【ITニュース解説】OpenAI rolls out ChatGPT Projects to free users

生成AIの開発で知られるOpenAIは、同社が提供する対話型AI「ChatGPT」の「Projects」という機能を、無料ユーザーにも提供開始したことを発表した。この機能は、これまで有料プランの契約者のみが利用できる特典の一つだったが、今後はより多くのユーザーがその恩恵を受けられるようになる。システムエンジニアを目指す上で、このような最新のAIツールをいかに効率的に活用するかは重要なスキルとなるため、この新機能の仕組みと活用法を理解しておくことは有益である。

「Projects」機能は、一見するとChatGPTとの会話履歴を整理するための単なるフォルダ機能のように思えるかもしれない。しかし、その本質は、特定の主題やタスクごとに独立した作業環境を構築し、AIの振る舞いをカスタマイズすることにある。これにより、ユーザーはChatGPTを汎用的なアシスタントとして使うだけでなく、特定の目的に特化した専門家として活用することが可能になる。例えば、「Pythonプログラミング学習」「Webアプリケーションの基本設計」「データベースのSQLクエリ作成」といったように、目的別にプロジェクトを作成し、それぞれのタスクに最適化されたAIとの対話空間を維持できる。

この機能の核となるのが、「カスタム指示」と「ファイル参照」の二つの能力である。まず「カスタム指示」は、プロジェクトごとにChatGPTの応答スタイルや前提条件をあらかじめ設定できる機能だ。例えば、「Pythonプログラミング学習」プロジェクトでは、「あなたは経験豊富なソフトウェアエンジニアです。初心者に教えるように、専門用語は避け、具体的なコード例を豊富に交えて解説してください」といった指示を設定しておくことができる。これにより、会話を始めるたびに同じような前提を説明する必要がなくなり、常に一貫した質の高い回答を得られる。実際のシステム開発現場では、特定のコーディング規約や設計思想をカスタム指示に組み込むことで、プロジェクトのルールに準拠したコードやドキュメントの生成をAIに支援させるといった応用も考えられる。

もう一つの核である「ファイル参照」は、プロジェクトごとに特定のファイルをアップロードし、ChatGPTにその内容を知識として参照させる機能である。これにより、インターネット上の一般的な情報だけでなく、ユーザーが提供したクローズドな情報に基づいた回答を生成させることが可能になる。例えば、開発対象となるシステムの要件定義書や仕様書といったドキュメントをアップロードしておけば、「このシステムのユーザー認証機能の仕様について説明して」と質問するだけで、ChatGPTがドキュメントの内容を正確に読み解いて回答してくれる。これは、膨大な資料の中から必要な情報を探し出す手間を大幅に削減し、開発効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。

今回の発表により、無料ユーザーもこの「Projects」機能を利用できるようになったが、有料プランとの間には明確な差が設けられている。最も大きな違いは、アップロードできるファイルの数だ。無料ユーザーがプロジェクトごとに参照させられるファイルは最大5つまでであるのに対し、有料のPlusプランでは25、Proプランでは40までと上限が引き上げられている。個人的な学習や小規模なタスクであれば無料版でも十分に活用できるが、複数の詳細な仕様書や大量の参考資料を扱う本格的な開発プロジェクトで利用するには、有料プランの検討が必要になるだろう。

このような機能提供の仕方は、OpenAIの一貫したビジネス戦略を反映している。魅力的な機能を一部制限付きで無料開放し、より高度で本格的な利用を望むユーザーを有料プランへと誘導する、いわゆる「フリーミアムモデル」である。OpenAIは過去にも、高度なWeb検索機能や音声対話機能などを有料限定で先行リリースし、その後無料ユーザーにも開放するという流れを繰り返してきた。これは、AI技術の利便性を広く体験してもらうことでユーザー基盤を拡大しつつ、ヘビーユーザーや法人顧客から収益を確保するための戦略だ。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、「Projects」機能は、学習や開発の強力なサポーターとなりうる。各技術要素やタスクごとにプロジェクトを分け、適切なカスタム指示と参考資料を設定することで、自分だけの専門アシスタントを複数育成するような使い方ができる。これにより、情報の混在を防ぎ、各タスクの文脈に沿った正確な支援を受けられるようになる。この機能を使いこなし、AIを自らの能力を拡張するツールとして活用するスキルは、これからのエンジニアにとってますます重要になるだろう。