【ITニュース解説】How many SPARCs is too many SPARCs?
2025年09月06日に「Hacker News」が公開したITニュース「How many SPARCs is too many SPARCs?」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
古いSPARCワークステーションを複数台入手し、現代のネットワーク環境で再び動かす挑戦の記録。古いOSのインストールや設定など、多くの技術的課題を乗り越え、レトロなUNIXマシンを復活させる過程を紹介している。
ITニュース解説
コンピュータのCPUには、IntelやAMDの製品で広く使われているx86アーキテクチャの他にも、様々な種類の設計思想(アーキテクチャ)が存在する。その一つが、かつてSun Microsystems社が開発した「SPARC」アーキテクチャである。SPARCは、主に高性能なワークステーションやサーバーで採用され、1990年代から2000年代にかけて、科学技術計算や企業の基幹システムといった分野で重要な役割を担っていた。この記事は、SPARCアーキテクチャを採用した「SPARCstation Voyager」というラップトップ型の古いコンピュータを入手したあるエンジニアが、その再生に挑む過程を記録したものである。システムエンジニアを目指す上で重要となる、ハードウェアのトラブルシューティング、つまり問題の原因を特定し解決していく思考プロセスを、この事例から学ぶことができる。
このエンジニアが入手したVoyagerは、製造から年月が経過していることもあり、複数の問題を抱えていた。電源は入るものの、正常に使える状態ではなかった。具体的には、第一に内蔵の液晶ディスプレイに何も表示されない。バックライトは点灯しているため、完全に故障しているわけではなさそうだが、映像信号が届いていないようだった。幸いにも、外部のVGAモニターを接続すると画面が表示されたため、コンピュータの心臓部であるマザーボードのグラフィックス機能自体は動作していることが確認できた。第二に、内蔵のハードディスクドライブが故障しており、オペレーティングシステムを起動することができない。カチカチという異音を発しており、物理的に破損している可能性が高い状態だった。第三に、内蔵キーボードが全く反応しない。これも外部のSun専用キーボードを接続すれば入力は可能だったが、ラップトップとして使うには内蔵キーボードの修理が不可欠である。
これらの複雑な問題を解決するため、エンジニアは一つずつ原因を切り分け、対策を検討していく。まず、液晶ディスプレイの問題については、外部モニターには出力できるという事実から、問題の範囲を絞り込む。考えられる原因は、液晶パネル自体の故障、パネルに電力を供給するインバーter基板の不具合、あるいはマザーボードと液晶パネルを繋ぐケーブルの接触不良や断線である。マザーボード上のグラフィックスコントローラーが原因である可能性は低いと判断できる。このように、正常に動作する部分としない部分を比較し、問題箇所を特定していくのがトラブルシューティングの基本である。
次に、故障したハードディスクの問題に取り組む。この時代のワークステーションで使われていたのは「SCSI」というインターフェース規格のドライブで、現在主流のSATA規格とは互換性がなく、新品の入手は非常に困難である。そこで、現代の技術を用いた代替策が選択された。それは「SCSI2SD」と呼ばれるアダプターの使用である。この装置は、SDカードをコンピュータ側にSCSIハードディスクとして認識させるもので、古いマシンを現代の安価で信頼性の高い記憶媒体で復活させるための強力なツールとなる。このSCSI2SDに、SPARCアーキテクチャで動作するオープンソースのオペレーティングシステム「NetBSD」をインストールし、システムを再構築する計画が立てられた。
最も厄介だったのが、内蔵キーボードの問題である。外部キーボードが使えることから、マザーボードの入力受付機能の大部分は正常だと考えられる。疑われたのは、キーボードからの信号を処理する専門のチップ、キーボードコントローラーの故障だ。しかし、このチップはマザーボードに直接ハンダ付けされているため、交換作業は非常に難易度が高い。そこで、さらに調査を進めた結果、より可能性の高い原因として、キーボードとマザーボードを接続している薄いフィルム状のケーブル、いわゆるリボンケーブルの内部的な断線が突き止められた。見た目では損傷が分かりにくいが、テスターなどで導通をチェックすることで断線箇所を特定できる。この修理には、電気が流れる特殊なインクを含んだ「導電性ペン」を使い、切れた回路を物理的に描き直すという手法が検討された。
この一連の作業は、単なる古いコンピュータの修理に留まらない。ハードウェアの構造を理解し、論理的な推論に基づいて問題の原因を切り分け、適切なツールや代替技術を駆使して解決策を導き出すという、システムエンジニアリングにおける重要な実践例を示している。古いハードウェアを扱うことは、現代のコンピュータ技術がどのような基盤の上に成り立っているのかを理解する良い機会にもなる。SPARCのような過去のアーキテクチャに触れることで、コンピュータの多様性と進化の歴史を体感し、技術者としての知見を深めることができるのである。