LPWA(エルピーダブリューエー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
LPWA(エルピーダブリューエー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
低電力広域 (テイデンリョクコウイキ)
英語表記
LPWA (エルピーダブリューエー)
用語解説
LPWAは「Low Power Wide Area」の略称であり、その名の通り「省電力」かつ「広域」な無線通信を実現する技術の総称である。日本語では「省電力広域無線通信」などと訳される。この技術は、特にIoT(Internet of Things)の分野で、あらゆるモノがインターネットに接続される社会を実現するための重要な要素として注目されている。従来のWi-Fiや携帯電話網(LTE/5G)といった無線通信技術には、消費電力が大きい、通信コストが高い、通信エリアが限定的であるといった課題があった。LPWAは、これらの課題を解決し、これまでネットワーク接続が難しかったモノからのデータ収集を可能にすることを目的として開発された。
LPWAの最大の特徴は、主に「省電力」「広域通信」「低コスト」の三点に集約される。まず「省電力」について、LPWAは通信速度を意図的に低く抑える設計となっている。通信速度は数kbpsから数十kbps程度であり、高速なデータ通信はできない。しかし、この低速化と引き換えに通信時の消費電力を極めて小さくすることに成功した。これにより、乾電池や小型のバッテリーを電源とするデバイスであっても、交換なしで数年から十年以上といった長期間の稼働が可能となる。電源の確保が困難な屋外や山間部、広大な敷地内に設置されるセンサーデバイスにとって、この長寿命性は非常に大きな利点である。次に「広域通信」であるが、LPWAは電波の感度が高く、障害物にも強いという特性を持つ。そのため、一つの基地局で半径数kmから数十kmという広範囲をカバーすることができる。これは、携帯電話網の基地局がカバーする範囲よりも広く、少ない基地局数で広大なエリアの通信網を構築できることを意味する。インフラ構築コストを抑制できるだけでなく、山間部や農地といった、これまで通信環境の整備が遅れていた地域への展開も容易になる。最後に「低コスト」という点も重要である。通信モジュールの構造がシンプルであるため、デバイス自体の製造コストを安価に抑えることができる。また、通信キャリアが提供する通信サービスの料金も、少量のデータを低頻度で送受信する用途を想定して、非常に低価格に設定されている。これにより、何万、何十万という膨大な数のデバイスをネットワークに接続するような大規模なIoTシステムの構築が、経済的に実現可能となる。
これらの特徴を持つLPWAであるが、その利点は通信速度を犠牲にすることで成り立っていることを理解する必要がある。画像や動画、音声といった大容量データの伝送には全く向いていない。LPWAが主戦場とするのは、温度、湿度、位置情報、メーターの数値、機器のON/OFF状態といった、ごく少量のデータを、数分から数時間に一度といった低い頻度で送信するような用途である。
LPWAには複数の通信規格が存在し、それぞれに特徴がある。これらは大きく、免許が不要な周波数帯(アンライセンスバンド)を利用する規格と、携帯電話事業者などが免許を持つ周波数帯(ライセンスバンド)を利用する規格に大別される。アンライセンスバンドを利用する代表的な規格には「LoRaWAN」や「Sigfox」がある。LoRaWANは長距離通信性能に優れ、企業などが自前で基地局を設置してプライベートなネットワークを構築することも可能である。Sigfoxは、通信事業者がインフラを整備し、ユーザーはデバイスを用意するだけで利用できる手軽さが特徴で、グローバルなローミングにも対応している。一方、ライセンスバンドを利用する規格の代表例が「LTE-M」と「NB-IoT」である。これらは携帯電話のLTE技術をベースにしており、既存のLTE基地局のソフトウェア更新などで対応できるため、通信事業者は迅速かつ広範なサービスエリアを提供できる。LTE-MはLPWAの中では比較的高速で、移動中の通信にも対応する。NB-IoTは、さらに省電力・低コストに特化し、地下や建物の奥深くなど電波が届きにくい場所への浸透性が高いという特徴を持つ。
LPWAの具体的な活用事例は多岐にわたる。例えば、ガスや水道のスマートメーターでは、検針員が現地を訪問することなく遠隔で自動的に使用量を収集できる。農業分野では、広大な農地に設置したセンサーから土壌の水分や温度データを収集し、最適なタイミングでの水やりや施肥を実現するスマート農業に活用される。また、橋梁やトンネルといった社会インフラの劣化状態をセンサーで常時監視したり、物流コンテナやパレットの位置情報を追跡したり、河川の水位を監視して防災に役立てたりと、様々な分野でその価値を発揮している。LPWAは、高速・大容量通信を担う5Gなどとは対極に位置する技術であるが、IoT社会において膨大な数の末端デバイスからの情報を吸い上げるという、不可欠な役割を担う基盤技術である。