第6層 (ダイロクソウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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第6層 (ダイロクソウ) の読み方

日本語表記

第六層 (ロクソウ)

英語表記

Presentation Layer (プレゼンテーションレイヤー)

第6層 (ダイロクソウ) の意味や用語解説

第6層は、ネットワークにおける通信機能の階層モデルであるOSI参照モデルの6番目に位置する層であり、一般的にプレゼンテーション層と呼ばれる。この層の基本的な役割は、通信を行うアプリケーション間でやり取りされるデータの表現形式を統一し、互いのアプリケーションがデータの意味を正しく解釈できるようにすることである。具体的には、上位のアプリケーション層(第7層)と下位のセッション層(第5層)の間に存在し、両者の橋渡し役を担う。アプリケーション層から受け取ったデータを通信に適した形式に変換したり、逆に通信相手から受信したデータを自身のアプリケーションが扱える形式に戻したりする機能を提供する。これにより、異なる機種やオペレーティングシステムといった環境の違いを吸収し、円滑なデータ交換を実現する。 プレゼンテーション層が担う主要な機能は、大きく分けて三つある。第一に、データの表現形式の変換である。コンピュータやアプリケーションは、それぞれ固有のデータ表現形式を持っている。例えば、文字を表すための文字コードには、ASCII、EBCDIC、UTF-8など複数の種類が存在する。また、数値をメモリ上に格納する際のバイト順序(エンディアン)にも、ビッグエンディアンとリトルエンディアンという違いがある。もし、異なるデータ表現形式を持つシステム同士が何の配慮もなく通信を行うと、送信されたデータを受信側が正しく解釈できず、文字化けなどの問題が発生する。プレゼンテーション層は、こうした問題を解決するために、送信側でアプリケーション固有のデータ形式を、ネットワーク通信における標準的な共通データ形式に変換する。そして受信側では、その共通データ形式を自身のアプリケーションが理解できる形式に再度変換する。この機能により、アプリケーション開発者は通信相手のシステムの内部仕様を意識する必要がなくなり、アプリケーション間の相互運用性が大幅に向上する。 第二の機能は、データの暗号化と復号である。今日のネットワーク通信では、セキュリティの確保が極めて重要となる。通信経路上で第三者にデータを盗聴されたり、改ざんされたりするリスクを防ぐため、プレゼンテーション層は暗号化の機能を提供する。送信側では、アプリケーション層から渡されたデータを暗号化し、内容を読み取れない状態にしてから下位のセッション層へ送る。一方、受信側では、下位層から受け取った暗号化データを復号し、元の平文データに戻してからアプリケーション層へ渡す。この一連の処理によって、通信の機密性が保たれ、安全なデータ交換が可能となる。Web通信で広く利用されているSSL/TLSプロトコルが提供する暗号化機能は、このプレゼンテーション層の役割に相当すると考えられている。 第三の機能として、データの圧縮と伸張が挙げられる。テキストファイルや画像、動画といったデータはサイズが大きくなることがあり、そのまま送受信するとネットワーク帯域を大きく消費し、通信に時間がかかる原因となる。そこで、通信効率を高めるために、プレゼンテーション層はデータを圧縮して全体のサイズを小さくする処理を行う。送信側でデータが圧縮され、受信側ではそれを受け取った後に元の状態に伸張(展開)してからアプリケーションに渡す。これにより、ネットワークリソースの消費を抑え、より高速なデータ転送を実現することができる。JPEGやGIFといった画像フォーマットや、MPEGといった動画フォーマットが持つ圧縮技術も、このプレゼンテーション層が担う機能の具体例と見なすことができる。 ただし、注意すべき点として、OSI参照モデルはあくまで概念的なモデルであり、現在のインターネット通信で標準的に利用されているTCP/IPモデルでは、プレゼンテーション層は独立した層として存在しない。TCP/IPモデルでは、OSI参照モデルにおけるセッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層の機能は、一つのアプリケーション層にまとめて実装されるのが一般的である。そのため、実際のネットワークプロトコルやアプリケーション開発において、「プレゼンテーション層」が明確に意識される機会は少ない。しかし、そこで扱われるデータの形式変換、暗号化、圧縮といった機能は、Webブラウザやメールクライアントなどのアプリケーション自体、あるいはそれらが利用するライブラリによって確実に実装されている。このことからも、プレゼンテーション層が担う役割そのものは、現代のネットワーク通信においても不可欠な要素であり、その概念を理解することはシステム全体の動作を把握する上で非常に重要であると言える。

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