【ITニュース解説】Self-propagating supply chain attack hits 187 npm packages
2025年09月17日に「BleepingComputer」が公開したITニュース「Self-propagating supply chain attack hits 187 npm packages」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
npmのソフトウェア部品を狙う自己増殖型サプライチェーン攻撃が進行中だ。「Shai-Hulud」と呼ばれるワーム型攻撃で、すでに187以上のnpmパッケージが乗っ取られた。人気パッケージの改ざんから始まり、被害が拡大しているため、注意が必要だ。
ITニュース解説
今回のニュースは、現代のソフトウェア開発において非常に深刻な脅威である「サプライチェーン攻撃」が実際に発生し、しかもそれが「自己伝播型」という、さらに危険な形で拡大していることを報じている。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これはソフトウェアの信頼性とセキュリティについて深く考えるきっかけとなる重要な出来事だ。
まず、「サプライチェーン攻撃」とは何かを説明する。現代のソフトウェア開発では、ゼロからすべての機能をプログラミングすることはほとんどない。多くの開発者が、既存の便利な機能を提供する「ライブラリ」や「パッケージ」と呼ばれるソフトウェアの部品を組み合わせてアプリケーションを構築している。これは、例えば自動車を組み立てる際に、タイヤやエンジンなどの部品を専門のメーカーから調達するのと同じようなものだ。サプライチェーン攻撃とは、このようなソフトウェア開発の「部品供給網(サプライチェーン)」が標的となる攻撃のことだ。攻撃者は、最終的なターゲット(例えば、ある企業のシステムや、多くのユーザーが使うアプリケーション)を直接狙うのではなく、そのターゲットが利用している「部品」を開発したり配布したりする過程に侵入する。この部品に悪意のあるコードを仕込んでおけば、その部品を使うすべてのアプリケーションが、気づかないうちに攻撃者の意図する動作をするようになる。開発者は信頼している部品を使っているつもりでも、その部品の内部に悪意が隠されているため、非常に発見が難しいのが特徴だ。
次に、今回の攻撃の舞台となった「npm」について解説する。npmは、JavaScriptというプログラミング言語で開発する際に欠かせない「パッケージマネージャー」だ。JavaScriptはWebサイトの動きを制御したり、最近ではサーバーサイドのアプリケーション開発(Node.js)でも広く使われている。npmを使えば、世界中の開発者が公開している様々なJavaScriptパッケージを簡単に探し、自分のプロジェクトに組み込むことができる。例えば、ウェブページの色を調整するパッケージや、日付を扱うパッケージなど、数多くの便利な機能がnpmを通じて提供されているため、多くのシステムエンジニアが日常的に利用しており、開発のスピードと効率を支える重要なインフラとなっている。このnpmを通じて配布されるパッケージが悪意のあるコードに感染することは、広範囲のシステムに影響を及ぼす可能性を秘めている。
今回の攻撃は特に「自己伝播型(ワーム型)」という点が危険だ。これは、一度あるパッケージが感染すると、その感染がまるで生き物のように自ら他のパッケージへと広がっていくタイプの攻撃を指す。通常のマルウェアは、誰かがファイルをダウンロードしたり、リンクをクリックしたりすることで感染が始まることが多いが、ワームはネットワークやシステム内の脆弱性を利用して、自動的に感染を拡大させる能力を持っている。今回のnpmパッケージへの攻撃の場合、感染したパッケージが別のパッケージに依存している場合や、同じ開発者のアカウントが乗っ取られた場合などに、感染したコードが新しいバージョンとしてリリースされ、その新しいバージョンが利用されることで次々と被害が広がっていく可能性がある。その拡大速度と範囲は非常に予測しにくく、短時間で広範囲に被害をもたらす危険性を秘めている。
「Shai-Hulud」と名付けられた今回の攻撃は、ごく最近、@ctrl/tinycolorというnpmパッケージの侵害から始まった。このパッケージは、色を扱うための小さなユーティリティを提供しており、多くのJavaScriptプロジェクトで利用されていた可能性が高い。攻撃者はこの人気のあるパッケージに悪意のあるコードを仕込み、それが公開されたことで、このパッケージを依存関係に持つ他のプロジェクトへと感染が拡大し始めた。 さらに深刻なのは、攻撃がセキュリティ企業のCrowdStrikeのnpm名前空間にまで拡大したことだ。CrowdStrikeのような大手セキュリティ企業は、サイバーセキュリティの専門家集団であり、自社の開発するソフトウェアには高いセキュリティ基準を適用しているはずだ。にもかかわらず、その名前空間が侵害されるということは、サプライチェーン攻撃がどれほど巧妙で、いかなる組織も標的になり得るかを示している。これは、セキュリティ対策を専門とする企業でさえも被害に遭い得ることを意味しており、セキュリティ業界全体にとっても大きな警鐘となる出来事だ。現在、少なくとも187のnpmパッケージがこの攻撃によって侵害されたと確認されており、被害の全容はまだ明らかになっていない。
このような自己伝播型サプライチェーン攻撃がもたらす影響は非常に大きい。まず、開発者自身が悪意のあるコードを直接書き込んだわけではないため、非常に発見が難しい。開発者は信頼しているパッケージを組み込んでいるつもりでも、そのパッケージの「中身」が勝手に書き換えられている可能性があるからだ。もし感染したパッケージが広く使われるアプリケーションに組み込まれてしまった場合、そのアプリケーションのユーザーの情報が盗まれたり、システムが破壊されたり、さらにはそのユーザーのシステムが悪意のある活動の踏み台にされたりする可能性がある。例えば、クレジットカード情報や個人情報が窃取されたり、システムへの不正アクセスを許してしまったりするかもしれない。ソフトウェアの信頼性という土台が揺らぐことになり、社会全体のデジタルインフラの安全性を脅かす深刻な問題へと発展しかねない。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、今回のニュースは非常に重要な教訓を含んでいる。まず、ソフトウェア開発において「信頼性」と「セキュリティ」が何よりも重要であることを認識すべきだ。簡単に使えるからといって、無条件に外部のパッケージやライブラリをプロジェクトに組み込むのではなく、そのパッケージがどこで作られ、誰が管理し、安全性が確保されているかを常に意識する必要がある。具体的には、利用するパッケージの公式情報や、コミュニティでの評価、最新の脆弱性情報などを定期的に確認する習慣が求められる。また、開発環境においても、常に最新のセキュリティパッチを適用し、不審な挙動がないか監視する体制を整えることも重要だ。サイバーセキュリティは、もはや専門家だけの問題ではなく、すべてのシステムエンジニアが日々意識し、対策を講じるべき不可欠な要素となっている。今回の「Shai-Hulud」のような自己伝播型サプライチェーン攻撃は、デジタル社会が抱える脆さを改めて浮き彫りにした。私たちはこの教訓を活かし、より安全なソフトウェア開発と運用を目指していく必要がある。