ILMT(アイエルエムティー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ILMT(アイエルエムティー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アイエルエムティー (アイエルエムティー)
英語表記
ILMT (アイエルエムティー)
用語解説
ILMTは、IBM License Metric Toolの略称であり、IBMが提供するソフトウェア製品のライセンス使用状況を測定、管理、そして報告するためのツールである。ITインフラ、特にサーバー環境が物理的なものから仮想化された環境へと移行する中で、ソフトウェアライセンスの正確な管理は非常に複雑化した。ILMTは、このような複雑な環境下でIBMソフトウェアのライセンスが契約通りに適切に使用されているかを把握し、コンプライアンスを維持するために開発された。主な目的は、IBMが定めるプロセッサベースのライセンス指標、特にPVU(Processor Value Unit)やVPC(Virtual Processor Core)でライセンスされている製品の消費量を正確に追跡することにある。多くの企業では、コスト効率を高めるために、物理サーバーのリソースを分割して複数の仮想マシンを稼働させている。このとき、ソフトウェアが実際に使用している仮想的なリソース分だけライセンス料を支払う「サブキャパシティ・ライセンス」という契約形態を選択することがある。ILMTは、このサブキャパシティ・ライセンスを利用する上で、その使用量を証明するために導入が必須とされるケースが多く、企業にとってライセンスコストの最適化とコンプライアンス違反のリスク低減に不可欠な役割を担うツールである。
ILMTの仕組みは、監視対象の各コンピュータに導入される「エージェント」と、それらのエージェントから収集した情報を一元的に管理・分析する「ILMTサーバー」の二つの主要なコンポーネントで構成される。まず、IBMソフトウェアがインストールされている可能性のあるすべての物理サーバーおよび仮想マシンにエージェントが導入される。このエージェントは、定期的にそのコンピュータのハードウェア構成情報(プロセッサのモデル、ソケット数、物理コア数、仮想コア数など)と、インストールされているソフトウェアのインベントリ情報をスキャンして収集する。収集されたデータは、ネットワークを通じて中央のILMTサーバーに送信される。ILMTサーバーは、全エージェントから集約したデータをデータベースに格納し、分析を開始する。この分析の中核となるのが、ライセンス消費量の計算である。IBMのPVUライセンスは、プロセッサの性能や世代によってコアあたりのPVU値が異なるため、手動での計算は極めて煩雑で間違いやすい。ILMTサーバーは、IBMが公式に提供する「PVUテーブル」と、エージェントから収集したプロセッサ情報を自動的に照合し、正確なPVU消費量を算出する。これにより、管理者はどのソフトウェアが、どのサーバーで、どれだけのライセンスを消費しているかを正確に把握できる。さらにILMTは、収集した情報をもとに詳細なレポートを生成する機能を持つ。管理者はWebベースのインターフェースを通じて、ライセンス使用状況のスナップショットや履歴を確認し、定期的なレポートを作成する。このレポートは、IBMとの契約を遵守していることを証明するための公式な証拠として扱われる。特にサブキャパシティ・ライセンス契約下では、四半期ごとにこのレポートを生成し、最低2年間保管することが義務付けられている。この義務を怠ると、サブキャパシティ・ライセンスの権利を失い、物理サーバー全体のキャパシティに基づいた高額なライセンス料(フルキャパシティ・ライセンス)を請求されるリスクがある。また、運用面では、ソフトウェアの分類作業も重要である。ILMTはインストールされているファイルを検知するが、それが単体製品なのか、あるいは他の製品に含まれる無償のコンポーネント(バンドル製品)なのかを自動で完全には判断できない場合がある。そのため、管理者が手動で製品を正しく割り当てる作業が必要となり、これを怠るとライセンス数が過剰に計上される可能性がある。このように、ILMTは単に導入するだけでなく、継続的な監視と適切な運用管理が求められるツールであり、IBMソフトウェアを利用する企業のIT資産管理とガバナンスにおいて中心的な役割を果たしている。