【ITニュース解説】I have tried AI-assisted reviews, let's look at the numbers.
2025年09月14日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「I have tried AI-assisted reviews, let's look at the numbers.」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
小規模開発チームがAIコードレビューツールを1ヶ月間試した結果が報告された。AIのコメントは、約35%が品質改善、3%がセキュリティ指摘を含む有用なものであった。しかし、無用な指摘や誤りも計28%あり、今後の改善が期待されることが示された。
ITニュース解説
システム開発において、プログラマーが書いたコードの品質を確保するために「コードレビュー」という工程は欠かせない。これは、コードを書いた本人以外のプログラマーがそのコードを読み、潜在的な問題点、バグ、改善点などを指摘し、より良いコードへと修正していく作業のことである。コードレビューは、プログラムの不具合を早期に発見するだけでなく、セキュリティ上の脆弱性を低減させたり、コードの読みやすさやメンテナンスのしやすさを向上させたりする効果がある。さらに、チーム内での知識共有や技術力の向上にも繋がるため、開発プロジェクトの成功に不可欠なプロセスだと考えられている。
伝統的なコードレビューの手法には、いくつかの種類がある。「4-eyeレビュー」とは、コードを書いた開発者以外に、さらに2人のレビュー担当者がそのコードをチェックする方式で、合計3つの視点からコードを確認するため、非常に高い品質を期待できる。しかし、それだけ多くの時間と人手が必要になるというデメリットもある。「2-eyeレビュー」は、コードを書いた開発者以外に1人のレビュー担当者が確認する方式で、4-eyeレビューよりもリソースを節約できるが、チェックの厳密さはやや劣る可能性がある。どちらの方法も、レビュー担当者の経験やスキル、集中力に依存するため、人間がレビューを行うことの限界も存在する。
今回注目する話題は、オープンソースプロジェクト「Lychee」のリード開発者が、少人数チームという限られたリソースの中で、このコードレビューの課題に直面し、新たな解決策として「AIアシストレビュー」を導入した事例である。人手不足のため、従来の「2-eyeレビュー」だけでは十分なチェックが難しい状況だったことから、AIを「もう一対の目」として活用し、レビューの質と効率を高めることを試みたのだ。リード開発者は1ヶ月間にわたりAIアシストレビューツールを使用し、AIがプルリクエスト(コードの変更提案)に対して行ったコメントを詳細に分析し、その有効性を評価した。
この評価によって明らかになったAIのコメントの内訳は、AIの現状と可能性を示す興味深いデータだった。AIが生成したコメントの総数のうち、それぞれのカテゴリーに分類された割合は以下の通りである。
まず、「無益なコメント」が15%を占めた。これは、コードの改善にまったく寄与しない、あるいはすでに修正済みの箇所を指摘するなど、開発者にとって価値のないコメントを指す。AIがコードの全体的な文脈や開発者の意図を十分に理解できていないために、このような的外れな指摘をしてしまうケースが多いと考えられる。
次に、「間違った仮定に基づくコメント」が13%あった。これは、AIがコードの機能や目的について誤った解釈をした結果、本来は問題ない処理をバグと見なしたり、不適切な修正を提案したりするコメントである。AIはまだ、複雑なビジネスロジックやプロジェクト特有の設計思想を深く理解することが難しいため、このような誤った仮定に基づいた指摘をしてしまうことがある。
「重箱の隅をつつくようなコメント」(nitpicking)は21%と比較的高い割合を示した。これは、コードの機能や動作には影響しない、ごく軽微な書式や命名規則、コメントの書き方などに関する指摘である。例えば、インデントのスペースの数が統一されていない、変数名がプロジェクトの命名規則にわずかに反している、といった、些細だがコードの統一性を保つ上では意味のある指摘だ。これらはコードの品質を間接的に向上させるが、開発者の時間と労力を無駄に消費させてしまう可能性もある。
一方で、AIはより建設的な指摘も行っている。「考察の深いコメント」(thoughtful)は13%だった。これは、単なる表面的な修正提案にとどまらず、コードの設計の方向性、将来的な拡張性、より効率的で洗練された実装方法などについて、開発者が深く考えさせられるような示唆に富んだ指摘を指す。このようなコメントは、開発者の視点を広げ、自身のコードをより多角的に評価する良い機会となる。
そして最も注目すべきは、「品質改善に繋がるコメント」が35%と最も高い割合を占めたことである。これは、AIがコード内のバグを特定したり、プログラムの実行速度(パフォーマンス)を向上させるための具体的な方法を提案したり、コードの読みやすさやメンテナンスのしやすさ(保守性)を高めるための有効な改善策を提示したりするコメントを指す。例えば、冗長なコードの削減、特定の条件下での考慮漏れの指摘、コード構造の最適化などがこれに含まれる。AIが実際のコードの品質向上に直接的に貢献していることを示す、非常に価値のある結果と言える。
さらに、この品質改善に繋がるコメントの中には、「セキュリティ上の致命的な発見」(security/critical findings)が3%含まれていた。これは、AIがシステムの脆弱性や深刻なバグを発見し、潜在的なセキュリティリスクやシステム全体の動作に影響を及ぼす重大な問題を未然に防ぐ能力を持っていることを示している。セキュリティに関する問題は、一度本番環境にリリースされてしまうと甚大な被害をもたらす可能性があるため、AIがこのような重要な発見に貢献できることは、その有用性を強く裏付けるものとなる。
この結果から、AIアシストレビューツールはまだ発展途上であり完璧ではないが、システム開発プロセスにおいて非常に有望な役割を果たすことが明確になった。約半数のコメント(考察の深いコメント13% + 品質改善に繋がるコメント35%)が、コードの品質向上や開発者の成長に貢献する有用なものであった。特にセキュリティや致命的なバグの発見は、AIが人間では見落としがちな領域を補完する強力なツールとなり得ることを示している。
しかし、AIが誤った指摘をしたり、無益なコメントを生成したりする割合も無視できない。これは、AIがコードの複雑な文脈や開発者の意図、そしてプロジェクト全体の設計思想を完全に理解するに至っていない現状を示唆している。そのため、AIのコメントはあくまで補助的な情報として活用し、最終的な判断は経験豊富な人間の開発者が行う必要がある。AIは「完璧なレビューアー」ではなく、「効率的なアシスタント」として機能すると考えるのが適切だろう。
将来的には、AIが特定のプロジェクトのスタイルガイドや設計原則をより深く学習し、個々のチームのニーズに合わせてカスタマイズできるようになれば、無益なコメントや間違った仮定に基づくコメントは減少し、より精度の高い、質の高いフィードバックを提供できるようになることが期待される。少人数チームやリソースが限られた開発環境において、AIアシストレビューは、コードの品質を維持し、開発効率を高めるための重要な選択肢となるだろう。このように、AIはプログラミングの世界で、私たちの開発プロセスを大きく変革していく可能性を秘めているのである。