【ITニュース解説】How I Built a Multi-Tenant CliniPrac - Practice Management Software System with Kiro
2025年09月13日に「Dev.to」が公開したITニュース「How I Built a Multi-Tenant CliniPrac - Practice Management Software System with Kiro」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Kiroを使い、複数の組織が利用できる複雑な医療管理システムを開発。ユーザー物語など詳細な仕様を基に、APIやDBスキーマ、認証システムを自動生成した。仕様とコードの同期を保ち、品質を維持しつつ開発を効率化、本番レベルのシステムを実現した。
ITニュース解説
医療分野の業務管理システムをゼロから構築することは、非常に複雑な課題を伴う。患者情報、予約、請求、処方箋、分析など、多岐にわたる機能を連携させる必要があり、さらに複数の役割を持つユーザーが利用し、機密性の高いデータを扱うため、高いセキュリティと信頼性が求められる。この解説では、こうした難題を克服し、複数のクリニックが独立して利用できる「マルチテナント」型の業務管理システム「CliniPrac」をどのように開発したか、そしてその際に活用された「Kiro」というツールがどのような役割を果たしたのかを具体的に説明する。
Kiroは、単にコードを自動生成するツールではなく、「仕様書駆動開発」というアプローチを可能にする。これは、プログラミングを始める前に、まずシステムがどのように動作すべきか、どのような機能を持つべきかという「設計図」を詳細に作成することから始める開発手法である。従来のように、思いつきでコードを書き始めるのではなく、Kiroを使うことで、開発者はまずシステムのビジョンや構造、使用する技術スタックを明確にする「Steering docs」を作成する。次に、ユーザーがシステムで何ができるかを記述する「ユーザー物語」、システム間の情報連携の窓口となる「API」、そしてデータベースにどのようなデータを、どのような形式で保存するかを定義する「データベーススキーマ」といった詳細な「仕様書(Specifications)」を作成する。Kiroは、これらの設計情報をもとに、実際のコードを生成していくため、開発者は設計に集中し、質の高いシステムを構築できる。
具体的な開発の流れとして、まずKiro上で機能ごとの「仕様に関する対話」を行った。例えば、「医師として、患者の永続的な記録となるデジタル処方箋を作成できる」というユーザー物語を定義し、その機能が「自動保存される」「印刷可能である」「患者の過去の履歴と紐付けられる」といった「受け入れ条件」を設定する。Kiroは、この仕様書から、セキュリティを考慮した処方箋のデータモデル、外部と連携するためのAPIエンドポイント、そしてユーザーが操作するフロントエンドの入力フォームといった、複数の要素を一度に生成する。これは、まるでシステム全体の青写真を渡すと、Kiroがその設計に基づいて必要な部品を自動で組み立ててくれるようなイメージである。
特に印象的だったのは、複数のクリニックが同じシステムを利用しながらも、それぞれのデータが混ざり合わないようにする「マルチテナント認証システム」の生成である。このシステムには、ユーザーの役割(医師、看護師など)に応じてアクセス権限を制御する「ロールベースアクセス」、安全な情報伝達のための「JWT(JSON Web Token)」、そして各クリニックのデータを完全に隔離する「テナント分離」といった複雑な仕組みが含まれる。これらのセキュリティ関連の機能を、Kiroが自動で生成してくれたおかげで、開発者は手動での修正やデバッグにかかる時間を大幅に削減できた。セキュリティ機能はシステムの根幹であり、その開発には通常多くの時間と専門知識が必要となるため、この自動生成は非常に大きなメリットであった。
さらに、Kiroが提供する「フック」という仕組みは、開発の効率と品質を大きく向上させた。フックは、特定の変更が発生した際に、自動的に別の処理を実行する機能である。例えば、APIの定義やデータベースのモデルが変更されたときに、関連するドキュメントも自動的に更新されるように設定できる。これにより、システムの実装とドキュメントの内容が常に一致し、情報が古くなる心配がなくなる。また、プロジェクトのタスクと実際のコードの実装状況が同期されるため、進捗管理も容易になる。仕様書が直接コード変更に紐付けられることで、開発者は常に「何が、なぜ、どのように変更されたか」を明確に把握でき、プロジェクト全体の一貫性が保たれる。
このように「仕様書からコード生成へ」というワークフローを確立することで、開発プロセス全体に複数の良い影響がもたらされた。一つ目は「トレーサビリティ」の向上である。これは、システムの「要件」(何を作るか)から「設計」(どう作るか)、そして「実装」(実際に作ったもの)まで、各段階がどのように関連しているかを明確に追跡できることを意味する。これにより、将来的に変更が必要になった際も、その変更がシステム全体にどのような影響を与えるかを正確に判断できる。二つ目は「一貫性」の確保である。フロントエンド、バックエンド、そしてドキュメントといったシステムの異なる要素間で不整合が生じるリスクが大幅に低減される。これにより、品質の高いシステムを安定して提供できるようになる。三つ目は「開発速度」の向上である。品質に自信を持ちながら、より迅速に機能開発を進めることが可能となる。
最終的に、Kiroを活用して開発されたCliniPracは、患者管理、予約スケジュール、請求処理、レポート作成、そしてデジタル処方箋といった、医療業務に必要な様々な機能を備えた「本番環境対応」のシステムとして完成した。このプロジェクトは、単なるコードの自動生成にとどまらず、まるで経験豊富なエンジニアリングパートナーと協力してシステムを構築しているかのような感覚だった。Kiroは、複雑なシステム開発において、設計段階からの厳密な管理と自動化を通じて、開発者に品質と速度の両方をもたらす優れたツールであると言える。