【ITニュース解説】「MCPはAPIではない」――Dockerが解説するAIエージェント開発のベストプラクティスとは
2025年09月12日に「@IT」が公開したITニュース「「MCPはAPIではない」――Dockerが解説するAIエージェント開発のベストプラクティスとは」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
DockerがAIエージェント開発におけるMCPの正しい使い方を解説した。MCPはAPIではないという誤解を解消し、開発者が陥りがちな3つの間違いや、適切な実装パターン、避けるべきアンチパターンを示し、ベストプラクティスを共有した。
ITニュース解説
Dockerが提唱する「MCP(Multimodal Containerized Pipelines)」は、AIエージェントを開発する上で重要な設計パターンである。しかし、多くの開発者がMCPの概念を誤解し、特にAPIと混同してしまうケースが多い。MCPは、複数のAIモデルやツール、データ処理モジュールを連携させ、複雑なタスクを自動実行するAIエージェントの内部構造を構築するためのフレームワークやアプローチを指す。これは、単一の機能を提供するAPIとは根本的に異なる概念である。
AIエージェントは、人間が様々な情報源からデータを取り込み、複数の思考プロセスを経て判断を下し、行動を起こすように、多様な機能を組み合わせて一つの知的な振る舞いを実現する必要がある。例えば、ユーザーからの質問を理解する自然言語処理モデル、画像を解析する画像認識モデル、データベースから情報を検索するツールなど、多様な機能を連携させる。MCPは、これら個々の機能を独立した「コンポーネント」として扱い、それぞれをDockerコンテナとして分離することで、開発、テスト、デプロイ、管理を容易にする。
開発者がMCPについて誤解しがちな最初のポイントは、「MCPはAPIではない」ということである。API(Application Programming Interface)は、アプリケーションやサービスが外部のプログラムと通信するための窓口であり、特定の機能へのリクエストを受け取り、その結果を返すインターフェースを提供する。例えば、天気情報を取得するAPIは、日付や場所をリクエストとして受け取り、その時点の天気予報を返す。これに対し、MCPは外部からの直接的なリクエストに応答するものではなく、AIエージェント内部で複数のコンポーネントが連携し、データが流れ、タスクが自動的に実行される「パイプライン」を構築する役割を持つ。MCPのコンポーネントは、APIを介して外部サービスとやり取りすることはあるが、MCP自体がAPIとして機能するわけではない。
また、MCPは「サービスメッシュ」とも異なる。サービスメッシュは、マイクロサービスアーキテクチャにおいてサービス間の通信を管理し、ルーティング、負荷分散、認証、監視などの機能を提供するインフラ層の技術である。MCPは、サービス間の通信の管理よりも、AIエージェント内の特定のタスク実行のためのデータフローとコンポーネントの連携順序をオーケストレーションすることに焦点を当てている。サービスメッシュが交通整理をする道路網だとすれば、MCPはその道路網を使って特定の目的を達成するための物流システムのようなものである。
さらに、MCPは「コンテナオーケストレーター」とも異なる。Kubernetesのようなコンテナオーケストレーターは、コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理を自動化するツールである。これはインフラレベルでのコンテナ管理を行うが、MCPはAIエージェントというアプリケーション固有のロジック、すなわち複数のAIモデルやツールの実行順序やデータ変換、結果の統合といった、より高レベルのタスクオーケストレーションを担当する。オーケストレーターが劇場の舞台装置を管理する人だとすれば、MCPは舞台上で役者たちがどのように連携して物語を進めるかを指揮する監督に近い。
では、MCPを正しく実装するためのベストプラクティスとは何か。まず最も重要なのは、AIエージェントの各機能を「独立したコンポーネント」として設計し、それぞれをDockerコンテナとしてカプセル化することである。例えば、テキスト処理、画像解析、データベース検索といった各タスクを別々のコンテナとして動作させる。これにより、特定のコンポーネントに問題が発生しても全体への影響を最小限に抑え、個別にスケールアップや更新が可能になる。
次に、これらの独立したコンポーネント間の連携には、「メッセージキュー」や「イベントバス」といった非同期通信の仕組みを用いるべきである。あるコンポーネントが処理を終えたら、その結果をメッセージとして発行し、次の処理を担当するコンポーネントがそのメッセージを購読して処理を開始するという流れを取る。これにより、コンポーネント間の結合度が低くなり、システムの柔軟性と拡張性が向上する。
さらに、各コンポーネントには「単一責任の原則」を適用し、一つのコンポーネントが担う機能を一つに絞る。複雑な処理は複数の小さなコンポーネントに分割し、それぞれが特定のタスクに集中するよう設計する。また、コンポーネントの状態(処理中のデータや設定など)は、そのコンポーネント内部に持たせるのではなく、永続ストレージや専用の状態管理サービスに保存するべきである。これにより、コンポーネントが停止しても状態が失われず、信頼性が高まる。認証や認可、秘密情報管理といったセキュリティ機能も、MCPのコンポーネント内で直接処理するのではなく、既存のIDプロバイダーやシークレット管理サービスに委譲することが推奨される。
逆に、避けるべきアンチパターンとしては、MCPを単一の巨大なAPIエンドポイントとして実装してしまうことが挙げられる。これは、AIエージェントの全てのロジックを一つのサービスに詰め込み、外部からのリクエストで複雑な内部処理を直接トリガーしようとするアプローチである。このような設計では、一部の機能変更がシステム全体に影響を与え、保守が困難になる。また、コンポーネント間の依存関係が密結合になり、柔軟性やスケーラビリティが失われる。さらに、状態をコンポーネント内部に保持してしまうと、コンポーネントの再起動やスケーリング時にデータが失われるリスクがある。
まとめると、MCPは、多様なAIモデルやツールを組み合わせ、複雑なタスクを自動実行するAIエージェントを構築するための、Dockerコンテナベースの設計パターンである。それはAPIではなく、AIエージェントの内部でデータが流れ、処理が進む「パイプライン」を定義する。各機能を独立したコンテナとして扱い、非同期通信で連携させ、単一責任の原則に従い、状態管理を外部化することで、柔軟でスケーラブル、かつ保守性の高いAIエージェントを開発できる。この理解が、次世代のAIアプリケーション開発において成功を収めるための鍵となるだろう。