gRPC(ジーアールピーシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

gRPCは、Googleが開発した高性能なオープンソースのRPC（Remote Procedure Call）フレームワークだ。異なる環境で動作するアプリケーション間での効率的な通信を可能にする。特にマイクロサービスアーキテクチャにおいて、その能力を発揮する。

gRPCの概要は、まずRPCという概念を理解する必要がある。RPCとは、あるコンピュータ上のプログラムが、ネットワークを通じて別のコンピュータ上のプログラムを、まるでローカル関数を呼び出すかのように実行できる技術のことだ。gRPCはこのRPCを実現するための具体的な手段を提供する。

gRPCは、プロトコルバッファ（Protocol Buffers）というIDL（Interface Definition Language）を使用する。プロトコルバッファは、構造化されたデータをシリアライズするための効率的なメカニズムだ。データ構造を定義し、その定義に基づいてデータをバイナリ形式に変換することで、コンパクトかつ高速なデータ交換を可能にする。gRPCでは、サービスインターフェースとメッセージの構造をプロトコルバッファで定義する。

gRPCの通信プロトコルは、HTTP/2をベースとしている。HTTP/2は、HTTP/1.1に比べて多重化、ヘッダー圧縮、ストリームの優先度付けなどの機能が強化されており、より効率的な通信を可能にする。gRPCはこれらのHTTP/2の機能を活用することで、高いパフォーマンスを実現している。

gRPCの具体的な動作フローは以下のようになる。まず、クライアントはプロトコルバッファで定義されたサービスインターフェースに基づいて、サーバーのメソッドを呼び出す。クライアントは呼び出すメソッド名とパラメータを、プロトコルバッファでシリアライズされたバイナリデータとしてサーバーに送信する。サーバーは受け取ったデータをデシリアライズし、対応するメソッドを実行する。メソッドの実行結果は、再びプロトコルバッファでシリアライズされ、クライアントに返送される。クライアントは受け取ったデータをデシリアライズし、結果を取得する。

gRPCは、Unary RPC、Server Streaming RPC、Client Streaming RPC、Bidirectional Streaming RPCという4種類の呼び出し方法をサポートしている。Unary RPCは、クライアントが1つのリクエストを送信し、サーバーが1つのレスポンスを返す最も基本的な形式だ。Server Streaming RPCは、クライアントが1つのリクエストを送信し、サーバーが複数のレスポンスをストリームとして返す。Client Streaming RPCは、クライアントが複数のリクエストをストリームとして送信し、サーバーが1つのレスポンスを返す。Bidirectional Streaming RPCは、クライアントとサーバーが双方向に複数のリクエストとレスポンスをストリームとして交換する。

gRPCは、多くのプログラミング言語をサポートしている。例えば、Java、C++、Python、Go、Ruby、C#などだ。これにより、異なる言語で開発されたアプリケーション間でも、gRPCを使ってシームレスに連携できる。また、gRPCは、認証、認可、ロギング、モニタリングなどの機能も提供しており、セキュアで信頼性の高いシステムを構築できる。

gRPCはマイクロサービスアーキテクチャにおいて特に有用だ。マイクロサービスは、独立してデプロイ可能な小さなサービスとしてアプリケーションを構築するアーキテクチャだ。これらのサービスは、ネットワークを通じて互いに通信する必要がある。gRPCは、マイクロサービス間の通信を効率化し、パフォーマンスを向上させるための強力なツールとなる。異なるチームが異なる言語でマイクロサービスを開発している場合でも、gRPCを使用することで、統一された通信基盤を構築できる。

gRPCの利点は、高いパフォーマンス、効率的なデータシリアライズ、多言語サポート、ストリーミングサポート、標準化されたインターフェースなどがある。これらの利点により、gRPCは、大規模な分散システムやリアルタイムアプリケーションの開発に適している。一方で、プロトコルバッファの学習コストや、HTTP/2に依存している点が短所として挙げられる。しかし、これらの短所を考慮しても、gRPCは、現代的なアプリケーション開発において重要な役割を担う技術と言えるだろう。システムエンジニアを目指すなら、gRPCの基本的な概念と使い方を理解しておくことは非常に重要だ。