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【ITニュース解説】The key points of "Working Effectively with Legacy Code"

2025年09月05日に「Hacker News」が公開したITニュース「The key points of "Working Effectively with Legacy Code"」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

「レガシーコード」とは単に古いのではなく、テストがないコードを指す。安全に変更を加えるには、まずテストを書いてから修正するサイクルが不可欠だ。コードの依存関係を整理し、少しずつ改善していく手法が重要となる。

ITニュース解説

ソフトウェア開発の世界では、しばしば「レガシーコード」という言葉が使われる。これは単に古い、あるいは他人が書いたコードという意味で使われがちだが、より本質的な定義が存在する。著名な書籍『レガシーコード改善ガイド』において、著者マイケル・フェザーズはレガシーコードを「テストがないコード」と定義した。この定義は、システム開発者が直面する問題の核心を捉えている。テストが存在しないコードは、その振る舞いが保証されていないため、一部を変更しただけで予期せぬ別の箇所で不具合が発生するリスクを常に抱えている。この「変更への恐怖」こそが、開発の速度を低下させ、システムの品質を劣化させる最大の要因となる。

レガシーコードを扱う際には、特有のジレンマが存在する。コードを変更するためには、まずその内容を十分に理解する必要がある。しかし、複雑なコードの振る舞いを正確に理解する最も効果的な方法は、実際にコードを少し変更してその結果を観察することである。つまり、安全に変更するために理解が必要であり、理解するためには変更が必要になるという、堂々巡りの状態に陥りやすい。この問題を解決するためには、体系的なアプローチが不可欠となる。その基本的な手順は、まず変更を加えたい箇所を特定し、次にその部分の振る舞いを検証するためのテストを書く準備を整える。そして、テストを書く上で障害となる依存関係を分離し、実際にテストを作成する。この安全網を構築した上で、初めて目的の変更やリファクタリング(コードの内部構造の改善)に着手するのである。

このプロセスで中心的な役割を果たすのが「特性化テスト」と呼ばれる手法だ。これは、コードの正しさを証明するテストではなく、コードの「現在の振る舞い」をそのまま記録し、保証するためのテストである。たとえその振る舞いがバグを含んでいたとしても、まずは現状を正確に捉えることが重要となる。このテストがあることで、コードに変更を加えた後でも、意図せず他の部分の動作を変えてしまっていないか(デグレード)を機械的に検出できるようになる。これにより、開発者は安心してコードの修正や改善に集中できる環境を手に入れられる。

しかし、多くの場合、レガシーコードはテストを書くこと自体が困難な構造になっている。その主な原因は、データベースや外部のAPI、ファイルシステムといった、コードの外部にある要素との「依存関係」が密接に絡み合っていることにある。例えば、あるメソッドをテストしたいだけなのに、そのメソッドが内部でデータベースに接続していると、テストのためだけに本物のデータベースを用意しなければならなくなる。このような依存関係を断ち切るために、「シーム」という概念が重要になる。シームとは、プログラムの他の部分を編集することなく、その振る-舞いを変更できる「継ぎ目」や「隙間」のような場所を指す。このシームを見つけ出し、テスト時にはデータベースへの接続部分を、偽のデータ(テストデータ)を返すだけの単純なプログラムに差し替えるといった手法を用いることで、テスト対象のコードを独立させ、テストを容易にする。

安全なテスト環境を整えた上で、実際にコードを変更していく具体的なテクニックも存在する。例えば「スプラウトメソッド」や「スプラウトクラス」は、既存の複雑なコードに直接手を入れるのではなく、新しい機能を別の新しいメソッドやクラスとして作り、そこを呼び出すようにする手法だ。新しく作る部分は最初からテスト可能な設計にできるため、既存コードへの影響を最小限に抑えながら、安全に機能を追加できる。また、「ラップメソッド」や「ラップクラス」は、直接変更するのが危険なコードを、別のメソッドやクラスで「包み込む」ようにして扱う手法である。このラッパー(包む側)を通じて元のコードを呼び出すように変更することで、ラッパー部分にテストを追加したり、新しい振る-舞いを安全に付け加えたりすることが可能になる。

レガシーコードの改善は、決して無計画な書き直し作業ではない。テストという安全装置をまず確保し、特性化テストによって現状を固定化する。そして、依存関係を分離してテスト可能な状態を作り出し、体系的な手法を用いて少しずつコードを改善していくという、規律に基づいた工学的なアプローチである。これらの考え方と技術は、新しくシステムを構築する際だけでなく、既存のシステムを維持・発展させていく上で、すべてのシステムエンジニアにとって不可欠なスキルと言えるだろう。

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