Kubernetes(クバネティス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
Kubernetes(クバネティス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
クーバネティス (クーバネティス)
英語表記
Kubernetes (クーバーネティス)
用語解説
Kubernetesは、コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理を自動化するためのオープンソースプラットフォームである。一般的に「コンテナオーケストレーションツール」と呼ばれ、ギリシャ語で「航海長」や「操縦士」を意味する言葉に由来する。この役割を理解するためには、まず前提となるコンテナ技術について知る必要がある。コンテナは、アプリケーションをその実行に必要なライブラリや設定ファイルなどと共に一つのパッケージにまとめる技術であり、Dockerがその代表例として知られている。コンテナを利用することで、開発環境で動作したアプリケーションが、テスト環境や本番環境でも同様に動作することを保証し、環境差異に起因する問題を大幅に削減できる。しかし、アプリケーションの規模が拡大し、マイクロサービスアーキテクチャのように多数のコンテナを協調させて動作させる必要が出てくると、それらを手動で管理することは非常に困難になる。例えば、あるコンテナに障害が発生した場合の検知と再起動、アクセス数の増減に応じたコンテナ数の調整、バージョンアップ時の安全な入れ替え、コンテナ間の複雑な通信設定など、考慮すべき運用タスクは多岐にわたる。Kubernetesは、これらの複雑なコンテナ群の管理作業を自動化し、大規模なシステムを効率的かつ安定して運用するために開発された。
Kubernetesの核となる思想は、システムの「あるべき姿(Desired State)」を宣言的に定義し、現在の状態がそのあるべき姿と一致するように、システムが自律的に調整し続けることにある。これを実現するための主要な機能がいくつか存在する。第一に、デプロイメントの自動化が挙げられる。新しいバージョンのアプリケーションをリリースする際、古いバージョンのコンテナを一度にすべて停止させるのではなく、新しいコンテナを段階的に起動しながら古いものを停止させていく「ローリングアップデート」を自動で行うことができる。これにより、利用者にサービス停止を意識させることなく、安全にアップデートを適用できる。第二に、スケーリング機能が重要である。ウェブサイトへのアクセスが急増した際に、CPU使用率などのメトリクスを監視し、自動的にコンテナの数を増やして負荷を分散させることが可能だ。逆にアクセスが減少すればコンテナの数を減らし、リソースを無駄なく利用する。これはオートスケーリングと呼ばれ、コスト効率とサービスの安定性を両立させる上で不可欠な機能である。第三に、自己修復(セルフヒーリング)機能もKubernetesの大きな特徴だ。コンテナが応答しなくなったり、コンテナが動作しているサーバー自体に障害が発生したりした場合、Kubernetesはそれを自動的に検知する。そして、問題のあるコンテナを終了させて新しいコンテナを起動したり、正常な別のサーバー上にコンテナを再スケジュールしたりすることで、システム全体の可用性を維持する。この他にも、サービスディスカバリとロードバランシング機能も提供する。多数のコンテナが連携して動作するシステムにおいて、各コンテナが互いをネットワーク上で発見し、通信できる仕組みや、外部からのリクエストを複数のコンテナに均等に分散させるロードバランシングの機能を提供する。
これらの高度な機能を実現するため、Kubernetesはいくつかの基本的な構成要素(リソース)を定義している。Kubernetesが管理するサーバー群全体は「クラスタ」と呼ばれる。クラスタは、実際にコンテナを動作させる「ワーカーノード」と、クラスタ全体を管理・制御する「マスターノード(コントロールプレーン)」から構成される。アプリケーションのコンテナは、直接ノード上で管理されるのではなく、「Pod(ポッド)」というKubernetesにおけるデプロイの最小単位で管理される。Podは、1つ以上の密接に関連するコンテナのグループであり、ストレージやネットワークリソースを共有する。そして、このPodをいくつ起動しておくか、またどのように更新するかといった「あるべき姿」を定義するのが「Deployment(デプロイメント)」である。Deploymentは、例えば「このアプリケーションのPodを常に3つ起動しておく」といった状態を定義し、Podの数が不足すれば自動で新しいPodを起動して、定義された状態を維持し続ける。また、複数のPodに対して単一の安定したアクセスポイントを提供するために「Service(サービス)」というリソースが利用される。Podは起動・停止のたびにIPアドレスが変わる可能性があるが、Serviceは固定のIPアドレスやDNS名を持ち、背後にあるPod群へのリクエストを適切に振り分ける役割を担う。Kubernetesは、その堅牢性、拡張性、そして活発なコミュニティの存在から、コンテナオーケストレーションの分野で事実上の標準技術となっている。クラウドネイティブなアプリケーション開発において、その重要性はますます高まっており、システムエンジニアが習得すべき中核的な技術の一つである。