【ITニュース解説】Event-Sourced State Machines in Orleans
2025年09月03日に「Dev.to」が公開したITニュース「Event-Sourced State Machines in Orleans」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Orleansでイベントソーシングされたステートマシンを実装する方法を紹介。Statelessライブラリで状態遷移を定義し、Orleansの仮想アクターとして実行。イベントを永続化し、状態を再構築することで、監査やリプレイが可能になる。また、タイマーやリマインダーを使ったタイムアウト処理、ストリームによる状態遷移の監視、ストレージの選択肢についても解説。
ITニュース解説
この記事では、Orleansという分散アプリケーションフレームワークの中で、イベントソーシングとステートマシンを組み合わせることで、より堅牢で追跡可能なシステムを構築する方法について解説する。特にシステムエンジニアを目指す初心者に向けて、その概念と実装の手順をわかりやすく説明する。
まず、従来のステートマシン(状態遷移機械)の問題点として、状態の変更履歴が残らないため、後から「何が起こったのか」を追跡するのが難しい点が挙げられる。イベントソーシングは、この問題を解決するために、状態の変化をすべてイベントとして記録する。これにより、システムの監査、リプレイ(過去の状態への復元)、デバッグが容易になる。
Orleansは、仮想アクターモデルを提供するフレームワークであり、ステートマシンをOrleansの「Grain(グレイン)」として実装することで、分散環境でのステート管理を効率的に行うことができる。Grainは、一意のIDを持つ独立したアクターであり、並行処理や状態の永続化などの機能を提供する。
記事では、Statelessというライブラリを利用して、ステートマシンを簡潔に定義する方法を紹介する。Statelessは、状態、トリガー(状態遷移のきっかけとなるイベント)、および状態遷移のルールを型安全に記述できるAPIを提供する。
具体的な実装例として、注文処理システムを題材に、イベントソーシングされたステートマシンの構築手順をステップごとに解説する。
- 状態、トリガー、イベントの定義: まず、注文の状態(Created, Paid, Shipped, Cancelled)、トリガー(Pay, Ship, Cancel)、イベント(OrderPaid, OrderShipped, OrderCancelled)を定義する。イベントは、発生日時などの情報を持つレコードとして表現する。
- イベントソーシングされたステートマシンの実装: Orleansの
EventSourcedStateMachineGrainクラスを継承し、ステートマシンを実装する。ConfigureEventSourcingメソッドで、イベントソーシングのオプション(自動コミット、スナップショット間隔、べき等性の有効化など)を設定する。BuildStateMachineメソッドで、Statelessライブラリを使用してステートマシンのルールを定義する。 - トリガーとイベントのマッピング: 外部からのトリガー(
Pay,Ship,Cancel)を受け取り、対応するイベントを生成してFireAsyncメソッドでステートマシンに投入する。FireAsyncメソッドは、状態遷移を実行し、イベントを永続化する。 - 状態の復元: イベントログから状態を再構築するために、
Applyメソッドを実装する。Applyメソッドは、イベントを受け取り、現在の状態を更新する。 - クライアントからの呼び出し: Orleansクライアントを使用してGrainを取得し、トリガーを発行することで、状態遷移を実行する。
- タイムアウト処理: OrleansのReminder機能を利用して、未出荷の注文を自動的にキャンセルするなどのタイムアウト処理を実装する。Reminderは、Grainが非アクティブ化されても持続するため、確実なスケジュール処理が可能になる。
- 状態遷移のストリーミング: Orleans Streamsを利用して、状態遷移の履歴をリアルタイムに監視するためのストリームを構築する。これにより、監査やダッシュボードの作成が容易になる。
- ストレージの選択: 状態のスナップショットを保存するStateStorageプロバイダと、すべてのイベント履歴を保存するLogStorageプロバイダを選択する。Load Profileと監査要件に基づいて適切なストレージを選択する。
記事では、べき等性の重要性についても強調する。べき等性とは、同じ操作を複数回実行しても結果が変わらない性質のことである。分散システムでは、ネットワークの問題などで操作がリトライされる可能性があるため、べき等性を確保することが重要になる。
最後に、本番環境にデプロイする前に確認すべきチェックリストとして、べき等性キーの設定、スナップショット間隔の調整、Reminderの使用、状態遷移のロギング、ガード条件のテストなどを挙げる。
イベントソーシングとステートマシンの組み合わせは、複雑なビジネスロジックを持つシステムの開発において、大きなメリットをもたらす。この記事で紹介されたOrleansのEventSourcedStateMachineGrainを利用することで、開発者は、イベントソーシングとステートマシンの実装を容易に行い、堅牢で追跡可能なシステムを構築できる。