【ITニュース解説】いまさら聞けない「OSI参照モデル」の利点と欠点 その使いどころは?
2025年09月07日に「TechTargetジャパン」が公開したITニュース「いまさら聞けない「OSI参照モデル」の利点と欠点 その使いどころは?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
OSI参照モデルは、複雑な通信の仕組みを7階層に分けて体系的に理解するための考え方だ。現実の通信とは異なる欠点もあるが、ネットワークの全体像を把握し、トラブルシューティングの基礎となるため学ぶ価値は高い。(116文字)
ITニュース解説
コンピュータネットワークの仕組みを理解する上で、基本となる考え方に「OSI参照モデル」がある。これは、国際標準化機構(ISO)が策定した、データ通信の機能を7つの階層に分割して定義したモデルである。このモデルが作られる以前は、異なるメーカーのコンピュータ同士が通信するための統一されたルールがなく、互換性の問題が大きな課題であった。OSI参照モデルは、この問題を解決し、あらゆる機器が共通のルールに基づいて通信できるようにするための設計指針として考案された。
OSI参照モデルは、通信の複雑なプロセスを7つの機能的な層(レイヤー)に分けて考える。最上位の第7層は「アプリケーション層」で、Webブラウザやメールソフトなど、ユーザーが直接操作するアプリケーションが通信を行うためのルールを定める。その下の第6層「プレゼンテーション層」は、データの表現形式を扱う。例えば、文字コードやデータの圧縮、暗号化といった処理を行い、異なるシステム間でもデータが正しく解釈されるようにする。第5層「セッション層」は、通信の開始から終了までの一連の流れ(セッション)を管理する役割を担う。
第4層「トランスポート層」は、通信の信頼性を確保する重要な層である。データを相手に確実に、そして正しい順序で届けるための仕組みを提供する。代表的なプロトコルとしてTCPがあり、データが途中で失われた場合には再送を要求するなどの制御を行う。第3層「ネットワーク層」は、ネットワーク上の最終的な目的地までデータを届けるための経路選択(ルーティング)を担当する。インターネット上で個々のコンピュータを識別するためのIPアドレスがこの層で機能する。
下位の層に移ると、第2層「データリンク層」は、同じネットワークに接続された隣接する機器間でのデータ転送ルールを定める。物理的なアドレスであるMACアドレスを用いて、直接つながった機器へのデータ受け渡しを管理する。そして最下層の第1層「物理層」は、データを電気信号や光信号、電波などに変換し、ケーブルや無線といった物理的な媒体を通じて伝送する役割を持つ。これら7つの層はそれぞれが独立した役割を持ち、隣接する上下の層とのみ決められた手順で情報をやり取りすることで、全体として複雑な通信を実現している。
OSI参照モデルを学ぶ最大の利点は、ネットワークの全体像を体系的に理解するための共通の枠組み、いわば「共通言語」として機能する点にある。ネットワークに障害が発生した際、このモデルに沿って考えることで、問題の原因がどこにあるのかを効率的に切り分けることができる。例えば、Webページが表示されない場合、ケーブルの接続不良(物理層の問題)なのか、IPアドレスの設定ミス(ネットワーク層の問題)なのか、あるいはWebサーバーのソフトウェアの問題(アプリケーション層の問題)なのかを段階的に調査する指針となる。このように、トラブルシューティングの思考プロセスを整理する上で非常に役立つ。
一方で、OSI参照モデルには欠点も存在する。まず、7つという階層は理論的には整理されているが、現実の通信プロトコルを厳密に当てはめるには複雑すぎるという側面がある。特にプレゼンテーション層やセッション層は、多くのアプリケーションで明確に分離されず、アプリケーション層に機能が統合されていることが多い。また、現在インターネットで広く利用されている通信プロトコル群は、OSI参照モデルよりもシンプルな「TCP/IPモデル」に基づいている。TCP/IPモデルは、OSI参照モデルが標準化される以前から事実上の標準として普及したため、現実世界ではOSI参照モデルそのものが直接実装されることはほとんどない。
では、なぜ今もなおOSI参照モデルを学ぶ価値があるのか。その使いどころは、具体的な実装の設計図としてではなく、ネットワーク技術を理解し、問題を分析するための「思考の道具」として活用することにある。TCP/IPモデルは現実の実装に近いが、OSI参照モデルはより機能分割が詳細なため、各機能の役割を学習する上で優れている。新しいネットワーク技術が登場したとき、それがOSI参照モデルのどの層に相当する機能を持つのかを考えることで、その技術の役割や位置づけを素早く理解できる。システムエンジニアにとって、このモデルはネットワークという複雑な世界を見通すための地図であり、他のエンジニアと円滑にコミュニケーションをとるための基盤知識として、その重要性は今も変わらない。