【ITニュース解説】The first new Bond game in over a decade is Hitman meets action blockbuster
2025年09月04日に「Engadget」が公開したITニュース「The first new Bond game in over a decade is Hitman meets action blockbuster」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
IO Interactiveが新作ジェームズ・ボンドゲーム「007 First Light」を発表した。ヒットマン風のステルスにアクション映画のような銃撃戦やカーチェイスを融合。新米時代のボンドの物語を描き、Q Watchなどのガジェットを駆使する多様なゲームプレイが特徴だ。PS5などで2025年3月27日発売。
ITニュース解説
新作のジェームズ・ボンドゲーム「007 First Light」が、ゲーム開発会社のIO Interactiveから発表された。このゲームは、IO Interactiveが以前手がけた人気シリーズ「Hitman」の要素と、アクション映画のような壮大な展開を組み合わせた、野心的な作品として注目されている。システムエンジニアを目指す人にとって、このようなゲームがどのように企画され、どのような技術的な側面から構築されているのかを知ることは、将来の仕事のヒントになるだろう。
この新しいボンドゲームは、これまで多くの作品で描かれてきたベテランスパイとしてのジェームズ・ボンドとは異なり、「訓練中の未熟なボンド」のオリジンストーリーを描く。プレイヤーは、まだ経験の浅いボンドとして、ベテランスパイのチームと共に、悪徳な「ダブルオー」エージェントを追跡するというミッションに挑むことになる。これは、単に派手なアクションだけでなく、キャラクターの成長や人間関係もゲームの重要な要素になることを示唆している。
ゲームプレイは大きく分けて三つの柱で構成されている。一つ目は、創造的で探索的な「サンドボックス」要素だ。これは、「Hitman」シリーズで培われた、プレイヤーに高い自由度を与えるシステムを受け継いでいる。例えば、ボンドが高級な屋敷に潜入するシーンでは、プレイヤーは決められたルートに従うだけでなく、様々な方法で目標に到達できる。警備員から隠れてこっそり進んだり、環境にある物を操作して警備員の注意をそらしたり、開いた窓から建物に侵入したりすることも可能だ。また、スタッフと会話を交わし、自分がそこにいるべき人間だと信じ込ませる「ソーシャルインタラクション」も重要な要素となる。これは、ゲーム内のキャラクターとの会話を通じて情報を引き出したり、状況を有利に進めたりするシステムだ。従来のボンドゲームのように、ただ敵を倒すだけではなく、知恵と工夫を使ってミッションを達成する楽しさが重視されている。この「Hitman」に似たステルス要素は、殺戮を目的とせず、より多様な解決策をプレイヤーに提供することを目指している。これは、ゲームデザインの段階で、プレイヤーがどのような行動を取るかを予測し、それに対応するAI(人工知能)の挙動や環境の反応を緻密に設計する必要があることを意味する。
二つ目の柱は、先進的なガジェットとそのユーザーインターフェース(UI)の統合だ。ボンドの象徴的なガジェットである「Qウォッチ」は、オメガブランドのスマートウォッチとして登場し、ゲームのHUD(ヘッドアップディスプレイ)機能を見事に統合している。HUDとは、ゲーム画面上に表示される情報(体力ゲージ、マップ、武器の種類など)のことで、Qウォッチはこの情報をボンドの腕元で確認できるという設定になっている。プレイヤーはQウォッチを使って、現在位置や利用可能な武器、ガジェットを選択できるだけでなく、周囲の環境を分析し、インタラクション可能な場所やミッション進行のヒントを見つけることもできる。これは、ゲームの世界観を壊すことなく、プレイヤーに必要な情報を提供するための洗練されたUI/UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインの試みと言えるだろう。プレイヤーがミッションに対して様々なアプローチを選べる自由度があるため、Qウォッチのようなツールが、その選択肢を広げ、戦略的な思考を促す役割を果たす。システムエンジニアリングの観点からは、このQウォッチの機能を実現するために、ゲーム内の3D空間データとUI表示システム、そしてプレイヤーの入力受付システムを連携させる高度なプログラミングが必要になる。
三つ目の柱は、迫力満点のアクションセットピースだ。これは、映画のような見せ場をゲームプレイに組み込む要素で、まるでプレイヤーがアクション映画の主人公になったかのような体験を提供する。例えば、発表されたデモでは、「Uncharted」シリーズを彷彿とさせる壮大なカーチェイスが披露された。ボンドが悪徳エージェントを追跡し、スイスのマーケットを破壊しながら高速で走り抜けるシーンは、爆発やニアミスが連続する大混乱の中で展開される。ただし、このカーチェイスでは、プレイヤーの運転スキルに関わらず、敵に追いつくタイミングはゲームによって制御されていると説明された。これは、ゲームの物語や演出を優先するために、プレイヤーの自由度を一時的に制限する「スクリプトイベント」が組み込まれていることを示している。このような演出を実現するには、物理エンジンによる車両の挙動計算、リアルタイムの破壊表現、そしてイベントのトリガーを管理する高度なスクリプトシステムが不可欠だ。
カーチェイスの後は、厳重に警備された空軍基地での銃撃戦へと移行する。ここでは、遮蔽物を活用した戦術的な銃撃戦が展開される。弾薬が尽きたら、銃を投げつけて反撃するなど、状況に応じたアクションが求められる。そして、ハイライトは離陸する輸送機に乗り込み、機内で繰り広げられるアクションだ。ボンドはQウォッチを使って輸送機を傾けさせ、機内の貨物や敵を壁に激突させたり、機外へ投げ出したりする。最終的にはボンド自身も飛行機から投げ出され、空中でのパラシュート奪取というスリリングな展開が待っている。これらのシーンは、ゲームの物理エンジンがどのように活用され、プレイヤーの入力に対して世界がどのように反応するかを示す良い例だ。Qウォッチの操作一つで巨大な飛行機が傾き、重力や慣性の法則に従ってオブジェクトが動く様子は、高度な物理演算処理が背後で動いていることを物語っている。
「007 First Light」は、従来のボンドゲームが主にファーストパーソンシューター(FPS)であったのに対し、ステルス、探索、戦略、そして壮大なアクションを組み合わせることで、新しいボンド体験を創造しようとしている。IO Interactiveは、一本道のリニアな物語の中に、プレイヤーが「冒険をコントロールする」自由な選択肢をうまく融合させることを目指している。このゲームが、異なるタイプのゲームプレイ要素をどのようにシームレスに繋ぎ合わせ、一貫した体験を提供するのかは、今後の開発における大きな課題であり、システムエンジニアリングの腕の見せ所となるだろう。
2025年3月27日に、PlayStation 5、Xbox Series X/S、Nintendo Switch 2、そしてPC向けに発売が予定されているこの「007 First Light」は、単なるエンターテイメントとしてだけでなく、ゲームというプロダクトがどのように設計され、様々な技術がどのように統合されていくのかを学ぶ上でも、注目すべき作品となるだろう。