【ITニュース解説】My 18-Month Journey Building a SaaS App
2025年09月09日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「My 18-Month Journey Building a SaaS App」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
個人開発者が写真や動画を意味で検索できるSaaSを18ヶ月かけて開発。当初の予定を大幅に超えたが、インフラ、スケーラビリティ、AWS、Kubernetesなど、Webサービス構築に必要な実践的技術を深く学んだ。(118文字)
ITニュース解説
ある個人開発者が、18ヶ月という長い期間をかけて一つのSaaSアプリケーションを構築した経験談が公開され、多くのエンジニアの注目を集めている。この「RekoSearch」と名付けられたアプリケーションの開発ストーリーは、これからシステムエンジニアを目指す人々にとって、現代のWebサービス開発の現実と、そこで求められる技術的な知識を学ぶための貴重な事例と言える。
RekoSearchは、写真、動画、ドキュメント、音声といった様々な形式のファイルを、その「意味」に基づいて検索できるサービスである。これは「セマンティック検索」と呼ばれる技術で、従来のファイル名やテキスト情報に基づくキーワード検索とは一線を画す。例えば、ユーザーが「夕焼けの海」と検索すると、ファイル名にその言葉が含まれていなくても、AIが画像や動画の内容を解析し、夕焼けの海が写っているものを探し出してくれる。このような高度な機能を実現するためには、機械学習モデルを利用したデータ解析技術が不可欠となる。
このプロジェクトの特筆すべき点は、開発者が当初3〜4ヶ月で完成すると見積もっていたものが、最終的に18ヶ月もの期間と6万行に及ぶコードを要したという事実である。この大幅な計画の遅れは、個人のプロジェクトにおける見積もりの難しさを示すと同時に、SaaS(Software as a Service)開発の複雑さを物語っている。SaaSとは、ソフトウェアをユーザーのコンピュータにインストールさせるのではなく、インターネット経由でサービスとして提供する形態を指す。この形態のサービスを構築するには、単にプログラムを書くコーディングのスキルだけでは不十分であり、サービスを安定して動かし続けるための様々な要素を考慮しなければならない。
開発者はこの経験を通じて、特にインフラストラクチャ、スケーラビリティ、そしてAWSやKubernetesといった特定の技術について深く学んだと述べている。インフラストラクチャとは、アプリケーションを動かすための土台となるサーバー、ネットワーク、ストレージなどの総称である。かつては物理的なサーバーを購入し、自社で管理するのが一般的だったが、現在ではAWS(Amazon Web Services)に代表されるクラウドサービスを利用するのが主流だ。AWSを使えば、必要なときに必要な分だけサーバーやデータベースなどのリソースを借りることができ、物理的な設備投資なしに大規模なサービスを構築・運用することが可能になる。
スケーラビリティは、SaaS開発において極めて重要な概念である。これは、サービスの利用者数やデータ量が増加した際に、それに合わせてシステムの処理能力を柔軟に拡張できる能力を指す。例えば、サービスが人気を博してアクセスが急増したときに、サーバーが処理しきれずにサービスが停止してしまう事態を防ぐ必要がある。そのためには、負荷に応じて自動的にサーバーの数を増減させるなど、拡張性を見越したシステム設計が求められる。RekoSearchのような個人開発のプロジェクトであっても、将来的な成長を見据えてスケーラビリティを考慮することは、サービスの成功に不可欠な要素となる。
このスケーラビリティを実現するための現代的な技術として、開発者はKubernetes(クバネティス)を挙げている。Kubernetesは、コンテナ化されたアプリケーションの管理を自動化するためのツールである。「コンテナ」とは、アプリケーションを動かすために必要なプログラムやライブラリなどを一つにまとめたパッケージのようなもので、どんな環境でも同じように動作させることができるのが特徴だ。サービスが複数の機能(コンテナ)で構成されるようになると、それらの管理は非常に複雑になる。Kubernetesは、これらの多数のコンテナを効率的に配置・運用し、特定のコンテナに障害が発生した際には自動で再起動させたり、アクセスが増えた際にはコンテナの数を自動で増やしたりといった役割を担う。AWSのようなクラウド環境でKubernetesを利用することは、現代的なWebサービスを安定して運用するための強力な組み合わせとなっている。
この開発者は、自身の学びの集大成として、開発したソースコードやシステムの構成を示す設計図をGitHub上で公開している。これは、他のエンジニア、特に初心者が実際のプロジェクトの構造を理解するための非常に価値のある教材となる。公開された手書きの図を見れば、複雑なシステムがどのようなコンポーネントで構成され、それらがどのように連携して一つのサービスとして機能しているのかを視覚的に学ぶことができる。このプロジェクトは、単一のプログラム開発に留まらず、クラウド、コンテナ、データベース、ネットワークといった多様な技術を組み合わせて一つのSaaSを構築するという、現代のシステム開発の縮図を示している。この18ヶ月の道のりは、システムエンジニアが身につけるべき知識が、プログラミング言語の習得だけでなく、サービス全体を設計・構築・運用するための幅広い技術領域に及ぶことを明確に教えてくれる事例である。