【ITニュース解説】From StackOverflow to Vibe Coding: The Evolution of Copy-Paste Development
2025年09月11日に「Dev.to」が公開したITニュース「From StackOverflow to Vibe Coding: The Evolution of Copy-Paste Development」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
StackOverflowでのコピペ開発からAIによるコード生成へ進化し、開発速度は向上した。しかし、AIが書いたコードは開発者自身が理解しにくく、デバッグが困難になる課題がある。この状況を受け、AIが生成したバグをAIが修正するデバッグツールの必要性が高まっている。
ITニュース解説
プログラミングの世界では、昔から他の人が書いたコードを再利用する文化が存在した。しかし、そのコードをどこから、どのように手に入れて使うのかは、時代の変化と共に大きく変わってきた。これは、まるで料理のレシピを誰かに聞いたり、本で見たり、あるいはAIに全て任せたりするような変化だ。
2008年から2020年頃は、「Stack Overflow」というウェブサイトが、多くのプログラマーにとっての知恵の宝庫だった。開発者は、自分が直面した技術的な問題の解決策を探し、他の経験豊富な開発者が投稿したコードの断片をコピーして、自分のプログラムに貼り付けて使っていた。この時代には、解決策として提示されたコードに対して、他の開発者たちが「このコードはもっとこうするべきだ」「なぜこの方法が悪いのか」といった議論をコメント欄で活発に行っていた。これにより、コードをただコピーするだけでなく、そのコードがなぜ動くのか、あるいはなぜ問題があるのかといった背景や理由を学ぶ機会があった。
しかし、2021年頃になると、「GitHub Copilot」のようなAIを活用したコード補完ツールが登場した。これは、開発者がコードを書き始めると、AIがその文脈を読み取って、次に書くべきコードや関数全体を自動的に提案してくれるものだ。あたかもAIが隣に座って、開発者の思考を先回りしてコードを書いてくれるかのようだった。これにより、開発者は「自分がコードを書いている」という感覚を保ちながらも、実際にはAIが生成したコードをそのまま受け入れて使うようになった。この段階では、部分的なコードのコピーから、時にはファイル全体のコードをAIが補完するまでになった。ただ、AIが提案するコードの中には、開発者自身がその仕組みを理解できないような複雑な記述や、場合によってはセキュリティ上の問題を含んだコードが紛れ込む可能性も指摘された。
そして2023年以降、「ChatGPT」のような生成AIの登場により、コードの生成方法はさらに大きく変化した。今や、プログラミング言語の知識がほとんどなくても、自然な言葉で「こんな機能のウェブサイトを作りたい」とAIに指示するだけで、AIがその要求に応じたコード全体を生成してくれるようになった。これは「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれているが、実際にはAIに適切な指示を出すスキルだけで、非常に複雑なシステムの一部を構築できてしまう。例えば、ウェブサイトにオンライン決済機能を追加する際、その決済システムが内部でどのように動作しているかを深く理解していなくても、AIに指示を出すだけで実装できてしまう。これは非常に効率的で画期的な変化だが、同時に、プログラミングの基本的な概念(例えば、ウェブページを構成する際に特定の処理を行う「useEffect」という機能や、複数の処理が同時に動く場合に予期せぬ結果が生じる「非同期処理のバグ」など)を理解しないまま、高度な機能を実現できてしまうという問題も生み出した。
このようなAIが生成したコードを使うことの一番の課題は、そのコードにバグ(不具合)が発生した場合に、開発者自身がそれを解決できないという点だ。コードの仕組みを理解せずに使っているため、どこに問題があるのか、どうすれば直せるのかが全く分からないのだ。ウェブサイトの表示時に、サーバー側とブラウザ側で内容に不一致が生じる「ハイドレーションミスマッチエラー」のような専門的な問題に直面しても、その根本的な原因を理解していなければ、修正はほぼ不可能となる。
この状況に対応するため、AIが生成したバグをAIが解決するという、新たなデバッグツールも開発され始めている。記事で紹介されているAIコードデバッガーはその代表例だ。このツールは、エラーが発生した瞬間の状況、例えばどのような操作が行われたか、ネットワークの状態はどうだったか、といった詳細な情報を収集し、AIが生成したコードのどこに問題があるのかを特定する。そして、開発者がコードを完全に理解していなくても、AIがエラーの原因と具体的な解決策を提示してくれるため、デバッグ作業の効率化に貢献する。これは、AIがコードを作り、AIがバグを生み出し、そしてAIがそのバグを直すという、ソフトウェア開発における「AIの閉じたループ」が形成されつつあることを示している。
このように、プログラミングにおけるコードの再利用は、情報源がStack OverflowからGitHub Copilot、そしてChatGPTへと進化してきた。しかし、その本質的な問題は変わっていない。それは、「コードの背後にある原理や仕組みを理解せずに使う」という行為だ。かつては議論を通じて学びの機会があったが、AIは答えを直接提示するため、深い理解を得る機会は減っている。この状況が続けば、「何でも作れるが、何も直せない」開発者が増える可能性がある。基本的な繰り返し処理である「forループ」のような単純な構造すら理解しないまま、複雑なシステムを構築してしまう世代が生まれるかもしれないという懸念も存在する。
AIによる生産性の向上は非常に大きく、もはや後戻りはできないだろう。開発者は以前よりも格段に速く、試作品や新たな機能を作り出すことができるようになった。しかし、その代償として、開発中のシステム全体が開発者にとって「不透明」なものになるリスクがある。自分たち自身が完全に理解していない基盤の上に、さらにAIが生成した理解できないコードを積み重ねていくことになる。
もしかしたら、将来のソフトウェア開発では、「何を構築すべきか」という企画や設計の能力が、「どう構築するか」という具体的な実装能力よりも重要になるのかもしれない。あるいは、AIが生成した膨大な量のコードが、最終的に人間の手によるメンテナンスが不可能になり、大規模なシステム障害を引き起こす可能性もある。しかし、どんな未来が訪れるにせよ、AIの進化がソフトウェア開発のプロセスと開発者の役割を大きく変えていることは間違いない。そして、その変化の最前線で、AIが生成するコードのデバッグもAIが担うようになっていく、というのが現在の状況だ。