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【ITニュース解説】tfaction を段階的に導入した

2025年09月12日に「Zenn」が公開したITニュース「tfaction を段階的に導入した」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

システム開発の自動化(CI/CD)に使うTerraformの運用を改善するため、「tfaction」というツールを段階的に導入した事例を紹介。これまでGitHub Actionsで組んでいた自前の仕組みから、通常の開発と並行して少しずつ移行した背景と方法を解説する。

出典: tfaction を段階的に導入した | Zenn公開日:

ITニュース解説

ソフトウェア開発において、Webサイトやアプリケーションが動作する基盤となるサーバー、ネットワーク、データベースといった「インフラ」の構築と管理は非常に重要な作業だ。従来、これらのインフラは手作業で設定されることが多かったが、これはヒューマンエラーの原因となったり、作業に時間がかかったり、特定の担当者しか設定内容を把握していない「属人化」の問題を引き起こしたりした。これらの問題を解決するために、「Infrastructure as Code(IaC)」という考え方が生まれた。IaCは、インフラの構成をコード(設定ファイル)として記述し、そのコードに基づいてインフラを自動的に構築・変更・削除する手法だ。

このIaCを実現するための代表的なツールが「Terraform」である。Terraformを使うと、クラウドサービス(例えばAWSやGCP)上のインフラ構成を、特定のプログラミング言語ではなく、Terraform独自の宣言的な設定ファイルで記述できる。例えば、「Webサーバーを何台、どの地域に、どのような設定で用意するか」といった指示をコードで書けば、Terraformがその通りにインフラを自動でプロビジョニング(準備・構築)してくれる。これにより、インフラ構築の再現性が高まり、一貫した環境を効率的に提供できるようになる。

インフラがコードで管理されるようになっても、そのコードが変更された際に、安全かつ迅速に実際のインフラに反映される仕組みが必要だ。ここで「CI/CD」という概念が重要になる。CI/CDとは「継続的インテグレーション(Continuous Integration)」と「継続的デリバリー(Continuous Delivery)」の略で、開発者がコードに変更を加えるたびに、自動的にテストを行い、問題がなければ本番環境にデプロイできる状態にする、あるいは自動でデプロイする一連のプロセスを指す。Terraformのコードに対してもCI/CDを適用することで、インフラの変更が意図しない挙動を引き起こさないか自動で確認し、安全に変更を適用できるようになる。

このCI/CDを実現するためのツールとして広く利用されているのが「GitHub Actions」だ。GitHub Actionsは、コードが保管されているGitHubのリポジトリと連携し、プルリクエストの作成やコードのマージといった特定のイベントをトリガーに、様々な自動処理(テスト実行、ビルド、デプロイなど)を実行できる。今回解説する記事の企業でも、以前からTerraformを使ったインフラのCI/CDにGitHub Actionsを活用していた。しかし、この自前で構築したGitHub Actionsのワークフロー(自動処理の定義)にはいくつかの課題が存在した。具体的には、ワークフローの定義が非常に複雑で、多くのステップに分かれており、全体像を把握しにくく「可読性」が低いという問題があった。また、複数のインフラリポジトリで同じようなワークフローをコピーして使っていたため、コードが「冗長」になり、一つの修正を加えるにも多くの場所を更新する必要があった。さらに、これらのワークフローの詳細を把握しているのが一部のメンバーに限られており、「属人化」が進んでいたため、新しいメンバーの参加や変更時の「メンテナンスコスト」が非常に高かったのだ。これらのCI/CDの改善は、日々の開発タスクを優先する中で、後回しになりがちだったという背景もある。

このような既存のCI/CDにおける複雑性、冗長性、属人化、メンテナンス性の課題を解決するために導入されたのが「tfaction」というツールだ。tfactionはGo言語で開発されており、GitHub Actionsと連携することで、TerraformのCI/CDプロセスを大幅に簡素化・効率化することを目的としている。tfactionの最大の特徴は、インフラ構成を管理するディレクトリ内に「terraform.yaml」というシンプルな設定ファイルを一つ配置するだけで、Terraformの主要な操作であるplan(インフラへの変更内容を事前に確認するコマンド)やapply(確認した変更内容を実際のインフラに適用するコマンド)を自動的に実行できるようになる点だ。これにより、従来のGitHub Actionsの複雑なワークフロー記述の多くを不要にし、より簡潔でメンテナンスしやすいCI/CDを実現できる。tfactionは、複数のTerraformモジュール(再利用可能な設定の単位)が同時に変更された場合に、それらを並列で実行したり、互いの依存関係を解決して適切な順序で実行したりする機能を持つ。また、Terraformの実行結果をSlackなどのチャットツールに自動で通知する機能や、AWS S3といったクラウドストレージにTerraformの状態を保存する「バックエンド」設定を自動化する機能も備わっている。さらに、GitHubのプルリクエスト上でTerraformの実行ステータスをチェックとして表示することで、インフラ変更の承認プロセスをスムーズに進められる。特に、一つのリポジトリで複数のインフラ構成を管理する「モノレポ」構成において、変更があった箇所だけを効率的に検出してTerraformを実行できる点も、tfactionの大きな強みだ。

新しいツールを導入する際、既存のシステムを一気に置き換えることは、予期せぬトラブルやリスクを招く可能性がある。そのため、この企業ではtfactionを「段階的に」導入するアプローチを採用した。これは、リスクを最小限に抑えつつ、安全性を確認しながら徐々に移行を進める、非常に賢明な戦略である。

まず、ステップ0として事前準備が行われた。これには、Terraformのコードを整理し、モノレポ構成に適したディレクトリ構造に整えることや、Terraformのバージョンを統一することなどが含まれる。インフラのコードが整理されていなければ、どんなに優れたツールを導入してもその効果は十分に発揮されないため、この基礎固めは非常に重要だ。

次に、ステップ1としてTerraformのplan処理のみtfactionに置き換えられた。Terraformのplanは、インフラに変更を適用する前に「どのような変更が行われるか」を事前に確認する作業だ。この段階では、実際のインフラへの変更(apply)は依然として従来のGitHub Actionsで行い、tfactionは変更内容の確認のみを担当させた。これにより、tfactionが正しく動作するか、既存のCI/CDと衝突しないかなどを慎重に検証できた。万が一問題が発生しても、インフラが予期せぬ変更を受けるリスクを避けることができるため、非常に安全な移行方法と言える。

planでの動作検証が成功裏に終わると、ステップ2としてapplyの処理もtfactionに置き換えられた。このステップで、Terraformの実行プロセス全体がtfactionによって管理されることになった。これまでの検証を通じてtfactionの信頼性が確認されていたため、安心して本番環境への変更もtfactionに任せられるようになったのだ。

最後に、ステップ3としてモノレポ対応の強化が行われた。tfactionはモノレポ環境で非常に強力な差分検出機能を持つ。これにより、インフラ構成の一部に変更があった場合でも、その変更に関連するTerraformモジュールのみを対象にplanapplyを実行できるようになり、無駄な処理を減らし、CI/CDの効率をさらに高めることができた。

tfactionの段階的な導入によって、この企業は多くのメリットを享受できた。最も顕著な効果は、GitHub Actionsのワークフローが大幅に簡素化され、その結果としてCI/CDの「可読性」と「メンテナンス性」が劇的に向上したことだ。複雑なスクリプトを記述する必要がなくなり、「terraform.yaml」という統一された設定ファイル一つでTerraformの実行ロジックを管理できるようになることで、誰でもCI/CDの動作を理解しやすくなった。これは、これまで特定のメンバーに依存していた「属人化」の解消にも繋がった。さらに、CI/CDのテスト容易性が向上し、新しいメンバーでも安心してインフラの変更作業に取り組めるようになった。結果として、Terraformのコード品質やインフラ運用の効率が全体的に向上し、開発者全員の「開発体験」が改善されたという。この記事は、インフラの自動化が現代のソフトウェア開発においていかに重要であるか、そして既存の課題を解決するために新しいツールやアプローチを段階的に導入することの有効性を示している。システムの複雑化や属人化に悩む開発チームにとって、tfactionのようなツールの導入や、段階的な移行戦略は、CI/CDの改善とインフラ運用の安全性・効率性向上に向けた具体的な一歩となるだろう。

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