【ITニュース解説】Cross-platform gRPC Test tool
2025年09月11日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Cross-platform gRPC Test tool」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
クロスプラットフォームのgRPCテストツールを開発。UIはC#とAvaloniaUIでWindows/macOS/Linuxの単一コードベースを実現。バックエンドはF#を使用し、そのコードの簡潔さや保守性を評価している。F#とC#の連携も改善され、Vertical Slice Architectureのデスクトップアプリへの適用も試行中だ。
ITニュース解説
この解説は、クロスプラットフォームなgRPCテストツールを開発する過程で得られた知見をまとめたものである。システムエンジニアを目指す初心者にも理解しやすいように、記事の内容を掘り下げて説明する。
まず、このツールの核となる「gRPC」とは何かを理解しよう。gRPCは、Googleが開発した高性能なリモートプロシージャコール(RPC)フレームワークである。RPCとは、ネットワーク越しに別のコンピューター上のプログラム(サーバー)にある関数やメソッドを、まるで自分のコンピューター上にあるかのように呼び出して実行する仕組みのことだ。これにより、異なるシステム間で効率的にデータをやり取りできる。特に、大量のデータを高速に、効率良く送受信するのに優れている。このツールは、そのgRPCを利用したシステムが正しく動作するかを確認するための「テストツール」であり、さらに「クロスプラットフォーム」である点が重要だ。クロスプラットフォームとは、Windows、macOS、Linuxといった異なるオペレーティングシステム(OS)上で同じアプリケーションが動作することを意味する。一つのコードベースで複数のOSに対応できるため、開発の手間と時間を大幅に削減できる大きなメリットがある。
ユーザーインターフェース(UI)の開発には、「C#」というプログラミング言語と、「AvaloniaUI」というUIフレームワークが採用されている。C#は、マイクロソフトが開発した広く使われているオブジェクト指向プログラミング言語で、Windowsアプリケーション開発で特に強力な存在だ。AvaloniaUIは、.NETという開発基盤の上で動作し、C#で書かれたコードでWindows、macOS、Linuxといった複数のOSに対応できるUIを作成できるフレームワークである。記事の筆者は、AvaloniaUIを「WPF++」と表現している。WPF(Windows Presentation Foundation)は、Windows向けのUI開発で使われる高機能なフレームワークであり、AvaloniaUIはWPFの優れた点を引き継ぎつつ、クロスプラットフォーム対応を強化したもの、という意味合いだ。これにより、筆者はたった一つのコードベースで、様々なOS向けのデスクトップアプリケーションを開発できるようになった。これは開発時間の節約に大きく貢献する。
開発の効率化には、統合開発環境(IDE)である「JetBrains Rider」が活躍している。Riderは、C#やAvaloniaUIの開発において非常に強力なサポートを提供しており、特に「CompiledBindings」という機能が活用されている。CompiledBindingsは、UI(画面表示)とViewModel(画面のロジック)の間でデータがどのように連携するかを、コンパイル時に効率的に処理する仕組みだ。これにより、開発者はUIとロジック間のナビゲーションをスムーズに行える。例えば、Riderの「F12(Go to Definition)」機能を使えば、UIの要素がどのViewModelクラスやプロパティと結びついているかを瞬時に確認し、その定義元へジャンプできるため、コードの理解や修正が容易になる。また、UIの変更をリアルタイムで確認できる「Live Preview editor」や「Hot-reload」といった機能も存在するが、筆者はXAML(UIを記述するためのマークアップ言語)を直接記述することを好んでおり、Hot-reloadの方がより役立つだろうと考えている。
一方、アプリケーションの「バックエンドロジック」、つまり実際に処理を行う部分は「F#」という別のプログラミング言語で書かれている。F#もC#と同じくマイクロソフトが開発した.NET上で動作する言語だが、C#がオブジェクト指向を主とするのに対し、F#は「関数型プログラミング」という異なるパラダイムを強く推し進める言語である。関数型プログラミングでは、プログラムを独立した小さな関数の組み合わせとして構築することが特徴だ。筆者はF#のコードを「クリーンに見える」と評している。C#のコードには、波括弧({})が多く、視覚的に情報量が多くなりがちだが、F#はインデント(字下げ)によってコードの構造を示すため、より簡潔で読みやすいコードになりやすい。F#は、開発者が「小さく、集中した関数」を書くことを自然と促すため、コードのロジックが頭の中で把握しやすく、数ヶ月前に書いたコードでもすぐに理解し直せるという利点がある。
ただし、F#とC#を組み合わせて使う際には、いくつかの課題もあった。一つは「命名規則」の違いである。C#では変数名やメソッド名を単語の先頭を大文字にする「PascalCase」が使われることが多いが、F#では単語の先頭を小文字にする「camelCase」が一般的だ。これらが混在すると、最初は混乱を招くことがあった。もう一つは「非同期処理」の扱いの違いだ。非同期処理とは、時間のかかる処理(ネットワーク通信やファイルI/Oなど)をプログラムの実行を止めずにバックグラウンドで行う仕組みのことである。以前のF#ではasync { }という構文を使っていたが、C#ではTaskという異なるモデルを使用していたため、両者間でデータをやり取りする際に変換が必要で、わずかながら性能の低下も発生していた。しかし、最近のF#はtask { }という構文をサポートするようになり、C#のTaskとの連携が非常にスムーズになり、この摩擦は解消された。
アプリケーションの設計においては、「Vertical Slice Architecture(垂直スライスアーキテクチャ)」と「MVVM(Model-View-ViewModel)」の組み合わせが試みられた。Vertical Slice Architectureは、「機能フォルダ」とも呼ばれる概念で、特定の機能に関連するすべての要素(UI、ビジネスロジック、データアクセスなど)を一つのまとまりとして扱う設計手法である。これにより、コードが機能ごとに整理され、どこに何があるか分かりやすくなるため、ナビゲーションや理解が容易になる。筆者はREST API開発でこの手法の成功を経験しており、デスクトップアプリケーションでも同様の効果を期待して適用を試みた。MVVMは、UIアプリケーションで広く使われる設計パターンで、UI(View)、ビジネスロジック(Model)、そしてそれらをつなぐViewModelという三つの役割にコードを分離することで、UIとロジックの依存関係を減らし、テストしやすく、保守しやすいコードにする狙いがある。しかし、筆者はデスクトップアプリでのVertical Slice Architectureの適用について、まだ試行錯誤の段階であり、うまくできたか確信が持てないと感じている。
開発環境についても具体的な言及がある。筆者は高性能な「M4 Mac mini(ベースモデル、32GBユニファイドメモリ)」を使用しており、この小さなマシンが非常にパワフルで、ビルドが高速であり、多くのアプリケーションを同時に開いてもファンが作動しないほど静かに動作すると評価している。日々の開発では、前述の「JetBrains Rider」の複数インスタンスに加え、「JetBrains AI」を「LM Studio」で動作する大規模言語モデル(LLM)の「Qwen3 30B」に接続して活用している。これは、ローカル環境でAIアシスタントを動かし、コードの生成や質問応答に役立てていることを示している。また、「VMWare Fusion Pro」という仮想化ソフトウェア上で「Windows 11」を動かしたり、ローカルLLMで対応できない質問には「Claude Desktop」という別のAIツールを使ったり、Webブラウザとして「Firefox」を利用したりと、多様なツールを組み合わせて効率的に開発を進めている様子が伺える。
この記事は、現代のソフトウェア開発者がどのような技術を選び、どのような課題に直面し、どのように工夫して解決していくか、その一端を具体的に示している。プログラミング言語の選択、UIフレームワークの選定、アーキテクチャの検討、そして最新のAIツールを含む開発環境の構築まで、システム開発における多岐にわたる側面が詰まった内容だ。特に、異なるプログラミング言語の特性や統合における工夫、アーキテクチャ設計の難しさなどは、これからシステムエンジニアを目指す人にとって、実践的な学びとなるだろう。