アナリティクス(アナリティクス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アナリティクス(アナリティクス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アナリティクス (アナリティクス)
英語表記
analytics (アナリティクス)
用語解説
アナリティクスとは、収集した様々なデータを分析し、そこからビジネスに有益な知見や洞察を導き出し、合理的な意思決定や将来の予測に活用するための一連のプロセスや活動全般を指す。単にデータを集計してグラフ化する「データ分析」とは異なり、アナリティクスは分析結果を基に「なぜそうなったのか」という原因の究明や、「次に何をすべきか」という具体的なアクションプランの策定までを含む、より広範で実践的な概念である。その目的は、過去の出来事を理解し、現在の状況を正確に把握し、未来に起こりうる事象を予測することで、勘や経験だけに頼らないデータ駆動型の意思決定を実現することにある。システム開発においても、ユーザーの利用動向を分析してサービスの改善点を洗い出したり、システムの障害ログを分析して将来の障害発生を予測したりするなど、その活用範囲は多岐にわたる。
アナリティクスは、その分析の目的と技術的な高度さによって、一般的に4つの段階に分類される。第一段階は「記述的アナリティクス」である。これは「過去に何が起こったか」を明らかにするもので、最も基本的なアナリティクスである。日々の売上レポートやWebサイトのアクセス解析、顧客の年齢層別構成比の可視化などがこれに該当する。ビジネスインテリジェンス(BI)ツールなどを活用してデータを集計・可視化し、ビジネスの現状を正確に把握することが主目的となる。第二段階は「診断的アナリティクス」であり、「なぜそれが起こったのか」という原因を掘り下げる。記述的アナリティクスによって明らかになった事象、例えば「特定の商品の売上が急に落ち込んだ」という事実に対して、その原因を究明する。広告データ、競合の動向、顧客のレビュー、季節的要因など、関連する複数のデータを組み合わせて分析し、事象の背後にある因果関係や相関関係を探っていく。第三段階は「予測的アナリティクス」で、「将来何が起こるか」を予測する。過去のデータパターンを統計モデルや機械学習アルゴリズムに学習させ、未来の数値を予測する。顧客の離反予測、製品の需要予測、設備の故障予知などが典型的な例である。これにより、企業は将来のリスクや機会に備えることが可能になる。そして最も高度な第四段階が「処方的アナリティクス」である。これは「何をすべきか」という最適な打ち手を提示する。予測的アナリティクスの結果を踏まえ、特定の目標を達成するために最も効果的なアクションは何かをシミュレーションや最適化技術を用いて導き出す。例えば、予測された需要に応じて在庫量を自動で最適化したり、個々の顧客に最も響くであろうキャンペーンを自動で推奨したりするシステムがこれにあたる。
アナリティクスを実践するプロセスは、体系的な手順を踏んで進められる。まず「課題設定」から始まり、ビジネス上の何を解決したいのかを具体的かつ測定可能な問いとして定義する。次に、その課題解決に必要なデータを社内外の様々なソースから「データ収集」する。収集された生データには欠損や誤りが含まれることが多いため、「データ前処理」として、分析可能な形式にデータを整理・加工する工程が不可欠である。この前処理は、アナリティクスプロジェクト全体の品質と成否を左右する重要な作業である。準備が整ったデータを用いて、目的に応じた手法で「データ分析」を行い、モデルを構築する。分析から得られた結果は、専門家でなくても理解できるようグラフやダッシュボードを用いて「可視化」し、関係者間で共有する。最後に、得られた洞察に基づいて具体的な施策を実行し、その効果を再びデータで「評価」する。この一連のサイクルを継続的に回すことで、組織のデータ活用能力は向上していく。
システムエンジニアは、このアナリティクスのプロセス全体を技術的に支える重要な役割を担う。大量のデータを効率的に蓄積・管理するためのデータウェアハウスやデータレイクといったデータ基盤の設計・構築、様々なシステムからデータを集めて分析可能な状態にするためのデータパイプライン(ETL/ELT処理)の開発、分析者が使用する分析環境の構築・運用などが主な業務となる。また、開発された予測モデルを既存の業務アプリケーションに組み込み、分析結果がリアルタイムでビジネスに活用される仕組みを実装することも求められる。このように、アナリティクスは単なる分析者の仕事ではなく、データを扱う高度な技術力を持つシステムエンジニアの貢献があって初めて成り立つものである。