LSDB(エルエスディービー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
LSDB(エルエスディービー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
リンクステートデータベース (リンクステートデータベース)
英語表記
Link-State Database (リンクステートデータベース)
用語解説
LSDBはLink-State Databaseの略称である。これは、OSPFやIS-ISに代表されるリンクステート型ルーティングプロトコルにおいて、中核的な役割を担うデータベースだ。ネットワークにおけるルータの役割は、宛先までの最適な通信経路を決定し、データを転送することにある。その経路決定のため、各ルータはネットワーク全体の接続情報を保持する必要がある。LSDBは、そのネットワークトポロジー情報を格納するためのデータベースであり、ルータが経路計算を行うための基礎情報となる。リンクステート型プロトコルでは、エリアと呼ばれる特定の範囲内で活動するすべてのルータが、完全に同一のLSDBを保持することを原則とする。これにより、ネットワーク内のどのルータも同じ情報に基づいて経路を判断するため、ルーティングの矛盾やループが発生することを防ぎ、安定した通信を実現する。
LSDBは、LSA(Link-State Advertisement)と呼ばれる情報の集合体で構成される。LSAは「リンク状態広告」と訳され、個々のルータが自身の状態や接続情報をネットワーク内に通知するための情報単位である。例えば、あるルータは自身の各インターフェースの状態、接続しているネットワークアドレス、そのリンクの通信コストといった情報をLSAとして生成する。このLSAには、生成したルータの識別子、情報の新旧を判断するためのシーケンス番号、有効期限などの管理情報も含まれている。これにより、受信したルータは情報の鮮度を評価し、古くなった情報をデータベースから削除することができる。LSAには複数の種類が存在し、ルータ自身の接続情報を広告するものや、特定のネットワークセグメントに接続しているルータのリストを広告するものなど、通知したい情報の種類に応じて定義されている。これらの多様なLSAが集約されることで、ネットワーク全体の詳細なトポロジー情報を示すLSDBが構築される。
LSDBの構築と維持は、ルータ間の定められた手順によって行われる。まず、ルータは隣接するルータと制御用のパケットを交換し、ネイバー関係を確立する。この関係が確立されると、ルータ同士は互いが保持しているLSDBの要約情報を交換し、データベースに差分がないかを確認する。もし自分のLSDBにない情報や、より新しい情報、つまりシーケンス番号が大きいLSAを相手が持っていることを検知した場合、そのLSAの詳細を要求する。要求を受けたルータは、該当するLSAを送信し、要求したルータは自身のLSDBを更新する。この一連の情報の伝播プロセスはフラッディングと呼ばれ、ネットワーク内のすべてのルータに情報を行き渡らせることで、最終的にエリア内の全ルータが同一のLSDBを持つ同期状態に至る。ネットワークの構成に変更、例えばリンクの障害や新しいルータの追加などが発生した際には、その変更を検知したルータが即座に新しいLSAを生成し、フラッディングを行う。これにより、変更情報が迅速にネットワーク全体に伝播し、すべてのルータが最新のトポロジー情報に更新される。この仕組みが、リンクステート型プロトコルの高速な収束(コンバージェンス)を実現する重要な要素となっている。
完成したLSDBは、ルーティングテーブルを作成するための入力データとなる。各ルータは、同期されたLSDBの情報を用いて、SPF(Shortest Path First)アルゴリズム、具体的にはダイクストラ法と呼ばれる計算手法を実行する。この計算では、自分自身を始点として、ネットワーク上の他のすべての宛先への最短経路を算出する。各ルータは、同一のLSDBという情報源を使用しながら、それぞれが自身の視点から最適経路を独立して計算する。この計算によって得られた宛先ネットワークごとの最短経路が、最終的にルーティングテーブルに登録され、実際のパケット転送に利用される。LSDBが正確かつ最新の状態に保たれている限り、各ルータが個別に計算した経路は全体として矛盾なく構成され、ループのない最適なデータ転送が保証される。このように、LSDBはネットワークの現状を正確に反映し、それを基に各ルータが自律的に最適経路を導き出すための、リンクステート型ルーティングプロトコルにおける設計の根幹をなす概念である。