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RTOS(アールティーオーエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

RTOS(アールティーオーエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

リアルタイムオペレーティングシステム (リアルタイムオペレーティングシステム)

英語表記

RTOS (アールティーオーエス)

用語解説

リアルタイムオペレーティングシステム(Real-Time Operating System)、略してRTOSは、特定の時間的制約(デッドライン)を厳密に守って処理を実行することを目的とした特殊なオペレーティングシステムである。システムエンジニアを目指す上で、RTOSの概念は組み込みシステムや制御システム開発において特に重要となるため、その概要と詳細を理解することは不可欠である。

RTOSの最大の特徴は「リアルタイム性」である。これは単に「速い」という意味ではない。一般的なパソコンで使われるWindowsやmacOS、あるいはスマートフォンで使われるAndroidやiOSといった汎用オペレーティングシステム(汎用OS)は、タスクの処理速度を最大化したり、多くのユーザーに公平にリソースを分配したりすることを目指す。しかし、RTOSが追求するのは、あるタスクが指定された時間内に確実に、かつ予測可能なタイミングで完了することを保証する能力である。例えば、自動車のエアバッグ制御システムでは、衝突を検知してから決められたごく短い時間内にエアバッグを展開しなければならない。このデッドラインをわずかでも過ぎると、人命に関わる重大な結果を招く可能性がある。このような、決められた時間内に処理を完了する「時間的な確実性」こそが、RTOSの提供するリアルタイム性の本質である。RTOSは主に、自動車のエンジン制御ユニット(ECU)、医療機器、産業用ロボット、航空機のフライト制御システムなど、時間的な精度が極めて重要となる組み込みシステムで広く利用されている。

RTOSの詳細について掘り下げると、そのリアルタイム性の種類には大きく分けて「ハードリアルタイム」と「ソフトリアルタイム」の二つがある。RTOSが主に扱うのはハードリアルタイムであり、これは前述のエアバッグのように、デッドラインをわずかでも破るとシステム全体が致命的な障害を起こしたり、許容できない結果を招いたりする厳格な時間制約を指す。一方、ソフトリアルタイムは、デッドラインを破ってもシステム全体が機能停止するわけではないが、パフォーマンスの低下やユーザーエクスペリエンスの悪化につながるような時間制約を意味する。例えば、メディアプレイヤーで動画のフレームがたまに落ちるような場合がこれにあたる。RTOSは、ハードリアルタイムの要件を満たすために、汎用OSとは異なる設計思想と機能を持っている。

RTOSの核となる機能の一つは「タスク管理」である。システム内で実行される個々の処理単位をタスクと呼び、RTOSはこれらのタスクに対して優先度を割り当てる。そして、「プリエンプティブスケジューリング」という方式を用いて、常に最も高い優先度のタスクが実行されるように制御する。プリエンプションとは、実行中の優先度の低いタスクを一時的に中断(プリエンプト)し、より優先度の高いタスクにCPUの実行権を渡す仕組みである。これにより、緊急性の高い処理が他の処理に邪魔されずに、即座に実行を開始できる。汎用OSの多くは、タスクに公平にCPU時間を割り当てるラウンドロビン方式なども併用するが、RTOSはリアルタイム性を保証するため、厳格な優先度ベースのスケジューリングを基本とする。

また、RTOSは正確な「リアルタイムタイマー」機能を提供する。これは、特定の周期でタスクを実行したり、一定時間後にタスクを起動したり、あるいはタスクのタイムアウトを監視したりするために不可欠な機能である。高い精度を持つタイマーは、制御システムにおいてフィードバックループのタイミングを正確に保つ上で重要な役割を果たす。

複数のタスクが協調して動作するシステムでは、「同期・通信機構」も非常に重要となる。タスク間でデータを受け渡したり、共有リソース(メモリ領域、周辺機器など)へのアクセスを制御したりする必要があるからである。RTOSは、セマフォ、ミューテックス、メッセージキューといった機構を提供し、タスク間の安全なデータ交換や、複数のタスクが同時に共有リソースにアクセスして発生する競合状態(レースコンディション)やデッドロックといった問題を回避するための仕組みを提供する。特にミューテックスは、共有リソースへの排他制御に使われ、一度に一つのタスクしかそのリソースにアクセスできないようにすることで、データの整合性を保つ。

RTOSは、組み込みシステムに搭載されることが多いため、「小さなフットプリント」も重要な特徴である。つまり、汎用OSに比べて必要なメモリ容量やCPUリソースが非常に少なく設計されている。これは、組み込みデバイスが限られたハードウェアリソースしか持たないことが多いため、効率的なリソース利用が求められるからである。不要な機能を削ぎ落とし、リアルタイム性能に特化することで、この小型化を実現している。

これらの特徴により、RTOSは、予測可能な振る舞いが求められるあらゆる分野で不可欠な存在となっている。自動車の電子制御システム(エンジン、ブレーキ、ステアリング、自動運転支援システムなど)、工場で稼働する産業用ロボットや工作機械、人工透析装置やペースメーカーなどの医療機器、さらには宇宙探査機や人工衛星の制御システムなど、その応用範囲は非常に広い。これらのシステムでは、わずかな処理の遅延が人命や莫大な損害に直結するため、RTOSが提供する厳格な時間管理能力が不可欠なのである。

汎用OSが快適なユーザー体験や高いスループットを追求するのに対し、RTOSはシステムの安全性と信頼性を最優先し、時間的な確実性を保証するという点で根本的に異なる。システムエンジニアを目指す者は、開発するシステムがどのような時間的要件を持つのかを理解し、その要件に応じて適切なOSを選択する知識を持つことが求められる。リアルタイム性が不要なシステムであれば汎用OSで十分だが、厳密な時間制約がある場合にはRTOSの導入が必須となることを認識しておくべきである。

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