アンダーレイネットワーク(アンダーレイネットワーク)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アンダーレイネットワーク(アンダーレイネットワーク)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アンダーレイネットワーク (アンダーレイネットワーク)
英語表記
underlay network (アンダーレイネットワーク)
用語解説
アンダーレイネットワークとは、ネットワーク通信の物理的な基盤を形成するネットワークのことである。これはルータやスイッチ、ケーブルといった実際の物理的なネットワーク機器と、それらを相互接続するための設定やプロトコルによって構成される。データパケットがネットワーク内を移動する際に、実際に経路を決定し、物理的に転送を行う「土台」としての役割を担っている。
このアンダーレイネットワークの主な目的は、ネットワークに接続されたすべての機器間でIPアドレスを用いた基本的な通信経路を提供することである。具体的には、ある機器から別の機器へデータパケットを送信する際に、そのパケットがどのルータを経由し、どのポートから出力され、最終的な宛先までどのように到達するか、という物理的なパスを確立し、維持する。インターネットの基盤となるような大規模なネットワークも、その根幹にはアンダーレイネットワークが存在する。
アンダーレイネットワークは、しばしば「オーバーレイネットワーク」と対比される概念である。オーバーレイネットワークがアンダーレイネットワーク上に構築される仮想的なネットワークであるのに対し、アンダーレイネットワークはそのオーバーレイネットワークが動作するための「下位層」または「物理的なインフラ」を提供する。
詳細に説明すると、アンダーレイネットワークは主に以下の要素で構成される。一つは、ルータ、スイッチ、ファイアウォールといった物理的なネットワーク機器である。これらの機器は、イーサネットケーブルや光ファイバーケーブルなどの物理的な伝送媒体を介して相互に接続される。もう一つは、これらの機器が互いに通信し、効率的にデータパケットを転送するためのルーティングプロトコルである。代表的なルーティングプロトコルには、OSPF (Open Shortest Path First) や BGP (Border Gateway Protocol) などがあり、これらによってネットワーク内の各機器が最適な経路情報を共有し、ルーティングテーブルを構築する。
アンダーレイネットワークの機能は、シンプルかつ堅牢であることが求められる。各ルータやスイッチは、受信したパケットの宛先IPアドレスに基づいて、自身のルーティングテーブルを参照し、次にどの機器へパケットを転送すべきかを判断する。このプロセスが繰り返されることで、パケットは送信元から宛先へと物理的に運ばれる。レイヤー2(データリンク層)のスイッチはMACアドレスに基づいてフレームを転送し、レイヤー3(ネットワーク層)のルータはIPアドレスに基づいてパケットをルーティングする。アンダーレイネットワークは、これらL2/L3の接続性を透過的に提供し、ネットワーク全体におけるエンドツーエンドの物理的な到達性を保証する。
現代のネットワークアーキテクチャにおいて、アンダーレイネットワークが特に重要視されるのは、オーバーレイネットワークとの連携においてである。データセンターやクラウド環境では、サーバー仮想化やコンテナといった仮想化技術が広く利用され、アプリケーションごとに柔軟なネットワーク構成が求められる。このような要件に応えるため、VXLAN (Virtual Extensible LAN) や MPLS (Multiprotocol Label Switching)、GRE (Generic Routing Encapsulation) といったオーバーレイ技術が用いられる。
これらのオーバーレイネットワークは、アンダーレイネットワークが提供するIP接続性の上に、仮想的なネットワークトポロジを構築する。具体的には、仮想ネットワーク内で発生したデータパケット(これを「内部パケット」と呼ぶことがある)が、アンダーレイネットワークが認識できる標準的なIPパケット(これを「外部パケット」または「カプセル化されたパケット」と呼ぶ)でカプセル化される。このカプセル化されたパケットは、アンダーレイネットワークにとっては通常のIPパケットと何ら変わらないため、アンダーレイのルータやスイッチは、そのパケットを自身のルーティングテーブルに基づいて透過的に転送する。アンダーレイネットワークの機器は、パケットがオーバーレイのトラフィックであることや、その内部にどのような仮想ネットワークのデータが含まれているかを知る必要はない。
このように、アンダーレイネットワークはオーバーレイネットワークの「輸送路」としての役割を果たす。この分離によって、オーバーレイネットワークはアンダーレイネットワークの物理的な構成や制約から独立して、論理的な柔軟性や拡張性を持つことができる。例えば、新しい仮想ネットワークを構築したり、既存のネットワーク構成を変更したりする際に、アンダーレイネットワークの物理的な配線やルーティング設定を大幅に変更する必要がなくなる。これは、ネットワーク管理の複雑性を軽減し、迅速なサービス展開を可能にする上で非常に有効である。
したがって、アンダーレイネットワークは、現代のデータセンターネットワークやSDN (Software-Defined Networking) 環境において不可欠な存在である。その安定性、信頼性、パフォーマンスは、その上で動作するすべてのオーバーレイネットワーク、ひいてはその上のアプリケーションやサービス全体の品質に直接的に影響する。そのため、アンダーレイネットワークの設計と運用においては、高い可用性と効率性が常に求められる。物理的な通信基盤を堅牢に保つことで、その上に構築されるあらゆる仮想的なサービスが安定して稼働するための土台が築かれるのである。