【ITニュース解説】Rate Limiting Algorithms: Concepts, Use Cases, and Implementation Strategies
2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Rate Limiting Algorithms: Concepts, Use Cases, and Implementation Strategies」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
サーバーへの過剰なアクセスを防ぐ「レート制限」は、システムの安定稼働に不可欠な技術だ。DDoS攻撃などの不正利用からサービスを守り、全ユーザーに公平な利用環境を提供することが目的。実装場所や方式は用途に応じて選択される。
ITニュース解説
レートリミットとは、特定の時間内にクライアントがAPIやサービスにアクセスできる回数を制御する技術である。ここでいうクライアントとは、ウェブサイトを閲覧するユーザーのブラウザ、スマートフォンのアプリ、あるいは他のシステムなど、サービスに要求を送るあらゆるものを指す。この仕組みは、現代のWebサービスやアプリケーションを安定して安全に運用するために不可欠な要素となっている。
レートリミットが重要である理由は大きく分けて三つある。第一に、悪意のある攻撃からの保護である。例えば、特定のサービスに対して短時間に大量のリクエストを送りつけて機能を停止させるDDoS攻撃や、パスワードを総当たりで試行するブルートフォース攻撃などがこれにあたる。レートリミットを導入することで、特定のIPアドレスやユーザーからの異常な数のリクエストを検知し、ブロックすることが可能になる。第二に、システムの過負荷を防ぎ、安定性を維持する役割がある。予期せぬトラフィックの急増や、特定の機能にアクセスが集中した場合でも、リクエスト数を制限することでサーバーが処理しきれなくなる事態を避け、システム全体のダウンを防ぐ。第三に、リソースの公平な利用を保証することである。多数のユーザーが利用するサービスにおいて、一部のユーザーがリソースを独占してしまうと、他のユーザーの体験が損なわれる。レートリミットは、全てのユーザーが公平にサービスを利用できる環境を提供する。
レートリミットは様々な場面で適用される。例えば、外部の開発者向けに公開されている公開APIでは、不正利用や意図しない過剰なアクセスを防ぐために必須である。ユーザー認証を行うログイン画面では、ブルートフォース攻撃を防ぐために試行回数を制限する。クレジットカード決済などの決済ゲートウェイでは、不正な取引を大量に送りつけるスパム行為を防止する。また、ウェブサイトの情報を自動で収集するウェブスクレイピングに対しても、過度なデータ収集を制限するために用いられる。
一方で、レートリミットの適用が不適切なケースも存在する。例えば、システム内部で連携しあうマイクロサービス間の通信にレートリミットを導入すると、本来スムーズであるべき処理に不要な遅延やボトルネックを生み出す可能性がある。また、オンラインゲームやリアルタイムチャットアプリのように、常に低遅延での通信が求められるシステムでは、リクエストを制限することがサービスの品質を著しく低下させることにつながる。同様に、医療システムや金融取引、緊急通報サービスといった社会的に重要なサービスでは、いかなるリクエストも抑制すべきではない。ただし、これらのシステムでレートリミットを適用しない場合は、突発的なトラフィックの増加に対応できるよう、サーバーの能力を自動的に増強するオートスケーリングなどの仕組みを堅牢に構築しておく必要がある。
レートリミットを実装する場所は、システムの設計によっていくつかの選択肢がある。一つはAPIゲートウェイに実装する方法である。APIゲートウェイは、すべてのリクエストが通過するシステムの入り口であり、ここにレートリミットを置くことで、複数のサービスに対して一元的に制御を適用できる。悪意のあるトラフィックをアプリケーションに到達する前にブロックできるという利点があるが、一方で、サービスごとに細かいルールを設定する柔軟性に欠け、ゲートウェイ自体が故障するとシステム全体に影響が及ぶ単一障害点になるリスクもある。二つ目は、各アプリケーションの隣で動作するサイドカーコンテナに実装する方法である。これにより、サービス単位での柔軟な制御が可能になるが、デプロイの構成が複雑になる。三つ目は、アプリケーションのコード内に直接実装する方法である。これは最も柔軟性が高く、ビジネスロジックに合わせた複雑な制御が可能だが、開発や保守のコストが高くなり、アプリケーション自体が直接攻撃トラフィックにさらされるという欠点がある。多くの場合、APIゲートウェイでの大まかな制限と、特に重要な機能に対するアプリケーションレベルでの細かい制御を組み合わせる、多層的な防御が最も効果的だとされている。
レートリミットを実装したAPIは、その状態をクライアントに伝えるための標準的な方法を提供することが推奨される。具体的には、HTTPレスポンスに特定のヘッダーとステータスコードを含める。例えば、制限を超えたリクエストに対しては、「429 Too Many Requests」というステータスコードを返す。同時に、「X-RateLimit-Limit」ヘッダーで設定された上限回数、「X-RateLimit-Remaining」ヘッダーで現在残っているリクエスト回数、「X-RateLimit-Reset」ヘッダーで制限が解除される時刻を伝える。これにより、APIを利用するクライアント側は、いつ、どのくらいの頻度でリクエストを再試行すればよいかを判断でき、無駄な通信を避けることができる。
レートリミットを実現するためのアルゴリズムにはいくつかの種類がある。最もシンプルな「固定ウィンドウ」方式は、1分間や1時間といった固定の時間枠を設け、その中のリクエスト数を数える。実装は容易だが、時間枠の切り替わり直前にリクエストが集中する可能性がある。「スライディングウィンドウ」方式は、常に直近の一定期間(例:過去60秒間)のリクエスト数を集計することで、より滑らかな制限を実現する。「リーキーバケット」方式は、リクエストを一旦キューに溜め、一定のペースで処理していくモデルである。これにより、出力されるリクエストのレートが安定するが、一時的なリクエストの急増(バースト)には対応しにくい。「トークンバケット」方式は、一定のペースで生成されるトークンをリクエストごとに消費する仕組みである。トークンが溜まっていれば、その分だけバースト的なリクエストも許容できるため、柔軟性が高く広く採用されている。
結論として、レートリミットは、APIやサービスを様々な脅威から守り、安定したパフォーマンスを確保するための極めて重要な技術である。どのアルゴリズムを選択し、システムのどこに実装するかは、そのサービスの特性やビジネス要件によって異なるため、慎重な検討と設計が求められる。