【ITニュース解説】第875回 夏休み特別企画 自作PCを組もう[前編] ——2025年8月におけるミドルローPCを組むためのパーツの選定

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自作PC組み立ての夏休み特別企画前編。2025年8月時点でミドルローPCを組むため、パーツ選定に焦点を当てる。Ubuntuインストールを前提に、CPUやメモリなど主要パーツの選び方やポイントを解説する。

ITニュース解説

自作PCの組み立ては、単にパソコンを自分で作る行為以上の深い意味を持つ。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これはパソコンの内部構造や各部品の役割、そしてそれらがどのように連携して動くのかを実践的に学ぶ絶好の機会となる。既製品のパソコンでは知ることができない、ハードウェアとソフトウェアの密接な関係性を肌で感じられる体験であり、将来的にシステムのトラブルシューティングや性能改善を行う上で非常に役立つ知識と経験を得られるだろう。今回の企画では、2025年8月時点での「ミドルローPC」のパーツ選定に焦点を当てており、これは高性能すぎず、しかし開発作業や日常利用において十分な快適さを提供するバランスの取れた性能を持つパソコンを指す。 パソコンの性能を左右する最も重要な部品の一つがCPU(中央演算処理装置)だ。これはPC全体の計算や処理の中心を担う、いわば頭脳のような存在である。CPUの性能は、コア数やスレッド数、動作周波数などで決まり、これらが多ければ多いほど、同時に多くの作業を効率良くこなせる。システム開発においては、プログラムのコンパイル(ソースコードを実行可能な形式に変換する作業)や仮想環境の実行など、高いCPU性能が求められる場面が頻繁に発生するため、適切な選定が重要になる。 次に、PCのすべてのパーツを接続し、互いに通信させるための土台となるのがマザーボード(主基板)である。マザーボードはCPUソケットの形状によって搭載できるCPUが限定されるため、CPUの選定と同時に適切なものを選ぶ必要がある。また、メモリやストレージの接続規格、拡張スロットの有無なども重要な選定ポイントだ。将来的な部品のアップグレードを考慮するならば、ある程度の拡張性を持つマザーボードを選ぶことが賢明である。 メモリ(主記憶装置)は、PCが現在実行中のプログラムやデータを一時的に保管しておく作業領域だ。容量が多いほど、複数のアプリケーションを同時に起動したり、大規模なデータを処理したりする際にPCの動作がスムーズになる。システム開発では、統合開発環境(IDE)の実行、複数の仮想マシン、データベースなど、多くのメモリを消費するツールを使用することが多いため、十分な容量のメモリを搭載することが快適な作業環境の鍵となる。 ストレージ(補助記憶装置)は、OSやアプリケーション、そしてユーザーのデータを永続的に保存する装置である。近年では、HDD(ハードディスクドライブ)よりも高速なSSD(ソリッドステートドライブ)が主流であり、特にNVMe対応のM.2 SSDは、その高いデータ転送速度によりOSやプログラムの起動・読み込み速度を大幅に向上させる。開発作業においては、頻繁なファイルの読み書きが伴うため、高速なストレージの採用が作業効率に直結する。 グラフィックボード(画像処理装置)は、画面表示のための画像処理を行う部品である。ミドルローPCの多くでは、CPUに内蔵されたグラフィックス機能で十分な表示性能を発揮する場合が多い。しかし、3Dグラフィックスを用いた開発や、機械学習、動画編集など特定の用途では、高性能なグラフィックボードが必要となることもあるため、自身の用途に合わせて検討する必要がある。 電源ユニットは、PCの各部品に必要な電力を供給する非常に重要な装置だ。選択したCPUやグラフィックボード、その他のパーツ全体が必要とする電力(ワット数)をカバーし、さらに安定した電力供給のために余裕を持たせた容量を選ぶことが、PCの安定稼働には不可欠である。また、電力変換効率を示す「80 PLUS認証」のグレードも、品質と省電力性能の目安となる。 PCケースは、これらの重要なパーツをすべて収納し、物理的な保護や冷却機能を提供する外装である。内部のエアフロー(空気の流れ)設計は、パーツの冷却性能に大きく影響するため、適切なサイズと通気性の良いものを選ぶことが大切だ。また、将来的なパーツの増設や交換を考慮し、作業しやすい内部構造であるかも選定時のポイントとなる。 最後に、OS(オペレーティングシステム)は、PC全体を制御し、ユーザーが操作するための基本的なソフトウェアである。今回の企画で選定されているUbuntuは、LinuxベースのOSであり、システム開発において非常に広く利用されている。開発ツールが豊富に提供され、安定性が高く、オープンソースである点が、特にシステムエンジニアを目指す皆さんにとって大きな魅力となる。 自作PCのパーツ選定は、個々の部品の性能を最大限に引き出すだけでなく、それら全体のバランスと互換性が重要である。全てのパーツが適切に連携し、安定して動作することで、はじめて快適な作業環境が実現する。今回の自作PC企画を通じて、ハードウェアの構成からOSのインストールまでを自身の手で行うことは、システムエンジニアとして必要な技術的な洞察力と問題解決能力を養う上で、かけがえのない経験となるだろう。

【ITニュース解説】第875回 夏休み特別企画 自作PCを組もう[前編] ——2025年8月におけるミドルローPCを組むためのパーツの選定