WSFC(ダブルエスエフシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
WSFC(ダブルエスエフシー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
フェールオーバー クラスタリング (フェールオーバー クラスタリング)
英語表記
WSFC (ダブリューエフシーシー)
用語解説
WSFCは、Windows Server Failover Clusteringの略であり、マイクロソフトが提供するWindows Serverオペレーティングシステムに標準で搭載されている高可用性機能の一つである。この技術の主要な目的は、企業や組織の重要な情報システムが、ハードウェア障害やソフトウェア障害によって停止することを防ぎ、サービスを継続的に提供できるようにすることだ。具体的には、複数の物理サーバーを連携させ、もしその中のいずれかのサーバーに障害が発生した場合でも、自動的に健全な別のサーバーへ処理を引き継ぐ「フェイルオーバー」の仕組みを提供することで、システム全体の停止時間を最小限に抑える。データベースサーバー(例えばSQL Server)、ファイルサーバー、メールサーバー(Exchange Server)、仮想化基盤(Hyper-V)など、ビジネスに不可欠な様々なアプリケーションやサービスでWSFCは利用され、ビジネス継続性の確保や、SLA(サービスレベルアグリーメント)の達成に貢献する極めて重要な技術となっている。
WSFCの詳細な仕組みを理解するには、その主要な構成要素と動作原理を知る必要がある。WSFCは基本的に、複数の物理サーバーを「ノード」としてクラスター(集団)を構成し、これらのノードが一つの論理的なシステムとして振る舞う。このクラスターが管理するサービスやアプリケーションは、「クラスターリソース」と呼ばれ、IPアドレス、ネットワーク名、共有ストレージのディスク、特定のアプリケーションサービスなどがこれに該当する。これらのリソースはさらに「ロール」としてグループ化され、特定のノード上で稼働する。
WSFCの根幹をなす機能の一つが「フェイルオーバー」だ。クラスターノード間では、「ハートビート」と呼ばれる定期的な通信が行われ、各ノードの健全性が常に監視されている。もしあるノードに障害が発生し、ハートビートが途絶えたり、そのノード上で稼働しているクラスターリソースが応答しなくなったりした場合、WSFCはその障害を検知する。障害が検知されると、WSFCは障害が発生したノードで稼働していたクラスターリソースを、クラスター内の別の健全なノードへ自動的に移行させる。この自動移行プロセスがフェイルオーバーであり、これによりサービスの中断時間を大幅に短縮できる。フェイルオーバーの際には、クラスターリソースが利用していた共有ストレージへのアクセス権も移行先のノードへ引き継がれるため、データの一貫性が保たれ、サービスが途切れることなく継続される。クライアントは、仮想的なネットワーク名やIPアドレスを通じてクラスターに接続するため、フェイルオーバーが発生しても接続先が自動的に切り替わり、サービスが再開されれば通常通り利用を継続できる。
WSFCにおいて非常に重要な概念が「クォーラム」である。クォーラムは、クラスター内でどのノードが「正当なクラスターのメンバー」であるかを決定し、動作を継続するための仕組みだ。これは、ネットワークの分断などによってクラスターが複数のグループに分かれてしまう「スプリットブレイン」と呼ばれる状態を防ぐために不可欠である。スプリットブレインが発生すると、それぞれのグループが自身を正当なクラスターと認識し、サービスを起動しようとすることで、共有ストレージのデータが同時に書き換えられて破壊される危険性がある。クォーラムは、過半数の票を持つグループのみがクラスターとして動作することを許可する多数決のようなメカニズムでこの問題を解決する。クォーラムの構成には、クラスター内のノード数や構成に応じて、ディスク監視、ファイル共有監視、クラウド監視といった複数の方式が提供されており、適切なものを選択することでクラスターの安定性を高めることができる。
WSFCの構築では、ネットワーク構成も重要となる。通常、WSFC環境では複数のネットワークインターフェースカード(NIC)を使用することが推奨される。一つは、クライアントからのサービスアクセスを受け付けるための「パブリックネットワーク」であり、もう一つは、ノード間のハートビート通信やクラスター内部の管理通信を行うための「プライベートネットワーク」、または「クラスター通信ネットワーク」である。このようにネットワークを分離することで、通信の冗長性が確保され、片方のネットワークに障害が発生してもクラスター内部の通信やクライアントからのアクセスが維持される可能性が高まる。また、各クラスターリソースには、クライアントがアクセスするための専用のIPアドレスやネットワーク名(バーチャルIPアドレス、バーチャルネットワーク名)が割り当てられ、これらはクラスターサービスによって管理され、フェイルオーバー時に自動的に移行先のノードで有効化される。これにより、クライアントは常に同じアドレスや名前でサービスにアクセスでき、基盤の物理構成を意識する必要がない。WSFCは、システムの可用性を飛躍的に高めるための基盤技術として、現代のITインフラにおいて不可欠な存在である。