WIP(ワイアイピー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
WIP(ワイアイピー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
仕掛品 (シカケヒン)
英語表記
Work In Progress (ワークインプログレス)
用語解説
WIP(Work In Progress)は「進行中の作業」を意味する言葉で、IT業界に限らず様々な分野で使われるが、IT開発プロジェクトにおいては特に重要な概念として認識されている。システムエンジニアを目指す上で、このWIPという状態を正しく理解することは、円滑なプロジェクト進行や効果的なタスク管理において不可欠である。WIPは単に「作業中」を示すだけでなく、プロジェクトの健全性や効率性を測るための指標としても活用される。
WIPは、文字通り「まだ完了しておらず、何らかの作業が進行中であるタスク、機能、または成果物」を指す。例えば、プログラマーがコードを書き始めたがまだ完成していない機能、デザイナーが作成中のUIデザイン、テストエンジニアが実行中のテストケース、あるいはドキュメント作成者が執筆中の仕様書などがWIPの状態にあると言える。これらの作業は、まだ最終的な形ではなく、場合によってはレビューや承認、さらなる修正を経て初めて「完了」と見なされる。
IT開発プロジェクトにおいて、WIPという状態は多岐にわたる文脈で用いられる。プロジェクト管理ツール、例えばJiraやTrelloなどでは、タスクボード上で「To Do(未着手)」「In Progress(作業中)」「Done(完了)」といったステータスが設定されることが一般的で、この「In Progress」がWIPに相当する。チームメンバーは自身の担当するタスクをWIPに移動させることで、他のメンバーに進捗状況を共有し、協力体制を構築する。また、ソースコード管理システムであるGitなどにおいても、特定の機能開発のために作成されたブランチや、まだ十分なテストが行われていないコミット群を「WIPブランチ」や「WIPコミット」と呼ぶことがある。これは、そのコードがまだマージ(統合)可能な状態ではないこと、あるいは開発途中であることを示す。
WIPの状態を明確にすることで、プロジェクトマネージャーやチームリーダーは、現在の作業負荷やプロジェクト全体の進捗を把握しやすくなる。例えば、あるチームメンバーが多数のWIPタスクを抱えている場合、そのメンバーに作業が集中しすぎている可能性や、特定のタスクが停滞しているボトルネックが生じている可能性が浮上する。このような状況は、タスクの再配分や課題解決の必要性を示唆する重要なサインとなる。
さらに、WIPの管理は、アジャイル開発手法、特にカンバンにおいて中心的なプラクティスの一つである「WIP制限(WIP Limit)」の概念に繋がる。WIP制限とは、ある特定の工程や個人の担当において、同時に進行できるタスクの最大数を設けることである。この制限を設ける目的は、複数のタスクを同時に抱えることによって生じるコンテキストスイッチング(思考の切り替え)のオーバーヘッドを減らし、一つのタスクに集中して早く完了させることを促す点にある。複数のWIPタスクを抱えると、それぞれのタスクに対する集中力が分散し、結果としてどのタスクもなかなか完了しない「すべてがWIPで、何もDoneではない」状態に陥りやすい。WIP制限は、このような状況を防ぎ、タスクの「流れ」をスムーズにすることで、全体のリードタイム(タスク着手から完了までの時間)を短縮し、開発効率と品質の向上を目指す。
WIPを適切に管理することは、個人にとってもチームにとっても多くのメリットがある。個人の視点では、現在の作業に集中しやすくなり、タスクの完了までの一貫した思考を維持できるため、品質の高い成果物を生み出しやすくなる。チームの視点では、WIPの状況を共有することで、誰が何に取り組んでいるか、どこに課題があるかが一目瞭然となり、助けが必要なメンバーへのサポートが迅速に行えるようになる。また、WIPが多いことは、後続の工程、例えばテストやデプロイ(展開)に大きな負担をかける可能性があるため、WIPの数を適切に保つことは、プロジェクト全体のリスク管理にも繋がる。
システムエンジニアを目指す初心者は、自身の担当するタスクがWIPの状態にあることを常に意識し、そのステータスをチームに正確に共有する習慣を身につけることが重要である。そして、一度WIPとして着手したタスクは、できる限り速やかに完了させることを目指すべきである。安易に多数のタスクをWIPにしたり、完了の見込みが立たないままWIPの状態に放置したりすることは、チーム全体の生産性を低下させ、プロジェクトの遅延を招く原因となる。WIPはあくまで「完了へ向かう途中の状態」であり、その目標は「完了(Done)」であることを忘れてはならない。プロジェクトやチームによっては、WIPの具体的な定義や運用のルールが異なる場合もあるため、参加するプロジェクトのルールを理解し、それに従ってWIPを管理することが求められる。WIPを理解し、効果的に活用することは、システム開発における個人の生産性向上とチーム全体の成功に直結する重要なスキルとなる。