【ITニュース解説】BEEP-8: Running C/C++20 on an emulated ARM v4a CPU inside the browser
2025年09月14日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「BEEP-8: Running C/C++20 on an emulated ARM v4a CPU inside the browser」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
BEEP-8は、ブラウザ内でARM v4a CPUをJavaScriptで完全にエミュレートするファンタジーコンソールだ。C/C++20で書いたプログラムをコンパイルし、リアルなOS機能やグラフィックと共にブラウザ上で実行できる。SE初心者がARM環境でC/C++を学ぶのに役立つ実験ツールとなるだろう。
ITニュース解説
ITの世界では、コンピューターの仕組みを理解することが非常に重要だ。今回紹介する「BEEP-8」というプロジェクトは、まさにその理解を深めるのに役立つ興味深い技術だと言えるだろう。
BEEP-8は「ファンタジーコンソール」と呼ばれるジャンルのものだ。ファンタジーコンソールとは、架空のゲーム機をソフトウェアで再現し、その上でプログラムを動かす遊びや開発環境を指す。通常、これらのファンタジーコンソールは、独自に設計されたシンプルな仮想マシン、つまりソフトウェアで実現された架空のコンピューター上で動作する。しかし、BEEP-8は一味違う。これは単なるおもちゃのような仮想マシンではなく、実際に存在するARM v4aという種類のCPU(中央演算処理装置)を正確に模倣し、その上でプログラムを動かすことができるのだ。しかも、このすべてがWebブラウザの中で完結するという点が画期的だ。
BEEP-8の基本的な考え方は、Webブラウザの性能が向上した現代だからこそ実現できたものだ。開発者は、まずコンピューターのプログラムをC言語やC++20といった、現代的で強力なプログラミング言語を使って作成する。C++20は、最新のC++の規格であり、高度な機能や効率的な記述が可能だ。これらのソースコードは、そのままではコンピューターが理解できないため、「gnuarm gcc」という特定の種類のコンパイラを使って、「ARM v4a」というCPUが直接理解できる「マシンコード」という形式に変換される。マシンコードとは、CPUが直接実行できる、0と1で構成された命令のことだ。このマシンコードをまとめたものが「ROMイメージ」として生成される。ROMとは、通常、読み出し専用のメモリのことで、ゲームカセットに入っているプログラムのようなものだと考えるとわかりやすいだろう。
次に、このROMイメージをBEEP-8上で実行する。BEEP-8の核心となるのは、「サイクルアキュレートエミュレータ」と呼ばれる技術だ。エミュレータとは、あるコンピューターシステムが別のコンピューターシステム上で、あたかも元のシステムがそこに存在するかのように動作させるためのソフトウェアのことだ。BEEP-8のエミュレータは、JavaScriptやTypeScriptというWeb開発で広く使われるプログラミング言語で実装されている。このエミュレータは、実際のARM v4a CPUの動作を、非常に細かな「サイクル」単位で忠実に再現する。例えば、元のCPUが4MHz(メガヘルツ)の速度で動作し、1MB(メガバイト)のRAM(ランダムアクセスメモリ)と1MBのROMを持っている場合、エミュレータも全く同じスペックで動作を再現する。これにより、まるで本物のARM v4aチップがWebブラウザの中で動いているかのような体験が得られるのだ。
BEEP-8のシステムは、単にCPUを模倣するだけでなく、実際のコンピューターに必要な様々な機能も備えている。その一つが「軽量なRTOSカーネル」だ。RTOSとは「リアルタイムオペレーティングシステム」の略で、特定のタスクを決められた時間内に確実に実行することを目的としたOS(オペレーティングシステム)の一種だ。一般的なパソコンのOSとは異なり、組み込みシステムやゲーム機などでよく使われる。このRTOSカーネルには、複数の処理を同時に実行しているように見せる「スレッド」の管理機能や、時間の計測を行う「タイマー」、複数の処理が共有リソースにアクセスする際の競合を防ぐための「セマフォ」、そして緊急の処理要求に対応するための「IRQ(割り込み要求)」といった機能が組み込まれている。IRQは、例えばキーボードの入力や画面の更新など、CPUが現在行っている処理を一時中断して、より重要な別の処理を実行させるための仕組みだ。BEEP-8では、これらの機能が「SVCディスパッチ」と呼ばれる方法で効率的に処理される。
また、BEEP-8はゲーム機としての側面も持っているため、グラフィックスとサウンドの機能も充実している。グラフィックスを担当するのは「PPU(Picture Processing Unit)」と呼ばれる部分だ。これは、現代のWebブラウザが持つ強力なグラフィックス描画技術である「WebGL」を使って実装されている。WebGLは、3DグラフィックスをWebブラウザ上で高速に描画するための技術であり、これによりBEEP-8はスプライト(キャラクターなどの小さな画像)、背景レイヤー、そして単色のポリゴンといった、ゲームによく使われる様々なグラフィックス要素を効率的に表示できる。
サウンドを担当するのは「APU(Audio Processing Unit)」だ。これは、昔のゲーム機で使われていた「ナムコC30スタイル」のサウンドチップをJavaScriptでエミュレートしている。これにより、レトロゲームのような特徴的な電子音をブラウザ内で再現できるのだ。システムの動作は、PCでもスマートフォンでも、常に60fps(フレーム毎秒)で滑らかに表示されるように設計されている。これは、1秒間に60回画面が更新されることを意味し、ゲームなどの動きが重要なアプリケーションにとって非常に快適な動作環境を提供する。
このBEEP-8のプロジェクトは、現代のプログラミング言語であるC++20で書かれたコードが、特定のCPU向けにコンパイルされ、それがWebブラウザの中で、あたかも本物のハードウェア上で動いているかのように実行されるという点で、非常にユニークで興味深い。これは、ソフトウェアとハードウェアの境界線がいかに曖昧になりつつあるか、そしてWebブラウザの技術がいかに進歩しているかを示す好例だ。システムエンジニアを目指す初心者にとっては、低レベルのCPUの仕組みから、コンパイラの役割、リアルタイムOSの概念、Web技術、そしてグラフィックスやサウンドの処理まで、幅広い知識を実践的に学ぶための「遊び場」として、あるいは「教育ツール」として非常に価値のあるものとなるだろう。GitHubでソースコードが公開されているため、興味があれば内部の仕組みを詳細に探求することも可能だ。