる。送信元ノードは、自分が送信したデータフレームが一周して戻ってきたことを確認すると、そのデータフレームをリングから除去し、ネットワーク上からデータが重複して巡回するのを防ぐ。その後、再び新しいフリーな状態のトークンを生成し、リング上に解放する。これにより、次のデータを送信したいノードがそのトークンを捕捉し、データの送信サイクルを継続できる。この一連のプロセスを「トークンパッシング」と呼ぶ。

Token Ringは、このトークンパッシングによって、ネットワークの負荷が高まっても一定の性能を保証できるというメリットがあった。EthernetがCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)という衝突を検知して再送する方式だったのに対し、Token Ringは衝突が起こりえない設計のため、特にリアルタイム性が求められるアプリケーションや、ネットワークの利用率が高い環境で安定した性能を発揮すると考えられていた。標準的な速度は4Mbpsや16Mbpsが主流であり、当時のEthernetと比較しても遜色のない速度を提供した。

物理的な配線は、通常、MAU(Multistation Access Unit)またはMSA(Media Access Unit)と呼ばれる集線装置を中心に、各ノードがスター型に接続される。しかし、このMAU内部で各ノードが論理的なリングを形成するように配線が制御されており、見た目はスター型でも内部はリング構造である。MAUはノードの接続/切断を管理し、障害が発生したノードをリングから自動的に切り離してバイパスする機能も持ち合わせていたため、部分的な障害がネットワーク全体に影響を及ぼすリスクを低減していた。

耐障害性という点では、トークンの紛失や破損といった異常事態にも対応する仕組みが組み込まれていた。ネットワーク内のいずれかのノードが「アクティブモニター」として選出され、このアクティブモニターがトークンの有無やデータの循環状況を監視する。もしトークンが一定時間出現しない場合や、データフレームがリングを何度も周回し続けるといった異常を検知した場合は、アクティブモニターが新しいトークンを生成したり、不正なフレームをリングから除去したりして、ネットワークの正常な動作を回復させる役割を担っていた。

Token Ringのフレーム構造は、スタートデリミタ、アクセス制御フィールド、フレーム制御フィールド、宛先アドレス、送信元アドレス、データフィールド、フレームチェックシーケンス、エンドデリミタといった要素で構成される。特にアクセス制御フィールドには、トークンをフリーにするか、それともデータフレームの一部として利用するかを示すビットや、フレームの優先度を設定するビットなどが含まれ、トラフィック管理の柔軟性も持ち合わせていた。

しかし、技術の進化とともに、Token RingはEthernetとの競争に敗れることとなる。Ethernetは、当初は衝突が多発しやすいという課題を抱えていたが、Full-Duplex通信の導入やスイッチングハブの普及により、衝突ドメインの分離が可能になり、実質的に衝突の問題を克服した。さらに、Fast Ethernet(100Mbps)、Gigabit Ethernet(1Gbps)、10 Gigabit Ethernetといった高速化が急速に進み、コストパフォーマンスや普及率でToken Ringを圧倒するようになった。Token Ringの仕様はIBMによって策定されたものが多く、プロプライエタリな側面が強かったことも、オープンな標準として広まったEthernetとの差を広げる要因となった。

今日、新規のネットワーク構築でToken Ringが採用されることはほとんどなく、既存のネットワークでもその姿を見ることは稀である。しかし、トークンパッシングというユニークなアクセス制御方式や、その堅牢性、性能保証の思想は、ネットワーク技術の歴史における重要な一ページとして、また分散システムにおけるリソース共有やアクセス制御の原理を理解する上で、学ぶべき価値のある概念として残されている。

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