Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】How We Saved 600 Hours of Support Work with AI in a Ticketing System

2025年09月17日に「Dev.to」が公開したITニュース「How We Saved 600 Hours of Support Work with AI in a Ticketing System」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

顧客サポートのチケットシステムにAIを導入し、業務を大幅に効率化した。AIが問い合わせの感情分析、根本原因特定、自動タグ付け、返信下書き作成などを行い、手作業を削減した。簡単な案件はAIが自動で対応し、人間は複雑な案件に集中できる環境を整備した。合計で600時間のサポート業務を削減。

ITニュース解説

顧客からのフィードバックは、ビジネスにとって非常に重要な情報源である。製品やサービスが市場で成功するかどうかは、顧客がレビュー欄に残す評価や意見、時には不満、時には感謝の言葉に大きく左右される。これらは、製品が順調に進んでいるのか、それとも問題を抱えているのかを示す貴重な信号だからだ。しかし、近年、顧客からの問い合わせやフィードバックの量は爆発的に増加しており、これを手作業で処理することは現実的ではなくなっている。膨大な量のフィードバックを効率的に管理し、すべての顧客に迅速かつ一貫性のある対応を提供することは、現代のビジネスにおける必須事項である。なぜなら、顧客の75%は優れたサービスに対してならより多く支払う意思があり、一方で43%の顧客は一度の悪いサポート経験で二度と購入しないとされているからだ。

このような課題に対応するために存在するのが、「チケット管理システム」というITツールである。このシステムは、顧客からの問い合わせ(メール、アプリストアのレビューなど)を受け付け、それぞれを「チケット」という単位で管理し、担当者に割り当て、進捗状況を追跡し、最終的な解決までを記録する。しかし、従来のシステムには、「様々なチャネルからのフィードバックを一元的に収集できない」「分析機能と自動化機能が統合されていない」といった課題が残されていた。

そこで、とあるクライアント企業であるMalpa Gamesは、これらの課題を解決するため、レビュー収集と分析機能を統合した独自のチケット管理システムを構築した。さらに、このシステムにAI(人工知能)を組み込むことで、定型的なサポート業務を削減し、チーム全体の生産性を向上させることを目指した。

AIをチケット管理システムに組み込むことで、具体的にいくつかの重要な課題を解決しようとした。一つ目は、顧客のフィードバックの「感情」を検出することである。つまり、レビューが肯定的(ポジティブ)なのか、否定的(ネガティブ)なのか、あるいは中立的なのかをAIが判断する。これにより、怒っている顧客からの問い合わせを優先的に処理したり、満足している顧客からの問い合わせを迅速に完了させたりすることが可能になる。二つ目は、ネガティブなフィードバックの「根本原因」を特定することである。例えば、ゲームがクラッシュするバグに関するものなのか、広告表示の問題なのか、といった原因をAIが自動で分析することで、製品開発チームはどこを改善すべきか具体的なヒントを得られる。これは、まるでAIが無料の品質保証(QA)担当者のように機能するのと同じである。三つ目は、レビューに「自動でタグを付ける」ことである。手作業でレビューを分類する手間を省き、後の分析を容易にする。そして四つ目は、定型的な問い合わせに対して「返信文のドラフトを作成する」、あるいは既存のテンプレートから最適なものを選択して「自動返信する」ことである。これにより、人間が対応する必要があるのは、より複雑で共感を伴う対応が求められるチケットのみとなり、サポート担当者は重要な業務に集中できるようになる。

このAIシステムの開発にあたっては、ChatGPTとGeminiという二つの異なる大規模言語モデル(LLM)を並行して導入し、どちらのモデルがより正確に分類し、適切な返信スタイルを生成できるかを比較検討した。これにより、将来的には最適なモデルを選定する狙いがある。

AIによるチケット自動化は、最初から全てをAIに任せるのではなく、効果的でシンプルな部分から導入された。例えば、星評価だけでテキストが一切ない「空のチケット」や、短い肯定的で質問を含まないレビューは、AIが自動でクローズする仕組みである。AIはまず、チケットの内容をスキャンし、事前に設定されたルール(英語か日本語か、文字数はどのくらいか、評価は星いくつか、質問が含まれているかなど)に基づいて判断を行う。もし条件に合致すれば、AIは適切な返信テンプレートの中から一つを選び、顧客の言語で自動的に返信する。この際、同じ返信を繰り返すことで顧客に機械的な印象を与えないよう、一つのチケットグループに対して複数のテンプレートを用意し、AIがランダムに選択する工夫が施された。例えば、「星5つ、すべて素晴らしい!」というレビューに対しては、AIが「レビューありがとうございます!ゲームを楽しんでいただけて嬉しいです😊」といった返信を自動で送り、チケットを完了させる。これにより、人間が対応することなく、顧客は迅速かつフレンドリーな返信を受け取れる。

AIを導入するにあたり、AIにすべてを任せるのではなく、厳格な「自動化ルール」を設定したことも重要である。これらのルールは、対応する言語(サポート対象外の言語には自動返信しない)、テキストの長さ(短いものは自動、長いものは人間が対応)、評価の種類(ポジティブなレビューは自動、ネガティブなレビューは人間が対応)などに基づいて細かく設定されている。さらに、プロジェクト固有のルールも設定できるため、汎用的な対応だけでなく、個別のニーズにも対応できる。

このAIによるシステム統合がもたらした成果は顕著であった。導入から1年間で、AIは1万件の空のチケットと8千件の短いレビュー、合計1万8千件のチケットを自動で処理した。これは、全チケット数の約40%に相当する。通常、シンプルなチケット一つを人間が処理するには約2分かかるとされるため、AIがこれらの1万8千件のチケットを自動処理したことで、合計600時間ものサポート業務時間を節約できたことになる。これは、フルタイムのサポートマネージャーが約4ヶ月間働く時間に匹敵する、非常に大きな成果である。AIはコーヒーブレイクを取ることなく、休むことなく働き続けたのである。

このAIによるサポート自動化の取り組みから、三つの重要な教訓が得られた。第一に、たとえ「シンプルな自動化」であっても、大量に発生する定型業務をAIに任せることで、サポートチームの負担を大幅に軽減し、顧客への応答時間を安定させることができる。第二に、AIが顧客の感情やフィードバックの根本原因を分類することで、サポートチームだけでなく、製品開発チームも改善のための具体的な洞察(インサイト)を得られる。これは、単なるサポート効率化に留まらない、ビジネス全体への貢献である。第三に、AIは人間を完全に「置き換える」ものではなく、人間の能力を「拡張する」ツールとして機能するという点である。AIが定型業務を代行することで、人間は共感を必要とする複雑な顧客対応や、より戦略的な業務に集中できるようになる。

今後は、AIの活用をさらに高度化させる計画である。例えば、将来のワークロードを予測したり、チケットを自動で適切な担当者にルーティングしたり、既存の知識ベースや顧客データに基づいて動的に回答を生成したりすることなどが考えられている。これらの機能が実現すれば、AIは単なる補助ツールではなく、サポート部門の規模を拡大するための強力な戦略的武器となるだろう。

関連コンテンツ

関連IT用語

【ITニュース解説】How We Saved 600 Hours of Support Work with AI in a Ticketing System | いっしー@Webエンジニア