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【ITニュース解説】From ASTs to RakuAST to ASTQuery

2025年09月14日に「Dev.to」が公開したITニュース「From ASTs to RakuAST to ASTQuery」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

RakuASTは、Rakuコードの構造を木構造(AST)で表現し、コンパイラ等がコード解析・変換に利用する。ASTQueryはRakuASTを使い、コード内の特定の要素を効率的に検索・捕捉し、自動リファクタリングやコンパイル時のコード書き換えを可能にする強力なツールだ。

出典: From ASTs to RakuAST to ASTQuery | Dev.to公開日:

ITニュース解説

このニュース記事は、プログラミング言語Rakuにおいて、コードの内部構造を解析し、変換するための新しい強力な方法について解説している。具体的には、RakuASTというコードの木構造表現と、それを活用するASTQueryという検索・変換ツールが紹介される。システムエンジニアにとって、プログラムのコードは単なるテキストではなく、意味を持つ構造として捉えることで、より高度な操作が可能になる。この記事は、コードの内部構造を木のような形で表現し、それを効果的に扱う方法を教えてくれる。

Abstract Syntax Tree(AST、抽象構文木)は、プログラミングコードがコンピューターによって解析された後、その意味と構造を木のような形で表現したデータ構造のことである。例えば、「関数呼び出し」や「変数の宣言」といったコードの要素が、木の各ノードに対応する。なぜASTが重要かというと、コンパイラがコードを実行形式に変換したり、リンターが構文エラーやスタイル違反をチェックしたり、リファクタリングツールが安全にコードを修正したりする際に、コードの意味を正確に理解する基盤となるからだ。単なる文字列検索では難しい、コードの意味に基づいた厳密な検索や変換を可能にする。

RakuASTは、Raku言語のコードを表現する新しい、より構造化された方法を提供する。RakuAST::CallRakuAST::Varといった具体的なノードタイプを通じて、コードの各要素に直接アクセスできる。これはまだ実験段階の機能だが、Rakuコードの深い分析と変換の可能性を大きく広げるものだ。ASTを使った検索は、従来のテキスト検索(grepなど)の限界を超える。例えば、「特定の型の引数をどこかに含む関数呼び出し」のように、コードの意味と構造に基づいた複雑な条件で、目的のコード部分を厳密に特定できる。これにより、誤った箇所を修正するリスクを減らし、より安全なリファクタリング(コードの整理・改善)や、古いパターンを新しいAPIに自動的に変換するようなコードのアップグレードが可能になる。

RakuASTとASTQueryは、プログラムが実行される前にコードを自動的に書き換える「コンパイル時リライト」という強力な機能を提供する。Rakuの「CHECKフェーザー」という仕組みを使うと、プログラムが動作する直前に、そのコードのASTにアクセスして検査や変更ができるようになる。これにより、プログラミングにおける「マクロ」のような役割を果たし、コードの自動生成や変換が可能になる。例えば、「say関数が呼ばれるすべての箇所で、出力の最後に特定の文字列を自動的に追加する」といった処理を実現できる。これは、コードベース全体にわたる特定のパターンを見つけ出し、一括で修正したり、機能を追加したりする際に非常に有用なアプローチである。

ASTQueryは、RakuASTの木構造を効率的に検索・操作するための専用クエリ言語である。この言語を使うと、探したいコードのパターンを簡潔に記述できる。セレクタ言語では、ノードの種類(例:.call)、ノード間の関係性(例:>で直接の子、>>>で全ての子孫)、ノードの属性(例:[name="say"]で名前が"say")を組み合わせて指定できる。さらに、検索で見つかった特定のノードに名前を付けて「キャプチャ」し、後からそのノードを参照して利用することが可能だ。よく使う検索パターンは「関数」として登録し、再利用することもできる。セレクタの各要素は、ノードのクラス名(RakuAST::Call)、共通のノード群をまとめたグループ(.call)、ノードのID(#say)、属性による条件([left=1, right=3])、捕捉するための名前($var)、そして定義済み関数(&is-call)などがある。これらの要素を組み合わせることで、非常に具体的で複雑な検索条件を表現できる。

セレクタ言語では、ノード間の親子や祖先・子孫といった関係性を明示的に指定するための演算子が用意されている。例えば、「>」は直接の子ノードを、「>>>」は間に任意のノードを挟む子孫ノードを表す。これらの逆方向を示す祖先関係の演算子も存在する。また、ノードが持つ属性値に対する比較も多様にサポートされている。特定の文字列が含まれるか(~=)、文字列で始まるか(^=)、文字列で終わるか($= )、正規表現パターンにマッチするか(*=/regex/)といった条件で属性を評価できる。これらの機能により、コードの意味的な特徴に基づいて、より精度の高い検索を実現できる。例えば、「名前が"s"で始まる関数呼び出し」や「引数に整数が含まれる呼び出し」といった具体的なパターンを見つけることが可能になる。

ASTQueryは、様々な状況で利用できる。例えば、「1 * 3」のような特定の演算子を持つコードを特定したり、複雑な構造の中で祖先や子孫の関係にあるノードをキャプチャしたりする。プログラムからASTQueryを利用するためのAPIも提供されており、独自のRakuスクリプトでコード解析や変換を自動化できる。また、コマンドラインツールも用意されており、プログラムを書かずにターミナルから直接ファイルやディレクトリ内のコードを検索し、結果を確認できるため、簡単なコード調査に便利だ。セレクタのデバッグには、ASTQUERY_DEBUG=1を設定することで詳細な実行ログを出力する機能があるため、複雑なセレクタが意図通りに機能しない場合に役立つ。注意点としては、RakuAST自体がまだ実験的な段階であるため、その仕様やAPIが将来変更される可能性があること、また一部の正規表現フラグが未対応であることなどが挙げられる。従来の「スペース演算子」による関係性の指定は非推奨となり、明示的な演算子の使用が推奨されている。

ASTQueryは、RakuASTを活用することで、Rakuコードの意味と構造を深く理解し、高精度な検索や自動変換を可能にする画期的なツールである。文字列レベルでは捉えきれない、コードの「形」に基づいた操作を実現し、自動リファクタリングやコード品質向上に大きく貢献する。システムエンジニアにとって、これは複雑なコードベースを効率的に管理し、保守性を高めるための強力な味方となる。

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