Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】Rust 1.90リリース、LinuxのデフォルトリンカとしてLLDを採用

2025年09月19日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「Rust 1.90リリース、LinuxのデフォルトリンカとしてLLDを採用」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

Rustの新バージョン1.90がリリースされた。このバージョンから、Linux環境でプログラムを一つにまとめる役割を担う「リンカ」のデフォルトが、高速なLLDに変更された。これにより、Rustで書かれたLinuxプログラムのビルド速度が向上し、開発効率の改善が期待される。

ITニュース解説

Rust言語の最新版である1.90がリリースされた。この新しいバージョンで特に注目すべき変更点は、Linux環境におけるデフォルトのリンカとしてLLDが採用されたことだ。この変更がどのような意味を持ち、システムエンジニアを目指す人々にとってなぜ重要なのかを解説する。

まず、Rustというプログラミング言語について簡単に触れておこう。Rustは、高い安全性、優れたパフォーマンス、そして並行処理の容易さを特徴とする言語だ。メモリ安全性を保証しながらC++に匹敵する速度を発揮できるため、オペレーティングシステムやWebサーバー、組み込みシステムなど、多岐にわたる分野で注目を集めている。GoogleやMicrosoftなどの大手企業でも採用され、その利用は拡大し続けている。

ソフトウェア開発において、プログラマが書いた「ソースコード」が、実際にコンピュータ上で動く「実行ファイル」になるまでには、いくつかの重要な工程がある。この一連の流れを「ビルド」と呼ぶ。ビルドの主な工程は、「コンパイル」と「リンク」の二つだ。

コンパイルとは、人間が理解しやすいように書かれたソースコードを、コンピュータが直接理解できる「機械語」に近い形に変換する作業を指す。この段階で生成されるのは、まだ単独では実行できない「オブジェクトファイル」と呼ばれる中間的なファイルだ。プログラムが複数のソースファイルに分かれている場合、それぞれのソースファイルが個別にコンパイルされ、複数のオブジェクトファイルが生成される。

次に、これらのオブジェクトファイルを結合し、最終的な実行ファイルを生成する作業が「リンク」だ。このリンク作業を専門に行うソフトウェアが「リンカ」である。リンカの役割は非常に重要で、単に複数のオブジェクトファイルを一つにまとめるだけではない。プログラムが利用する外部の機能、例えば標準ライブラリ(文字列操作やファイル入出力など、多くのプログラムで共通して使われる機能の集まり)や、他の開発者が作ったライブラリの関数などを、自分のプログラムから呼び出せるように結びつける役割も担う。具体的には、プログラム中の関数呼び出しが、実際にライブラリ内のどのメモリ番地にある関数を指しているのかを解決し、実行時に正しく動作するようにアドレス情報を埋め込む作業を行う。このリンクが正しく行われないと、プログラムは正しく動作しない。

これまで、多くのLinux環境ではGNU Binutilsに含まれる「GNU ld」というリンカが広く使われてきた。しかし、Rust 1.90からは、Linux環境において「LLD」という新しいリンカがデフォルトで採用されたのだ。

LLDは、LLVMプロジェクトの一部として開発されているリンカで、その最大の特徴は「高速性」にある。LLDは、従来のリンカに比べてはるかに高速にリンク処理を完了できる。なぜLLDが高速なのかというと、設計段階から現代のマルチコアCPUの性能を最大限に引き出すように最適化されており、並列処理を積極的に利用しているためだ。また、メモリの使用効率も高く、大規模なプロジェクトでもスムーズに動作するよう工夫されている。

このLLDがRust 1.90でデフォルトのリンカとして採用されたことは、Rustで開発を行うシステムエンジニアにとって大きな恩恵をもたらす。最も直接的なメリットは、プログラムの「ビルド時間の大幅な短縮」だ。特に、コードの変更が多い開発フェーズや、大規模なプロジェクトで多数のファイルが絡む場合、あるいは継続的インテグレーション(CI)環境での自動ビルドなどにおいて、この時間の短縮は開発効率に劇的な改善をもたらす。開発者は、コードを修正するたびに、より短い時間で変更が反映された実行ファイルを生成し、テストできるようになるため、開発サイクル全体が加速し、より多くの時間をコードの品質向上や新機能の開発に費やせるようになる。

これまでは、RustでLLDを利用するには開発者自身がコンフィギュレーションファイルを編集するなど、手動での設定が必要な場合もあった。しかし、Rust 1.90からはLinux環境でデフォルトになったため、特別な設定なしにLLDの恩恵を受けられるようになる。これは、Rustの開発体験をよりスムーズで快適なものにするための重要な一歩と言えるだろう。

今回のLLD採用は、Rustが単に高機能な言語であるだけでなく、開発者の生産性向上にも深く配慮していることを示している。ビルド時間の短縮は、日々の開発作業において非常に大きな影響を与えるため、この変更はRustを扱うシステムエンジニアにとって、見過ごせない改善点となるはずだ。Rustは常に進化を続け、より良い開発環境を提供しようと努めている。この継続的な改善の姿勢が、Rustが今後も多くの開発者に選ばれ、システム開発の重要なツールとして成長していく原動力となるだろう。

関連コンテンツ