【ITニュース解説】Lightweight pending state handling in React

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Lightweight pending state handling in React」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Reactの非同期処理におけるローディング状態を簡単に管理する軽量ライブラリ「@t8/react-pending」が公開。既存のコードを大きく変えず、`usePendingState`フックを追加するだけで、ローディング中やエラーといった状態をシンプルに扱える。

出典: Lightweight pending state handling in React | Dev.to公開日:

ITニュース解説

Reactを用いたWebアプリケーション開発では、サーバーからデータを取得するなどの時間のかかる処理、いわゆる「非同期処理」が頻繁に発生する。ユーザーがボタンをクリックしてからデータが表示されるまでの間、アプリケーションは通信を行い、サーバーからの応答を待っている。この待ち時間に画面が何も変化しないと、ユーザーはアプリケーションが停止してしまったのかと不安に感じたり、操作にストレスを感じたりする可能性がある。そのため、開発者は「現在、データを読み込んでいます」といったメッセージやローディングアニメーションを表示し、処理が進行中であることをユーザーに明示する必要がある。このような処理中の状態は「ペンディング状態」や「ローディング状態」と呼ばれる。また、通信エラーなどで処理が失敗した場合に、その旨をユーザーに伝えるエラーハンドリングも同様に重要である。これらのペンディング状態とエラー状態の管理は、ユーザー体験を向上させる上で不可欠な要素と言える。

この一般的な課題を解決するために、Reactのエコシステムには多くの強力なライブラリが存在する。代表的なものに、データ取得とキャッシュ管理に特化したTanStack React Queryや、アプリケーション全体の複雑な状態を一元管理するためのRedux Toolkitなどがある。これらのライブラリは非常に高機能であり、非同期処理の状態管理を半自動的に行ってくれるだけでなく、データのキャッシュや再取得の最適化など、高度な機能も提供する。しかし、その高機能さゆえに、学習コストがかかったり、プロジェクトに導入するための設定が複雑だったりすることもある。特に、小規模なアプリケーションや、単に特定のコンポーネントで一時的なローディング表示を追加したいだけ、といったシンプルな要件の場合、これらの大規模なライブラリを導入するのは機能過剰、つまり「大げさ」に感じられることがある。より手軽で、プロジェクトの既存の構造に大きな変更を加えることなく、ピンポイントで状態管理を実装したいというニーズは少なくない。

こうした状況に対し、非同期処理の状態管理という特定の目的に絞った、軽量な解決策として「@t8/react-pending」というライブラリが開発された。このライブラリのコンセプトは、大規模で多機能なライブラリを導入するまでもない場面で、シンプルかつ最小限のコードでペンディング状態とエラー状態を管理することにある。既存の非同期処理のロジックや、アプリケーションの状態管理の仕組みに影響を与えることなく、後から簡単に追加できる点が最大の特徴である。

@t8/react-pending の中心的な機能は usePendingState というReactのカスタムフックによって提供される。開発者は、状態を管理したいコンポーネント内でこのフックを呼び出すだけで準備が完了する。具体的には、const [state, withState] = usePendingState(); のように記述する。これにより、statewithState という二つの値が得られる。withState は、既存の非同期処理をラップするための関数である。例えば、これまで fetchItems() という関数でデータを取得していた場合、これを withState(fetchItems()) と書き換える。この一行の変更だけで、@t8/react-pendingfetchItems の処理開始から完了、あるいは失敗までの一連の状態を監視してくれるようになる。もう一つの state は、監視対象の非同期処理の現在の状態を格納したオブジェクトである。このオブジェクトには、処理が完了したかを示す complete プロパティや、エラーが発生したかを示す error プロパティなどが含まれている。開発者は、この state オブジェクトの値に応じて、コンポーネントの表示内容を切り替えることができる。例えば、「state.completefalse の間はローディング表示を、state.errortrue になったらエラーメッセージを表示する」といった条件分岐を記述するだけで、直感的にUIを制御できる。このアプローチの優れた点は、データ取得の具体的な実装や、取得したデータをコンポーネントのローカルなstateで管理する部分など、既存のコードをほとんど変更する必要がないことである。

さらに、@t8/react-pending は、非同期処理の状態を複数のコンポーネント間で共有する機能も備えている。usePendingState フックの引数に、'item-list' のようなユニークな文字列キーを渡すことで、その状態に名前を付けることができる。そして、別のコンポーネントから同じキーを指定して usePendingState を呼び出すと、同じ非同期処理の状態オブジェクトを参照することが可能になる。これにより、例えば、メインエリアのコンポーネントで商品リストのデータを取得している間に、ヘッダーにある別のコンポーネントでグローバルなローディングインジケーターを表示する、といったコンポーネント間の連携が極めて容易に実現できる。状態を共有するために、複雑な状態管理ライブラリやContext APIをセットアップする必要はない。

@t8/react-pending は、あらゆる非同期処理の管理を代替するものではない。しかし、React Queryのような包括的なデータフェッチングライブラリが提供する高度なキャッシュ機能やサーバー状態の同期までは必要なく、特定の非同期処理のペンディング状態とエラー状態を手軽に、かつクリーンに管理したい開発者にとっては、非常に魅力的な選択肢となる。既存のアーキテクチャに影響を与えることなく、最小限の労力でユーザー体験を向上させることができるこの軽量なライブラリは、多くのプロジェクトで役立つツールとなるだろう。