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IEEE 802.3ah(アイ・トリプル・イー・ハチマルニ・ドット・サン・エイチ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IEEE 802.3ah(アイ・トリプル・イー・ハチマルニ・ドット・サン・エイチ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

アイ・イー・イー・イー・はちまるにい・てんさん・エイチ (アイイーイーイーハチマルニテンサンエイチ)

英語表記

IEEE 802.3ah (アイ・トリプル・イー・ハチ・マル・ニ・イー・エイチ)

用語解説

IEEE 802.3ahは、国際的な技術標準化団体であるIEEEによって2004年に策定された、イーサネットに関する規格の一つである。一般的には「Ethernet in the First Mile」、略してEFMという名称で知られている。この規格の最も重要な目的は、従来ローカルエリアネットワーク(LAN)の技術として発展してきたイーサネットを、通信事業者が提供するアクセス網、すなわち加入者宅と通信局舎を結ぶいわゆる「ラストワンマイル」区間で利用可能にすることであった。それまでのアクセス網では、ADSLなどのDSL技術やケーブルテレビ網が主流であったが、イーサネットを直接利用することで、より高速でコスト効率の高いサービスの提供が期待された。IEEE 802.3ahは、この目的を達成するために、物理層の仕様拡張と、ネットワークの運用管理を高度化するための仕組みを新たに定義した。具体的には、伝送媒体として光ファイバーと既存の電話線(銅線ツイストペアケーブル)の両方に対応した物理層の規格を定め、さらにキャリアグレードの運用に不可欠なOAM(Operations, Administration, and Maintenance)機能をイーサネットに初めて本格的に導入した点が大きな特徴である。

詳細について述べると、まず物理層の仕様は、使用する伝送媒体と接続形態によって複数定義されている。光ファイバーを利用する方式としては、ポイント・ツー・ポイント(P2P)接続とポイント・ツー・マルチポイント(P2MP)接続の二種類がある。P2P接続は、通信局舎と加入者宅を一本の光ファイバーで一対一に接続する形態であり、規格としては1000BASE-LX10や1000BASE-BX10が定められた。1000BASE-BX10では波長分割多重(WDM)技術を用いて一本の光ファイバーで双方向通信を実現し、ファイバー資源の効率的な利用を可能にしている。一方、P2MP接続は、一本の光ファイバーを光スプリッタと呼ばれる受動素子で分岐させ、複数の加入者と共有する形態である。このP2MP方式を実現する規格が1000BASE-PXであり、これはPON(Passive Optical Network)と呼ばれる技術に基づいている。この技術は、後のGE-PON(Gigabit Ethernet-PON)の基礎となり、日本のFTTH(Fiber To The Home)サービスの普及に極めて大きな役割を果たした。また、既存のインフラを有効活用するため、電話線として広く敷設されている銅線ツイストペアケーブルを利用する規格も定められた。10PASS-TSや2BASE-TLがこれに該当し、DSL技術と同様に既存のメタル回線上でイーサネットによる高速通信を可能にするものである。

IEEE 802.3ahがもたらしたもう一つの重要な革新は、OAM機能の標準化である。LANでの利用を前提としていた従来のイーサネットには、通信事業者が広範囲にわたるアクセス網を安定的に運用・保守するために必要な監視・管理機能が乏しかった。そこで本規格では、ネットワークの健全性を遠隔から監視し、障害発生時に迅速な切り分けを可能にするためのOAM機能を新たに規定した。主要な機能として、対向装置のOAM機能を検知し通信を開始する「Discovery」、常時リンクの状態を監視してエラーレートなどを通知する「Link Monitoring」、対向装置に信号を折り返させて疎通確認や故障箇所の切り分けを行う「Remote Loopback」などがある。さらに、加入者側の装置で電源断などの致命的な障害が発生した際に、最後の力を振り絞って局側の装置へ異常を通知する「Dying Gasp」という機能も含まれている。これらのOAM機能によって、イーサネットは単なる高速な伝送技術から、通信事業者が安心してサービスを提供できるキャリアグレードのネットワーク技術へと進化した。総じて、IEEE 802.3ahは、イーサネットの適用範囲をLANからアクセス網へと劇的に拡大させ、今日のブロードバンド社会の基盤となるFTTHサービスの発展を技術的に支えた、極めて重要な標準規格であると言える。

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