【ITニュース解説】Softr + Airtable + Make: A Scalable No-Code Architecture

2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「Softr + Airtable + Make: A Scalable No-Code Architecture」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

ノーコードツール「Softr」「Airtable」「Make」を組み合わせ、Webアプリを高速開発する手法。Softrが見た目、Airtableがデータ管理、Makeが処理の自動化を担当。コードを書かずに柔軟なシステムを短期間で構築でき、社内ツール開発などに適している。

ITニュース解説

プログラミングコードを記述することなく、ウェブアプリケーションやシステムを構築する「ノーコード」という開発手法が注目を集めている。この手法は、専門的なプログラミングスキルがなくてもアイデアを迅速に形にできるため、ビジネスのスピードを加速させる大きな可能性を秘めている。しかし、全てのノーコードツールが同じ能力を持つわけではなく、特にシステムの規模が大きくなったり、複雑な処理が必要になったりすると、性能や機能の限界に直面することがある。そこで、複数のノーコードツールを巧みに組み合わせ、それぞれの長所を活かすことで、スケーラビリティと柔軟性を両立させる新しいアーキテクチャが求められている。

本稿では、Softr、Airtable、Makeという3つのサービスを連携させることで、本格的なウェブアプリケーションを構築する手法について解説する。これは、システム開発における役割分担に例えると理解しやすい。まず「Softr」は、ユーザーが直接目にして操作する画面、すなわち「フロントエンド」や「UI」を構築する役割を担う。ウェブサイトの見た目やボタンの配置、入力フォームなどを、ドラッグアンドドロップのような直感的な操作で作成できる。次に「Airtable」は、アプリケーションが扱うデータを保存し、管理するための「データベース」として機能する。見た目はスプレッドシートに似ており手軽に扱えるが、内部ではデータ同士を関連付けるリレーショナルデータベースの能力を持つ。顧客情報、商品リスト、注文履歴といった重要なデータを構造的に整理・保管する場所となる。そして「Make」は、これらツール間の連携を司り、定められたルールに従って処理を自動実行する「ロジックエンジン」の役割を果たす。例えば「新しい注文が入ったら、在庫を確認して、請求書を自動作成し、担当者に通知する」といった一連の処理フローを、コードを書かずに視覚的なインターフェースで組み立てることができる。これら3つのツールがそれぞれの専門分野で能力を発揮し、連携することで、一つの強力なアプリケーションとして機能するのだ。

このアーキテクチャの有効性を、ある物流会社の見積もり自動化ポータルを構築した実例を通じて見ていく。この会社では、現場担当者からの見積もり依頼がメールで行われ、手作業で処理されていたため、対応の遅れやミスが発生していた。また、リアルタイムの在庫状況がわからず、管理部門の負担も大きいという課題を抱えていた。この問題を解決するため、まずAirtableを用いて、顧客情報、商品情報、見積もり、注文といったデータを管理するためのデータベースを設計した。各データは互いに関連付けられ、例えば、どの顧客がどの商品をいくつ注文したかといった情報が正確に記録される仕組みを整えた。次に、Softrを使い、現場担当者や顧客が利用する専用のウェブポータルを構築した。このポータルにはログイン機能が備わっており、許可されたユーザーだけがアクセスできる。ユーザーはポータル上のフォームに必要な情報を入力するだけで、簡単に見積もりを依頼できるようになった。そして、このシステムの心臓部となるのがMakeによる自動化処理である。ユーザーがSoftrのフォームから見積もり依頼を送信し、そのデータがAirtableに登録されると、それをトリガーとしてMakeが自動的に動き出す。Makeは、Airtableから依頼内容に関連する顧客情報や商品価格を瞬時に取得し、顧客のランクに応じた割引率を適用して正確な見積もり金額を計算する。算出された金額はAirtableの該当レコードに自動で更新され、同時に社内の担当者へSlackを通じて「新しい見積もり依頼が届きました」という通知が送られる。さらに、もし見積もりが承認されないまま24時間経過した場合には、自動でリマインダーを送信する機能も組み込まれている。この一連のプロセスを自動化することで、見積もり業務は大幅に効率化され、人為的ミスも削減された。このシステム全体は、わずか3週間弱という短期間で構築・導入された。

このSoftr、Airtable、Makeを組み合わせた構成は、システムエンジニアの視点から見ても多くの利点を持つ。第一に、明確な役割分担により、並行して効率的に開発を進めることが可能になる。UIデザイナーはSoftrで画面設計に集中し、データ管理者はAirtableでデータ構造を整備し、業務プロセス設計者はMakeで自動化フローを構築するといった分業が容易になる。第二に、システムの変更や改善に対する柔軟性が非常に高い。例えば、画面のレイアウト変更であればSoftrだけを修正すればよく、新しいデータ項目を追加したい場合はAirtableの設定を変更するだけで済む。従来の開発のように、一部の変更がシステム全体に影響を及ぼすリスクを低減できる。第三に、圧倒的な開発スピードを実現できる。プログラミング、コンパイル、サーバーへのデプロイといった時間のかかる工程が不要なため、アイデアを即座に形にし、ユーザーからのフィードバックを素早く反映させることができる。第四に、開発者以外のチームメンバーでもシステムの維持管理に関わりやすくなる点も大きい。運用担当者はAirtableのテーブルを見ることで現在のデータ状況を直感的に把握でき、Makeのビジュアルエディタを見れば、どのようなロジックで業務が自動化されているかを視覚的に理解できる。これにより、開発者への依存を減らし、チーム全体でシステムを運用していく体制を築きやすくなる。

一方で、このノーコードスタックは万能な解決策ではないことも理解しておく必要がある。それぞれのツールには性能上の制約が存在する。Airtableは、保存できるレコード数やAPI経由でのアクセス回数に上限が設けられているため、数百万件のデータを扱うような大規模システムや、非常に高い頻度でデータの読み書きが発生するシステムには不向きである。Softrも、極めて複雑な条件分岐を持つUIや、高度なフロントエンドのロジックを実装するには機能が不足している場合がある。Makeも、利用するプランによって1ヶ月に実行できる処理の回数に制限があり、それを超える場合は追加料金が発生する。したがって、このアーキテクチャは、大量のトランザクション処理やリアルタイムでの高速な同期が求められるシステムには適していない。そのような要件がある場合は、FirebaseやSupabaseといったBaaS(Backend as a Service)や、従来通りのカスタムバックエンドを構築することを検討すべきである。このスタックが最も輝くのは、社内向けの業務ツール、例えばプロジェクト管理、資産管理、オンボーディングプロセスなどのシステムを迅速に構築したい場合や、顧客や取引先向けの小規模なポータルサイト、あるいは新しい事業のアイデアを検証するための実用最小限の製品(MVP)を低コストかつ短期間で開発したいといったケースである。

Softr、Airtable、Makeを組み合わせたノーコードアーキテクチャは、従来のプログラミングによる開発手法を完全に置き換えるものではない。しかし、特定の用途や要件においては、驚異的なスピードと柔軟性をもたらす、極めて強力な選択肢となる。このアプローチは、エンジニアが定型的な開発作業から解放され、より創造的で本質的な課題解決に集中するための時間を生み出す。また、システムエンジニアを目指す初心者にとっては、アプリケーションが「フロントエンド(UI層)」「バックエンド(データ層)」「ロジック(処理層)」という要素で構成されているという基本構造を、実際に手を動かしながら、コードを書かずに体験的に学ぶことができる絶好の教材とも言えるだろう。ノーコード開発は、単に非開発者のためのツールというだけでなく、現代の俊敏な開発チームにとって、価値を素早く提供するための戦略的な武器となり得るのである。

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