【ITニュース解説】FlashArrayの新製品は「性能2倍」 オブジェクトデータの取り扱いも可能に

2025年09月09日に「TechTargetジャパン」が公開したITニュース「FlashArrayの新製品は「性能2倍」 オブジェクトデータの取り扱いも可能に」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Pure Storageが新ストレージ「FlashArray」を発表。従来比2倍の性能向上に加え、ファイルやブロックデータだけでなく、新たにオブジェクトデータも扱えるようになった。これは同社の新構想「Enterprise Data Cloud」の一環である。

ITニュース解説

企業がビジネスで利用するデータは、その量が増え続けているだけでなく、種類も多様化し、保管場所も複雑化している。これまでは自社内のデータセンター、いわゆる「オンプレミス」でデータを管理するのが主流だったが、現在ではAmazon Web Services (AWS) やMicrosoft Azureといった「パブリッククラウド」も活用するのが一般的だ。この結果、データがオンプレミスとクラウドに分散してしまい、一元的に管理したり、横断的に活用したりすることが難しくなるという課題が生まれている。この課題を解決するため、ストレージ専業ベンダーであるPure Storage社は「Enterprise Data Cloud」(EDC)という新しい構想を発表した。これは、オンプレミスとクラウドの垣根をなくし、あたかも一つの巨大なデータ基盤であるかのように、データをシンプルかつ柔軟に扱えるようにすることを目指す考え方である。そして、この構想を実現するための中核となるハードウェア製品群にも、新たなラインナップが加わった。

まず、企業の基幹システムや大規模なデータベースなど、極めて高い性能と信頼性が求められる用途向けのオールフラッシュストレージ「FlashArray//X」シリーズに、新モデル「//X R3」が登場した。この新モデルの最大の特徴は、従来製品と比較して性能が約2倍に向上した点である。この性能向上を支える重要な技術が「DirectMemory Cache」だ。これは、一般的なフラッシュストレージで使われるNAND型フラッシュメモリよりもさらに高速な記憶媒体である「Intel Optane SSD」をキャッシュメモリとして利用する技術である。キャッシュメモリとは、頻繁にアクセスされるデータを一時的に保持しておくための高速な記憶領域のことだ。CPUがデータを要求した際、低速なメインストレージから直接読み出すのではなく、高速なキャッシュメモリにデータがあればそこから応答することで、処理時間を大幅に短縮できる。//X R3では、このキャッシュにOptane SSDを採用することで、データの読み出しにかかる遅延時間、すなわち「レイテンシ」を劇的に削減し、アプリケーションの応答性能を飛躍的に高めることに成功している。

もう一つの新製品は、大容量とコスト効率を両立させた「FlashArray//C」シリーズの機能強化である。このシリーズは、一つのメモリセルに4ビットのデータを記録できる「QLC NAND」技術を採用することで、大容量化と低コスト化を実現し、バックアップデータやアクセス頻度の低いデータの保存先として活用されてきた。今回の発表で最も注目すべき点は、このFlashArray//Cが新たに「オブジェクトストレージ」としての利用に対応したことだ。データの保存形式には大きく分けて三つの種類がある。一つ目は、私たちが普段コンピュータでフォルダやファイルとしてデータを整理する「ファイルストレージ」。二つ目は、OSがハードディスクを管理する際の最小単位である「ブロック」単位でデータを扱う「ブロックストレージ」で、主にデータベースなどで利用される。そして三つ目が「オブジェクトストレージ」だ。これは、データ本体に、そのデータの作成日や種類といった付随情報(メタデータ)を加え、全体を「オブジェクト」という一つの単位として扱う方式である。階層構造を持たず、全てのオブジェクトにユニークなIDを割り振って管理するため、数億、数十億といった膨大な数のデータを効率的に管理することに長けている。特に、画像や動画、各種センサーから収集されるログデータといった、構造化されていない「非構造化データ」の保存に適しており、クラウドサービスでは標準的な保存形式となっている。FlashArray//Cは、このオブジェクトストレージの標準的な通信手順である「S3プロトコル」に対応したことで、これまで専用の機器が必要だったオブジェクトデータを保存できるようになった。これにより、FlashArray//Cは一台でファイル、ブロック、オブジェクトという三種類のデータ形式を扱える「ユニファイドストレージ」へと進化した。企業は複数のストレージを別々に導入・管理する必要がなくなり、インフラの簡素化と運用コストの削減を実現できる。これは、現代的なアプリケーション開発やデータ分析基盤の構築において大きなメリットとなる。

Pure Storage社が打ち出したこれらの新製品と機能強化は、単なるハードウェアの性能向上にとどまらない。高性能なFlashArray//Xで企業の基幹業務を支え、大容量かつ多機能なFlashArray//Cで増大し続ける多様なデータを効率的に管理する。この二つの製品群を柱として、オンプレミスにあるデータをクラウド上のデータと同じように手軽に扱えるようにする「Enterprise Data Cloud」構想を具現化し、企業がデータをより戦略的な資産として活用していくための強力な基盤を提供しようとしているのである。