Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

SPDY(エスピーディーワイ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

SPDY(エスピーディーワイ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

エスピーディーワイ (エスピーディーワイ)

英語表記

SPDY (エスピーディーワイ)

用語解説

SPDY(スピーディー)とは、GoogleがWebサイトの表示高速化を目指して開発した実験的なプロトコルである。既存のWebプロトコルであるHTTP/1.1が抱えていた様々な課題を解決し、次世代のWeb通信の基盤となることを目指して設計された。最終的には、その技術的な成果や思想がHTTP/2という形でWeb標準プロトコルとして採用され、SPDY自体の開発は終了したが、現代の高速なWeb環境を支える上で重要な役割を果たしたプロトコルである。

SPDYが開発された背景には、当時のWebサイトが高度化し、リソースの量が増大する中で、既存のHTTP/1.1が性能上の限界に直面していたという事情がある。HTTP/1.1では、一つのTCP接続上で同時に処理できるリクエストが一つに限られる「ヘッドオブラインブロッキング」という問題があった。これは、Webページを構成するCSS、JavaScript、画像といった複数のリソースを同時に取得しようとする際、前のリクエストの処理が完了しないと次のリクエストが開始されないため、ページの読み込みが遅くなる主要な原因となっていた。この問題を回避するために、Webブラウザは複数のTCP接続をサーバに対して確立する手法を取っていたが、これによって新たな問題が生じた。具体的には、多数のTCP接続を確立・維持するために、接続確立にかかる時間(ハンドシェイク)が増大し、サーバ側にも余計なリソース負荷がかかるというオーバーヘッドが発生していた。さらに、HTTP/1.1ではリクエストとレスポンスのたびにHTTPヘッダー情報が繰り返し送信され、同じ内容であっても都度送られるため、ネットワーク帯域が無駄に消費されるという非効率性も存在した。

SPDYはこれらのHTTP/1.1の課題を克服するために、いくつかの革新的な機能を導入した。その最たるものが「マルチプレキシング(多重化)」である。SPDYは単一のTCP接続上で、複数のHTTPリクエストとレスポンスを同時に、かつ独立した「ストリーム」として送受信できる仕組みを導入した。これにより、ヘッドオブラインブロッキングの問題を大幅に軽減し、複数のリソースを効率的に並行取得することが可能になった。単一のTCP接続で済むため、接続確立にかかる時間の短縮や、サーバ側のリソース消費の削減にも貢献し、全体的なWebページの表示速度向上に寄与した。

次に、「ヘッダー圧縮」も重要な機能の一つである。SPDYでは、リクエストとレスポンスのヘッダー情報を効率的に圧縮して送信する仕組みが導入された。特に、同一のヘッダーフィールドが繰り返し送信される場合に、その重複を排除したり、差分情報のみを送ったりすることで、通信量を削減した。これは、ネットワーク帯域の利用効率を高め、特にモバイル環境のように帯域が限られている状況で大きな効果を発揮した。

さらに、SPDYは「リクエストの優先順位付け」の機能を提供した。これは、クライアントがサーバに対して、どのリソースを優先的に処理し、送信してほしいかを伝えることができるメカニズムである。例えば、Webページのレンダリングに不可欠なCSSファイルやJavaScriptファイルは、単なる画像ファイルよりも優先的に取得されるべきである。この優先順位付けにより、ユーザーがWebページをより早く体感できるよう、重要なコンテンツから順に表示されるよう制御が可能になった。

もう一つの画期的な機能が「サーバプッシュ」である。これは、クライアントが明示的にリクエストしていないにもかかわらず、サーバが今後クライアントが必要になると予測されるリソースを先んじて送信する技術である。例えば、WebブラウザがHTMLファイルをリクエストし、サーバがそれを送信する際、そのHTMLが参照するCSSファイルやJavaScriptファイル、画像ファイルなどを、クライアントからのリクエストを待たずに同時に送信してしまう。これにより、クライアントがそれらのリソースを個別に要求するまでのラウンドトリップタイムを削減し、Webページの読み込みをさらに高速化することができた。

また、SPDYのほとんどの実装では、セキュリティ強化のためにSSL/TLSによる暗号化通信が必須とされた。これにより、通信の盗聴や改ざんのリスクが低減され、Webの安全性が向上しただけでなく、Web通信における暗号化の重要性を再認識させるきっかけにもなった。

Googleは2009年にSPDYの開発を開始し、自社のWebブラウザであるGoogle Chromeにこのプロトコルを実装した。その性能と効果が広く認識され、Mozilla Firefoxをはじめとする他の主要なWebブラウザもSPDYをサポートするようになった。SPDYの登場は、HTTP/1.1の限界を超え、Webの高速化を実現する新たな方向性を示した点で大きな影響を与えた。

このSPDYの成功と、そこで得られた技術的知見は、Web標準化団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)における次世代HTTPプロトコルの標準化作業に決定的な影響を与えた。IETFはSPDYの主要な概念であるマルチプレキシング、ヘッダー圧縮、優先順位付け、サーバプッシュなどを継承し、さらに洗練させた形でHTTP/2として標準化した。HTTP/2は2015年に正式に公開され、Webの標準プロトコルとして広く採用されるようになった。HTTP/2の標準化に伴い、Googleは2015年にSPDYのサポートを終了し、HTTP/2への移行を促した。

SPDYは現在、直接的に使われるプロトコルではないが、その開発がWebの高速化と効率化に向けた重要な一歩となり、現代のWeb環境を支えるHTTP/2の礎を築いた点で、その歴史的意義は非常に大きい。システムエンジニアを目指す上では、SPDYがどのような課題を解決し、どのようにHTTP/2に影響を与えたかを理解することは、Web通信プロトコルの進化を理解する上で不可欠である。

関連コンテンツ