【ITニュース解説】Three reasons why computer science is no longer sexy - for now
2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Three reasons why computer science is no longer sexy - for now」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
かつて安定職とされたIT業界の就職が厳しくなっている。コロナ禍後の大量解雇、AIによる開発効率化、卒業生の急増が原因だ。これらの要因が重なり、特にジュニア層の求人が減少し、厳しい市場環境が続いている。(117文字)
ITニュース解説
かつてコンピュータサイエンスを学び、IT業界で働くことは、高い給与と安定した雇用が約束された魅力的なキャリアパスであった。多くの企業が優秀な人材を求め、学生は卒業を待たずに採用されることも珍しくなかった。しかし、ここ数年でその状況は一変し、特にIT業界を目指す人々にとって厳しい時代が訪れている。この変化の背景には、主に3つの大きな要因が複雑に絡み合っている。
第一の要因は、大手IT企業による大規模な人員削減である。新型コロナウイルスのパンデミック中、世界中の人々が在宅での勤務や生活を余儀なくされた。これにより、オンライン会議システムや電子商取引、クラウドサービスといったIT関連の需要が爆発的に増加した。Google、Meta、Microsoftといった巨大テック企業は、この需要拡大に対応するため、前例のない規模でエンジニアの採用を加速させた。しかし、パンデミックが収束に向かい、人々がオフィスや屋外での活動を再開すると、急増したITサービスの需要は落ち着きを見せ始めた。企業は、パンデミック中に過剰に雇用した人員を抱えることになり、同時に予測される経済成長の鈍化に備えるため、大規模な人員削減、いわゆるレイオフに踏み切った。その結果、2020年代半ばには多くのIT技術者が職を失った。その多くが経験豊富なエンジニアであったため、彼らが新たな職を求めて労働市場に流れ込むことになった。
第二の要因は、生成AI技術の急速な進化と普及である。ChatGPTのような対話型AIや、GitHub Copilotのようなコーディング支援ツールの登場は、ソフトウェア開発の現場に大きな変化をもたらした。これらのAIツールは、プログラマーが指示を与えるだけで、定型的なコードや基本的な機能を自動で生成することができる。従来であれば、経験の浅いジュニアレベルのプログラマーが担当していたような作業の多くを、AIが代替できるようになったのである。このため、企業側は「AIを使えば生産性が向上し、ジュニアレベルの人材は以前ほど必要ない」と考えるようになった。実際に多くの企業がAIコーディングツールを導入し、開発プロセスの効率化を図っている。しかし、AIが生成するコードは必ずしも完璧ではなく、セキュリティ上の脆弱性を含んでいたり、テストが不十分であったり、予期せぬ動作を引き起こしたりといった新たな課題も生じている。それでもなお、多くの企業はAIの活用を優先し、ジュニアレベルの採用を控える傾向を強めている。
第三の要因は、コンピュータサイエンス分野の卒業生の急増である。IT業界の成長性と魅力に惹かれ、この分野を専攻する学生の数は過去10年足らずで倍以上に増加した。その結果、毎年多くの新卒者がITエンジニアとしてのキャリアをスタートさせようと市場に参入してくる。しかし、彼らが直面しているのは、非常に厳しい就職環境である。市場には、第一の要因で述べたレイオフによって職を失った経験豊富なエンジニアが多数存在している。企業から見れば、教育コストがかからず即戦力となる経験者を採用する方が合理的であるため、未経験の新卒者が採用される枠は必然的に狭くなる。時には、職を求めている経験者が、本来は新卒者向けであるはずのジュニアレベルのポジションに応募するケースさえ見られる。こうして、AIによってジュニアの仕事が減少し、経験豊富な求職者が市場にあふれる中で、新卒者の供給だけが増え続けるという需給のミスマッチが深刻化している。
これら3つの要因、すなわち「コロナ禍後の大規模な人員削減」「生成AIの普及」「IT人材の供給過多」が同時に発生したことで、かつての花形であったIT業界の雇用環境は大きく変動した。しかし、このようなIT雇用の浮き沈みは、歴史的に見れば今回が初めてではない。2000年代初頭のドットコムバブル崩壊や、2008年から2009年にかけての世界金融危機の際にも、同様の調整期間が存在した。こうした周期的な変動の一部であるという見方もできる。また、AIはエンジニアの仕事を完全に奪うものではなく、むしろ反復的な作業を自動化し、エンジニアがより創造的で高度な問題解決に集中できるようにするための強力なツールであると捉えるべきだ。この困難な時期を乗り越えた先には、IT業界全体がAIを使いこなし、より生産的で強固な産業へと進化していく未来が期待される。