【ITニュース解説】【GCP初学者向け】Cloud Runでステートフルなセッション管理を実現する完全ガイド
2025年09月09日に「Qiita」が公開したITニュース「【GCP初学者向け】Cloud Runでステートフルなセッション管理を実現する完全ガイド」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
GCPのCloud Runは本来、状態を持たないステートレスなサービスである。この制約下で、ログイン情報などを保持する「ステートフルなセッション管理」を実現するための複数の実践的な方式を比較し、最適な手法を解説する。
ITニュース解説
Webアプリケーションを開発する上で、ユーザーのログイン状態を維持したり、ショッピングカートの中身を覚えておいたりする機能は不可欠である。この「ユーザーごとの状態を覚えておく仕組み」をセッション管理と呼ぶ。近年、コンテナ技術を活用したサーバーレスプラットフォームであるGoogle CloudのCloud Runを利用する開発者が増えているが、Cloud Runには「ステートレス」という重要な特性がある。これは、サーバーが過去のリクエストの情報を記憶しない、という意味であり、セッション管理を行う上で工夫が必要となる。Cloud Runは、リクエストに応じてコンテナと呼ばれるプログラムの実行環境を自動で起動・停止させる。そのため、あるユーザーからのアクセスが、毎回同じコンテナで処理されるとは限らない。もしコンテナのメモリ内にセッション情報を保存していた場合、そのコンテナが停止したり、別のコンテナがリクエストを処理したりすると、保存されていた情報は失われ、ユーザーはログアウトした状態になってしまう。この課題を解決し、ステートレスなCloud Run環境で安定したセッション管理を実現するには、いくつかの方法が存在する。
一つ目の方法は、Cloud Runに標準で備わっている「セッションアフィニティ」機能を利用するアプローチだ。アフィニティとは「親和性」を意味し、この機能を有効にすると、特定のユーザーからのリクエストを、一定期間、同じコンテナインスタンスに継続して振り分けることができるようになる。これにより、コンテナインスタンスのメモリ内にセッション情報を保持しても、ユーザーがサービスを利用している間は情報が失われにくくなる。追加のサービスを契約する必要がなく、Cloud Runの設定を一つ変更するだけで実装できるため、非常に手軽な点が最大のメリットだ。しかし、この方法には注意点もある。コンテナインスタンスは永続的なものではなく、負荷状況やシステム側の都合で停止・再起動することがある。その場合、保持されていたセッション情報はすべて失われてしまう。また、アクセスが急増してコンテナインスタンスの数が増える「スケールアウト」が発生した際に、負荷分散のためにリクエストが新しいインスタンスに送られると、セッションを引き継ぐことができない。そのため、セッションアフィニティは、開発環境でのテストや、セッションが途切れてもユーザー体験に大きな影響がない小規模なアプリケーションに適した方法と言える。
二つ目の方法は、セッション情報をCloud Runのコンテナの外にある専用のデータストア、すなわち「外部ストア」に保存するアプローチだ。これにより、どのコンテナインスタンスがリクエストを処理しても、同じ外部ストアにアクセスしてセッション情報を読み書きできるため、一貫性のあるセッション管理が可能になる。コンテナインスタンスが停止してもデータは外部に保存されているため、セッションが失われることはない。この外部ストアとしてよく利用されるのが、高速なインメモリデータベースである「Memorystore for Redis」だ。インメモリとは、データをコンピュータの主記憶装置であるメモリ上に保持する方式で、ディスクに書き込むよりも圧倒的に高速な読み書きが可能だ。セッション情報は頻繁にアクセスされるため、この高速性がユーザー体験の向上に直結する。多くのプログラミング言語やフレームワークがRedisを標準的にサポートしているため導入も比較的容易であり、高いパフォーマンスと信頼性が求められる本番環境のアプリケーションでは、最も有力な選択肢となる。また、アプリケーションで既に「Cloud Firestore」や「Cloud SQL」といった他のデータベースサービスを利用している場合は、それらをセッション情報の保存場所として活用することも可能だ。これにより、セッション管理のためだけに新たなサービスを導入するコストや管理の手間を省くことができる。ただし、これらのデータベースは汎用的な用途を想定しているため、セッション管理に特化したMemorystore for Redisと比較すると、応答速度の面で劣る可能性がある点には留意が必要だ。
結論として、Cloud Runで最適なセッション管理方式を選択するには、アプリケーションの要件を正しく理解することが重要となる。手軽さを優先し、多少セッションが途切れても問題ない場合は「セッションアフィニティ」が有効な選択肢となる。一方で、高い信頼性、パフォーマンス、そして将来的なサービスの拡張性を見据えるのであれば、「外部ストア」、特に「Memorystore for Redis」の利用がベストプラクティスと言えるだろう。Cloud Runのステートレスという特性を前提とし、それに合わせたアーキテクチャを設計する思考は、現代のクラウドネイティブなアプリケーション開発において非常に重要なスキルである。