【ITニュース解説】Automation in Practice: Partner Onboarding Case Study

2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「Automation in Practice: Partner Onboarding Case Study」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

手作業で30日・3万ユーロかかったパートナーオンボーディングをAI活用で自動化。システムに入力するだけで、複数のシステムへ自動反映し、作業時間を3日に、コストを3千ユーロへ90%削減した。手作業の重複やボトルネックを解消し、業務効率を大幅に改善した。

ITニュース解説

この記事は、企業が新しいパートナーを迎え入れる「オンボーディング」という複雑な業務プロセスを、どのように自動化し、大きな成果を出したかを示す事例だ。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、実際のビジネス課題を技術で解決する具体例として非常に参考になるだろう。

まず、このプロジェクトが直面していた課題を説明する。ある企業が、自社の製品を他の会社が自分たちのブランド名で提供できる「ホワイトレーベルソリューション」を展開する際、新しいパートナーが増えるたびに、その導入プロセスが非常に時間とコストがかかっていた。具体的には、一つのパートナーをオンボーディングするのに約30日、費用は約3万ユーロ(日本円で約450万円)も必要だった。これは、企業ロゴやブランド名、ドメイン名といった様々な設定を、パートナーごとに手作業でカスタマイズする必要があったためだ。

さらに、この作業は「ブランドアセットの管理」「検索設定の更新」「ドメインやセキュリティ証明書の設定」「予約システムの連携」「分析ツールの設定」「データ処理パイプラインの構成」「外部サービスとの連携」「プロジェクト管理ツールのタスク作成」など、8〜10もの異なるシステムやプログラムの保存場所(リポジトリと呼ぶ)にまたがり、繰り返し行われる非常に手間のかかるものだった。しかも、これらの作業は異なる複数のチームに分散しており、チーム間の調整が難しく、それぞれが異なる優先順位を持っていたため、連絡の遅れや作業の停滞(ボトルネック)が頻繁に発生し、全体のスケジュールを遅らせる大きな原因となっていた。同じような作業を何度も手作業で繰り返すことは、人的ミスも誘発しやすかった。

この状況を改善するため、企業は「自動化」という解決策を選んだ。彼らが開発したのは、複数の社内システムを連携させ、一元的に操作できる総合的な自動化システムだった。このシステムでは、使いやすい画面(ユーザーインターフェース)を通して必要な情報を一度入力するだけで、その情報が自動的に関連するすべてのプログラムのコードや設定に適用される仕組みだ。これにより、一つ一つのシステムを手作業で設定する必要がなくなった。

この自動化システムの開発プロセスでは、「AIアシスト開発」が大きな役割を果たした。通常、このような複雑な管理画面(ダッシュボード)の開発には3〜6ヶ月もの期間と多くの開発者が必要となる。しかし、AIツールであるCursorなどを活用することで、開発期間を劇的に短縮し、わずか数週間でシステム全体を完成させることができた。AIの助けを借りることで、アイデアを素早く試作品にし(ラピッドプロトタイピング)、実装し、テストと改善を高速で繰り返すことが可能になったのだ。これにより、製品を市場に投入するまでの時間を短縮し、開発コストを削減し、開発チームはより創造的な問題解決に集中できるようになった。

ただし、自動化だからといってすべてを機械任せにするわけではない。このシステムでは「ヒューマン・イン・ザ・ループ」という考え方を取り入れている。これは、自動化されたプロセスの中に人間の監視や判断の段階を組み込む方法だ。具体的には、システムが自動でコードの変更提案(プルリクエストと呼ぶ)を作成し、変更内容に応じて適切な担当者にそのレビューを依頼する。人間が最終的に変更内容を確認し、問題がないことを承認してから、実際のシステムに適用されるのだ。この段階があることで、自動化された変更による潜在的なリスクを防ぎ、品質を保証し、システムに対する信頼を段階的に築き上げることができる。将来的には完全な自動デプロイ(システムへの自動適用)を目指すものの、この段階的なアプローチは、安全性を確保しつつ、自動化の恩恵を最大限に引き出すための重要なステップだ。

さらに、このシステムは外部サービスとの連携も自動化した。例えば、Amazonが提供するクラウドストレージサービス「AWS S3」に対して、パートナーのロゴやアイコンなどの画像ファイルを自動でアップロード・管理する。また、ウェブサイトのクッキー同意管理サービスである「Osano」や、地図サービスを提供する「Mapbox」といった外部サービスとも、それぞれのシステムが提供する「API」(異なるシステム同士が通信するための窓口のようなもの)を通じて自動で設定連携を行う。これにより、各サービスの設定を一つ一つ手作業で行う手間がなくなり、設定ミスも防げるようになった。

ユーザー体験にも配慮し、この自動化システムには直感的で使いやすいダッシュボードが用意されている。ユーザーはウィザード形式の画面に沿って、ブランドの設定、アセットのアップロード、デプロイ(展開)の選択など、一連のパートナーオンボーディングプロセスを進めることができる。入力された情報がどのようにシステム全体に適用されるかをリアルタイムで確認できるプレビュー機能も備わっており、安心して操作できるよう工夫されている。

この自動化プロジェクトによって得られた結果は目覚ましいものだった。パートナーのオンボーディングにかかる時間は、以前の約30日からわずか3日にまで短縮され、90%もの大幅な効率アップを実現した。コスト面でも、一つのパートナーあたり約3万ユーロかかっていた費用が3千ユーロにまで削減され、これも90%のコスト削減に成功した。品質面では、手作業によるエラーが減り、プロセスが標準化されたことで、すべてのパートナーに一貫した高品質な体験を提供できるようになった。また、システムが複数のパートナーを同時に処理できるようになったため(スケーラビリティの向上)、事業の成長に合わせて効率的に対応できる体制が整った。

このプロジェクトから得られた教訓も重要だ。まず、自動化に着手する際は、最も影響が大きく、繰り返し行われる作業から始めることが効果的である。次に、システムは安全性と信頼性を最優先に設計し、重複する作業の検出やエラー発生時の回復メカニズムを組み込むべきだ。そして、人間の監視(ヒューマン・イン・ザ・ループ)を維持し、ユーザーにとって使いやすいインターフェースを提供すること。最後に、将来的な事業拡大を見越して、システムがどれだけ多くの処理をこなせるか(スケーラビリティ)を考慮して設計することが成功の鍵となる。

この事例は、AIアシスト開発による自動化が、いかに複雑なビジネス課題を解決し、劇的な効率化とコスト削減をもたらすかを示している。反復的で手作業に頼っていたプロセスを特定し、なぜ自動化が必要なのかを明確にし、計画的にシステムを実装することで、企業は大きなビジネス価値を創出できる。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このような自動化の知見は、未来のIT業界で活躍するための強力な武器となるだろう。

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