【ITニュース解説】No More Self-Building Required! CoreDNS v1.12.2 Now Includes Standard Multicluster Support
2025年09月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「No More Self-Building Required! CoreDNS v1.12.2 Now Includes Standard Multicluster Support」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
CoreDNS v1.12.2で、複数のKubernetesクラスターを連携させるマルチクラスター機能が標準搭載された。従来必要だったプラグインの追加や再ビルドが不要となり、簡単な設定変更だけで利用可能に。導入が大幅に容易になった。
ITニュース解説
現代のITシステム開発において、コンテナ技術は不可欠な存在となっている。コンテナは、アプリケーションを実行するために必要なプログラムやライブラリ、設定ファイルなどを一つにまとめたパッケージであり、どんな環境でも同じように動かすことができる。そして、このコンテナを大量に、かつ効率的に管理するためのツールがKubernetesである。Kubernetesは、多数のサーバーを一つの大きなリソースとして扱い、コンテナの配置や自動復旧、負荷分散などを自動で行う。このKubernetesが管理するサーバー群の集まりを「クラスタ」と呼ぶ。クラスタ内では、コンテナ同士が通信するために、互いの場所、つまりIPアドレスを知る必要がある。しかし、コンテナは頻繁に作成されたり削除されたりするため、IPアドレスは常に変動する。そこで重要な役割を果たすのがDNS(Domain Name System)である。DNSは、人間が覚えやすい名前(ドメイン名)を、コンピュータが理解できるIPアドレスに変換する仕組みだ。Kubernetesクラスタ内では、CoreDNSというソフトウェアがこのDNSサーバーとして機能し、「my-app」のようなサービス名を対応するIPアドレスに変換することで、コンテナ間の安定した通信を支えている。
システムの規模が拡大し、より高い信頼性やパフォーマンスが求められるようになると、一つのKubernetesクラスタだけでは不十分になるケースが出てくる。例えば、災害対策のために地理的に離れた場所にシステムを分散させたり、世界中のユーザーに対して応答速度を向上させるために各地域にサーバーを配置したりする場合だ。このように、複数のKubernetesクラスタを連携させて一つの大きなシステムとして運用する構成を「マルチクラスター」と呼ぶ。しかし、マルチクラスター環境には特有の課題が存在する。その一つが、異なるクラスタにあるサービスをどのようにして見つけ、通信するかという問題である。クラスタAにあるアプリケーションが、クラスタBにあるデータベースにアクセスしたい場合、クラスタAはクラスタBのデータベースのIPアドレスを知る必要がある。これを解決するのが、クラスタを横断した名前解決の仕組みだ。
これまで、Kubernetesのマルチクラスター環境で名前解決を実現するには、標準のCoreDNSに特別な機能を追加する必要があった。具体的には、「multiclusterプラグイン」という拡張機能をCoreDNSのソースコードに組み込み、ソフトウェア自体を自分でコンパイルし直す、いわゆる「セルフビルド」という作業が求められた。このセルフビルドは、開発環境の準備やコンパイル手順の理解など、専門的な知識と手間を要するため、特に初心者にとっては導入の大きな障壁となっていた。マルチクラスターという先進的な構成を試したいと考えても、その最初のステップでつまずいてしまう可能性があったのだ。
この状況を大きく改善するアップデートが、CoreDNSのバージョン1.12.2で実施された。今回の変更の核心は、これまでセルフビルドで追加する必要があったマルチクラスター機能が、Kubernetesと連携するための標準機能である「kubernetesプラグイン」に統合されたことだ。これにより、開発者やインフラ担当者は、もはやCoreDNSを自分でビルドする必要がなくなった。公式に配布されているバージョン1.12.2以降のCoreDNSイメージをそのまま利用し、いくつかの簡単な設定を追加するだけで、マルチクラスター間の名前解決機能が有効になる。具体的には、CoreDNSの設定ファイルである「Corefile」を編集し、マルチクラスターで使われる特別なドメイン名「clusterset.local」の解決を有効にすること、そして、CoreDNSが他のクラスタのサービス情報を参照するために必要な権限(RBAC)を設定することの二つだけで済む。この変更は、マルチクラスター環境の構築と運用のハードルを劇的に下げ、より多くの人がその恩恵を受けられるようにする画期的な進歩と言える。
この仕組みを少し詳しく見てみよう。マルチクラスター環境では、あるクラスタのサービスを他のクラスタに公開するために、「ServiceImport」という特別なKubernetesリソースが使われる。例えば、クラスタBのデータベースサービスを公開すると、その情報がServiceImportとして作成される。CoreDNSは、新たに追加された権限によってこのServiceImportリソースを監視できるようになり、どのサービスがどのクラスタで利用可能かを把握する。そして、クラスタAのアプリケーションが「database.namespace.svc.clusterset.local」のような特別なドメイン名で問い合わせを行うと、CoreDNSはServiceImportの情報を元に、クラスタBのデータベースサービスの正しいIPアドレスを返す。このように、「ServiceImport」と「clusterset.local」という標準化された仕組みを通じて、クラスタ間のシームレスな名前解決が実現されるのだ。
結論として、CoreDNS v1.12.2におけるマルチクラスターサポートの標準統合は、Kubernetesを利用したシステム構築の複雑さを一つ取り除く、非常に価値のある改善である。これまで専門的なビルド作業を必要とした高度な機能が、簡単な設定だけで利用可能になったことで、システムの可用性や拡張性を高めるマルチクラスター構成がより身近な技術となった。システムエンジニアを目指す初心者にとっても、クラウドネイティブ技術の最前線であるマルチクラスターの世界に触れる機会が増え、より実践的なスキルを習得する上で大きな助けとなるだろう。このアップデートは、複雑なインフラ管理を簡素化し、開発者が本来注力すべきアプリケーションの価値向上に集中できる環境を促進する、Kubernetesエコシステム全体の着実な進化を示す一例である。