【ITニュース解説】Exposing Agents as MCP Servers with mcp-agent
2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Exposing Agents as MCP Servers with mcp-agent」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
AIが外部ツールと連携する規格MCPを使い、AIエージェントをサーバーとして公開する新手法が登場。エージェント同士の連携や、マイクロサービスとしての拡張性が向上する。この手法は`mcp-agent`ライブラリで実現できる。
ITニュース解説
近年、大規模言語モデル(LLM)と呼ばれる、人間のように文章を理解し生成できるAIの能力が飛躍的に向上した。この進化に伴い、AIを使ったアプリケーションの開発方法も大きく変わりつつある。特に注目されているのが「AIエージェント」という技術だ。AIエージェントとは、人間の指示を受けて自律的に計画を立て、様々なツールを使いこなしながら目標を達成するプログラムのことである。従来、こうしたエージェントは一つの大きなプログラムとして作られることが多かったが、現在ではより柔軟で組み合わせやすい、小さな部品を連携させるような設計へと移行している。この変化の中心にあるのが「MCP(Model Context Protocol)」という新しい技術標準である。
AIエージェントが複雑なタスクをこなすためには、外部のツールやデータと連携する必要がある。例えば、「今日の東京の天気を調べて、カレンダーに登録して」という指示を実行するには、天気予報サービスとカレンダーサービスという二つの外部ツールを使わなければならない。しかし、これまではAIがそれぞれのツールと対話するための方法が統一されておらず、開発者はツールごとに個別の接続プログラムを用意する必要があった。MCPは、この問題を解決するために作られた、AIとツールの間で使われる共通の通信規約である。MCPという統一されたルールがあることで、AIはどんなツールであっても同じ作法で対話できるようになり、開発者はより簡単に多様なツールをAIエージェントに組み込めるようになった。
MCPの登場により、AIエージェントの役割そのものにも大きな変化が生まれている。従来のエージェントは、システム全体から見ると「クライアント」、つまり司令塔のような立場だった。エージェントが中心にいて、様々なツール(サーバー)に対して「このデータをくれ」「この処理をしろ」と指示を出す構成が一般的だった。しかし、新しい考え方では、エージェント自体を一つの専門的な機能を持つ「サーバー」として設計し、外部から呼び出される存在として扱う。これは、エージェントを一つの独立したサービス部品、いわゆるマイクロサービスとして捉えるアプローチであり、多くの利点をもたらす。
エージェントをサーバーとして公開する最大のメリットは、システムの組み合わせ可能性が格段に向上することだ。例えば、「市場調査をしてレポートを作成するエージェント」と「そのレポートを要約してプレゼン資料を作成するエージェント」をそれぞれ個別のサーバーとして作ることができる。そして、司令塔となる別のエージェントが、まず市場調査エージェントを呼び出し、その結果を受け取ってからプレゼン資料作成エージェントを呼び出す、といった連携が可能になる。これは、専門家たちがチームを組んで一つの大きな仕事に取り組む様子に似ており、複雑で高度なタスクを分担して処理する「マルチエージェントシステム」の構築を容易にする。
また、プラットフォームに依存しないという利点もある。エージェントがサーバーとして常に稼働していれば、開発用のパソコンからだけでなく、スマートフォンアプリやWebサービスなど、MCPのルールに従って通信できるクライアントであれば、どこからでもそのエージェントの機能を呼び出して利用できる。さらに、サーバーとして運用することで、システムへのアクセスが増えた際にもサーバーの能力を増強するだけで対応できるため、拡張性が高く、本番環境での安定した運用がしやすくなる。
現実世界の仕事には、数分で終わるものもあれば、数時間、あるいは数日かかるものもある。AIエージェントが担うタスクも同様に、長時間にわたる複雑な処理が求められることがある。例えば、大量の論文を読み込んで分析するようなタスクは、すぐには完了しない。途中で処理が失敗する可能性や、人間の判断を仰ぐために一時停止する必要も出てくる。このような状況に対応するのが「非同期ワークフロー」という考え方だ。これは、タスクの実行を一度開始したら、その完了を待たずに別の作業を進められる仕組みであり、タスクの進捗状況を管理し、中断や失敗があっても途中から再開できる堅牢性を持つ。記事で紹介されているmcp-agentというライブラリは、このような長時間の非同期タスクを管理する機能を提供し、信頼性の高いエージェントシステムの構築を支援する。
mcp-agentのようなフレームワークは、開発者がMCPサーバーとして機能する高度なエージェントを比較的簡単に構築できるように設計された開発ツールキットである。これにより、開発者は通信の複雑な仕組みを意識することなく、エージェントがどのような思考や計画に基づいてタスクを遂行するか、という本質的なロジックの開発に集中できる。このように、エージェントをサーバーとして扱う考え方とそれを支える技術は、AIを実験的な試作品から、ビジネスの現場で使える堅牢なシステム部品へと進化させるための重要な一歩と言える。
しかし、まだ解決すべき課題も残されている。MCPはAIとツール間の通信を標準化したが、人間とAIエージェントが直接、円滑に対話するための標準的な方法はまだ確立されていない。長時間かかるタスクの途中で人間が進捗を確認したり、フィードバックを与えたり、エージェントの行動を修正したりするための、明確で信頼性の高いインターフェースが今後の大きな課題となる。AI同士が連携する基盤が整いつつある今、次はそのAIと人間がより深く協調するための技術の進化が期待されている。