【ITニュース解説】Synthesizing Object-Oriented and Functional Design to Promote Re-Use

2025年09月07日に「Hacker News」が公開したITニュース「Synthesizing Object-Oriented and Functional Design to Promote Re-Use」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

オブジェクト指向と関数型プログラミングの利点を統合し、コードの再利用性を向上させる設計手法を提案。データ構造を管理するオブジェクト指向と、処理を組み合わせやすい関数型の特徴を活かし、柔軟で効率的な開発を実現する。

ITニュース解説

ソフトウェア開発において、一度作成したプログラムの部品を別の場所でも活用する「再利用性」は、開発の効率と品質を向上させるための非常に重要な概念である。この再利用性を高めるためのプログラム設計手法として、歴史的に「オブジェクト指向」と「関数型」という二つの有力な考え方が存在してきた。これらはしばしば対立するものとして語られてきたが、近年のプログラミング言語の多くは両方の特徴を取り入れており、両者をいかにうまく融合させるかが現代のソフトウェア設計における重要なテーマとなっている。

オブジェクト指向設計は、データとそのデータを操作する手続きを「オブジェクト」という一つのまとまりとして扱う考え方である。例えば、「自動車」というオブジェクトを考えると、それには「色」「速度」といったデータと、「走る」「止まる」といった操作が含まれる。この設計の大きな利点は、新しい種類のデータ、つまり新しいオブジェクトを追加することが容易である点にある。設計図である「クラス」を新たに追加するだけで、システムに新しい概念を導入できる。例えば、「自動車」クラスの他に「自転車」クラスを追加することは比較的簡単に行える。しかし、その一方で、新しい操作をシステム全体に追加することは不得意な側面を持つ。もし「ライトを点灯する」という新しい操作を追加する場合、「自動車」クラスと「自転車」クラスの両方に、その操作を実装するための修正を加える必要が生じる。オブジェクトの種類が増えれば増えるほど、この修正作業は大規模かつ複雑になる可能性がある。

一方、関数型設計は、データ構造と、それを処理する「関数(操作)」を明確に分離して考えるアプローチである。データは単なる情報の集まりとして定義され、関数はそのデータを入力として受け取り、処理結果を返す役割を担う。この設計の利点は、オブジェクト指向とは対照的に、新しい操作を追加することが非常に容易である点にある。例えば、「自動車」と「自転車」のデータ構造に対して、「ライトを点灯する」という操作が必要になった場合、新しい関数を一つ追加するだけで対応できる。既存のデータ構造や他の関数に手を加える必要はない。しかし、このアプローチは新しい種類のデータを追加することには課題を抱えている。「自動車」と「自転車」に加えて、新たに「バイク」というデータ構造を追加する場合を考えてみよう。このとき、「走る」「止まる」「ライトを点灯する」といった、システムに存在するすべての関連関数に対して、「バイク」を処理するためのロジックを追加する修正が必要になる。

このように、オブジェクト指向は「新しいデータ型の追加」に強く、関数型は「新しい操作の追加」に強いという、互いに補完的でありながらトレードオフの関係にある。この、データ型と操作という二つの軸で、どちらの方向にも既存のコードを修正することなく容易に拡張したい、という課題は「Expression Problem」として知られ、長年ソフトウェア設計における難問とされてきた。この問題に対する一つの答えとして、オブジェクト指向と関数型の設計思想を統合し、両者の長所を活かすアプローチが提案されている。その核心は、データと操作を硬直的に一体化させたり、完全に分離したりするのではなく、両者の関係性をより柔軟に捉えることにある。具体的には、基本としてデータ構造と操作を分離しつつ、それらを組み合わせるための仕組みを導入する。これにより、普段は関数型のように操作を自由に追加でき、必要に応じてオブジェクト指向のように特定のデータと操作を強く結びつけて扱うことが可能になる。この考え方を実現する具体的な技術パターンとして、Visitorパターンなどが挙げられる。これは、データ構造の内部に手を加えることなく、外部から新しい操作を追加するための仕組みを提供するものである。

このアプローチにより、開発者はシステムの拡張が必要になった際に、それが新しいデータ型の追加なのか、新しい操作の追加なのかに応じて、最も適切な方法を選択できるようになる。結果として、変更に強く、再利用性の高い、より柔軟なソフトウェアシステムを構築することが可能となる。システムエンジニアを目指す上で、オブジェクト指向や関数型といった個別のパラダイムを学ぶことはもちろん重要だが、それらの本質的な長所と短所を理解し、固定観念にとらわれずに両者を組み合わせて課題を解決するという視点を持つことは、将来的に複雑で大規模なシステムを設計・開発する上で極めて価値のあるスキルとなるだろう。