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MLC(エムエルシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

MLC(エムエルシー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

マルチレベルセル (マルチレベルセル)

英語表記

MLC (エムエルシー)

用語解説

MLCはMulti-Level Cellの略であり、NANDフラッシュメモリにおけるデータ格納方式の一種である。NANDフラッシュメモリは、電源を切ってもデータが保持される不揮発性メモリであり、SSD(Solid State Drive)やUSBメモリ、SDカード、スマートフォンの内部ストレージなど、現代の様々なデジタルデバイスで広く利用されている。MLCの最大の特徴は、一つのメモリセルに2ビットのデータを格納できる点にある。これは、従来のSLC(Single-Level Cell)方式が一つのセルに1ビットしか格納できなかったことと比較して、記録密度を大幅に向上させる技術として登場し、特にSSDの大容量化とコスト削減に大きく貢献した。

MLC方式では、一つのセルに2ビットのデータを格納するため、セルが取り得る電荷レベル(電圧レベル)を4段階に識別する必要がある。具体的には、これらの4つのレベルがそれぞれ「00」「01」「10」「11」といった2ビットのデータに対応付けられる。SLCが一つのセルで「0」か「1」の2つの状態しか識別しないのと比べ、MLCはより多くの情報を同じ物理スペースに格納できるため、集積度を高めることが可能となる。この多段階の電圧レベルを正確に識別し、書き込み、読み出しを行うためには、高度な半導体製造技術と、メモリコントローラによる精密な制御技術が不可欠である。

MLCの採用は、主にストレージデバイスの高密度化とビットあたりのコスト削減に大きく貢献した。同じ物理的なNANDフラッシュメモリチップサイズであっても、MLC技術を用いることでより大容量のストレージデバイスを製造することが可能になり、これによりNANDフラッシュメモリのビットあたりの製造コストが低下した。このコスト低下は、特にSSDの価格性能比を向上させ、一般消費者市場への普及を加速させる重要な要因となった。MLC以前の主流であったSLCメモリは、高速で耐久性に優れるものの、コストが高く大容量化が難しいという課題を抱えていたが、MLCはこのコストと容量のバランスを改善する、実用的なソリューションを提供したのである。

しかし、MLCにはいくつかのデメリットも存在する。まず、書き込み速度の低下が挙げられる。一つのセルに複数ビットを書き込むには、電荷レベルを4段階の中から正確な目標値に設定する必要があるため、SLCに比べて書き込みサイクルが複雑化し、データを書き込むのに時間がかかる。また、読み出し時にも、わずかな電荷レベルの違いを精密に識別する必要があるため、読み出し回路の複雑化やエラー耐性の低下が懸念される。

さらに重要なのが、耐久性の低下である。NANDフラッシュメモリのセルは、データの書き込みや消去を繰り返すことで物理的に劣化し、最終的にはデータを正確に保持できなくなる。この書き込み・消去回数の上限はP/Eサイクル(Program/Erase Cycle)と呼ばれ、メモリセルの寿命を示す指標となる。MLCはSLCと比較してP/Eサイクルが大幅に少ない。SLCが10万回程度のP/Eサイクルを持つ一方で、MLCは通常3,000回から5,000回程度に留まることが多い。これは、多段階の電荷レベルを維持するために、セルにかかる電気的なストレスが大きいこと、そしてセル状態の識別が厳密であるため、わずかな劣化でもデータ保持能力が失われやすいためである。耐久性の低下は、特に頻繁な書き込みが発生するサーバやエンタープライズ環境での利用において、ストレージデバイスの寿命を縮める要因となるため、用途に応じた慎重な選択が求められる。

信頼性の面でも、MLCはSLCより課題を抱える。多段階の電圧レベルを識別する際、ノイズやセルの劣化によって読み出しエラーが発生しやすくなる。このため、MLCを使用するストレージデバイスでは、ECC(Error-Correcting Code)と呼ばれる誤り訂正符号が必須となる。ECCは、NANDフラッシュメモリから読み出されたデータに誤りがあった場合に、それを検出し、訂正する機能を持つ。メモリコントローラが高度なECCアルゴリズムを実装することで、MLCの信頼性は実用レベルに保たれているが、それでもSLCと比較すると、信頼性維持のための処理オーバーヘッドは大きいと言える。

MLCは、主にコンシューマ向けSSDにおいて広く採用されてきた。高速なデータアクセスが必要とされる一方で、SLCほどの極端な耐久性や高コストは要求されない用途、例えばPCの起動ドライブやゲームのインストール先などに適している。しかし、MLCの登場後、さらなる高密度化とコスト削減の要求に応えるため、TLC(Triple-Level Cell、3ビット/セル)やQLC(Quad-Level Cell、4ビット/セル)といった技術が開発され、普及が進んでいる。TLCやQLCはMLCよりもさらに高密度化と低コスト化を実現するが、その代償として書き込み速度のさらなる低下、耐久性の一層の悪化、そして信頼性維持のためのより高度な制御が必要となる。

現代のSSD市場では、大容量かつ低コストのニーズに応えるためにはTLCやQLCが主流となっているが、MLCも一部の高性能コンシューマ向けや特定のエンタープライズ向けSSDで、SLCに次ぐ高い耐久性と速度が求められる場面で引き続き利用されることがある。MLCが示した「1つのセルに複数ビットを格納する」という基本的なアプローチは、その後のNANDフラッシュメモリ技術の発展において極めて重要なマイルストーンであった。MLCは、NANDフラッシュメモリが大衆市場に普及する上で不可欠な技術であり、今日の多様なストレージデバイスの基盤を築いた技術の一つとして理解しておくべきである。システムエンジニアを目指す上で、ストレージの選択や設計において、各フラッシュメモリタイプの特性を理解することは極めて重要となる。