【ITニュース解説】Engineering matters: How QA is evolving into QE

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Engineering matters: How QA is evolving into QE」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

ソフトウェア開発では、最後に品質をチェックするQAから、開発プロセス全体に品質を組み込むQEへの移行が進んでいる。QEは、テスト自動化などを活用し、開発者を含むチーム全員で品質に責任を持つ考え方だ。これにより、手戻りを減らし、より速く高品質な製品開発を目指す。(119文字)

ITニュース解説

ソフトウェア開発の世界で、製品の品質をいかにして保証するかという問題は常に重要なテーマである。従来、この役割は「QA(Quality Assurance:品質保証)」と呼ばれる専門チームが担ってきた。開発チームがソフトウェアを作り終えた後、QAチームがバグや不具合がないかをテストし、リリースの可否を判断するという流れが一般的だった。しかし、この方法にはいくつかの課題が存在した。開発の最終段階でテストを行うため、もし深刻な問題が見つかると、修正のために大幅な手戻りが発生し、リリースが遅延する原因となった。また、リリース後に問題が発生した場合、その責任がQAチームに集中しがちで、大きなプレッシャーがかかるという側面もあった。

このような背景から、近年では「QA」から「QE(Quality Engineering:品質工学)」へと、品質に対する考え方が大きく進化している。QEは、品質を開発の最終工程で「検査」するのではなく、開発プロセス全体のあらゆる段階に「組み込む」というアプローチである。QAがプロセスや体制の保証に重きを置くのに対し、QEはテストの自動化やCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)といったエンジニアリングの技術を駆使して、品質そのものを製品に「作り込む」ことを目指す。この考え方の最も重要な点は、品質に対する責任がQAチームだけでなく、開発者や企画担当者など、プロジェクトに関わる全員で共有されることにある。

QEを実践する上で中心となる考え方がいくつか存在する。その一つが「シフトレフト」だ。これは、開発プロセスを時間軸で左から右へ流れるものと見立てたとき、品質保証の活動をできるだけ早い段階、つまり「左側」へ移行させることを意味する。具体的には、設計段階からテストのしやすさを考慮したり、開発者がコードを書きながら同時にユニットテストを作成したりすることだ。問題を開発の初期段階で発見できれば、修正にかかるコストや時間を大幅に削減できる。

その対極にあるのが「シフトライト」という考え方だ。これは、ソフトウェアがリリースされ、ユーザーが実際に使用する本番環境、つまりプロセスの「右側」においても品質を検証し続けるアプローチを指す。例えば、一部のユーザーにだけ新機能を先行公開する「カナリアリリース」を行い、問題がないかを確認しながら段階的に全ユーザーへ展開したり、システムの稼働状況を常に監視して異常を早期に検知したりする。これにより、実際の利用環境でしか見つからないような問題を素早く特定し、対応することが可能になる。

QEを実現するためには、テストの自動化が不可欠である。コードが変更されるたびに、関連するテストが自動的に実行される仕組みを構築することで、人為的なミスを防ぎ、品質を継続的に担保できる。また、機能が正しく動くかという「機能テスト」だけでなく、性能(パフォーマンス)、安全性(セキュリティ)、信頼性といった「非機能要件」に関する品質も、開発の初期段階から考慮し、テストと監視の対象とすることが求められる。

ただし、従来のQAからQEへと移行するのは容易ではない。まず、チームメンバーの意識改革が必要だ。開発者はただ機能を作るだけでなく、自らが書いたコードの品質にも責任を持つというマインドセットが求められる。そのためには、企業が機能の実装数だけでなく、品質への貢献も評価するような文化を醸成することが重要だ。また、経営層のサポートも欠かせない。開発者が品質向上に取り組むための時間や、適切なテスト環境、CI/CDパイプラインといったツールの導入など、必要な投資を惜しまない姿勢が成功の鍵を握る。さらに、過去に作られた古いシステムは、テストを前提として設計されていないことが多く、QEを適用できるように改善するには地道な努力と時間が必要になる場合もある。

結局のところ、QEとは単なるツールや手法の導入ではなく、品質を開発の最終関門として捉えるのではなく、開発のあらゆる場面に存在する当然のものとして捉える文化への変革である。品質は誰か一人が担当するものではなく、チーム全員で作り上げていくものだという共通認識を持つことが、QEの第一歩となる。このアプローチによって、手戻りが少なくなり、開発の予測可能性が高まり、結果としてより高品質なソフトウェアをより速くユーザーに届けられるようになる。システムエンジニアを目指す上で、この品質に対する当事者意識と、それを実現するためのエンジニアリング技術は、今後ますます重要なスキルとなるだろう。